摘発強化、軍事対立、イラン情勢悪化… 翻弄されるアフガン難民、帰還も行き場無く

アフガニスタンで、隣国イランとパキスタンから帰還する難民が急増している。国連によると、2023年9月以降に帰国したアフガン人は約590万人。今年は4月以降で300万人近い増加が見込まれる。イランとパキスタンでの不法滞在者対策の強化に加え、パキスタンとアフガンの軍事対立、米イスラエルとイランの戦闘による情勢悪化が重なった。難民は翻弄され続けている。(共同通信イスラマバード支局=須賀達也)
「わずかな猶予もなく、家を破壊された」。アフガン首都カブールの難民キャンプ。パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州で暮らしていたアフガン人ナジュムディンさん(37)が声を荒らげた。5月中旬、パキスタン当局の摘発を受け、親族ら約150人と大型バスで移送された。
父親が1979年の旧ソ連のアフガン侵攻を機に避難し、自身はパキスタンで生まれ育った。「仕事も友人も失った。新たな人生をやり直すしかない」と嘆いた。
パキスタン政府は2023年から不法滞在の外国人への取り締まりを本格化させた。当局による拘束や家宅捜索を恐れ、自主的に出国する人も急増。昨年秋以降はアフガンとの国境地帯でイスラム主義組織タリバン暫定政権の部隊との武力衝突が激化し拍車をかけた。
イランからの帰還には中東情勢が影を落とす。今年2月末に始まった米イスラエルとの戦闘で、イランでは経済活動が停滞し、多くのアフガン人労働者も失業に追い込まれた。当局による摘発も増えている。
しかし、帰還先のアフガンには十分な受け皿がない。タリバン暫定政権下で経済混乱が続き、カブールをはじめ都市部の家賃が高騰。多くの帰還民が親族宅や仮設キャンプに身を寄せる。帰還直後に再び国外脱出を試みる人も少なくない。
国連は、アフガンで人口の半数近くに当たる約2千万人が人道支援を必要としていると指摘し「帰還民の急増が危機をさらに深刻化させている」と警告。5月には非政府組織(NGO)と共に帰還民のため総額5億2900万ドル(約855億円)規模の支援計画を発表した。
現場では支援が追い付いていない。パキスタンから陸路で食料などの支援物資が運ばれていたが、昨年の衝突による国境封鎖後は、イラン経由の海上輸送も頼りとなってきた。今年に入り、米イスラエルによるイラン攻撃後にホルムズ海峡が事実上閉鎖され海運が混乱、調達は難航している。
カブールの難民キャンプ運営に当たるサイードさんは「毎日約千人を新たに受け入れている。資金や食料はいくらあっても足りない」と窮状を明かした。





