【岡村 聡】日本が「アジアの激安国」に転落…!「1ドル200円」時代に待ち受ける「衝撃の未来」

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40年ぶりの円安ドル高

シンガポール人から見た現在の日本は、驚くほど割安な国になっています。

前編で紹介したように、シンガポールドルの円に対する購買力は、この15年で4〜5倍に高まり、日本は治安や交通、食事、宿泊、接客の質が高いにもかかわらず、アジアの人々にとって「あり得ないほど安い国」になりつつあります。

――前編はこちら――『日本人には高いのに、外国人には「激安」…シンガポール人が驚く「安すぎるニッポン」の衝撃』

円の実質的な価値は固定相場時代を下回り、シンガポールの富裕層だけでなく、アジアの一般層にとっても、日本旅行は身近な選択肢になろうとしています。

では、なぜ円安はここまで進み、日米の金利差が縮小しても止まらないのでしょうか。

高市政権が誕生してから円安ドル高トレンドには拍車がかかり、2026年7月には1ドル162円台後半まで円安が進みました。プラザ合意直後の1986年以来、実に約40年ぶりの円安ドル高です。

前年10月に自民党総裁選が行われたタイミングでは147円台で推移していましたから、そこから1年弱で15円ほど円安となりました。

ただし、2024年の円安と今回とでは、状況が異なります。

24年央には、米国の長期金利がすでに4%を超えていた一方、日本は1%程度と大きな金利差があり、それが円安の最大要因とされていました。

そこから日本の長期金利は、高市政権の積極的な財政支出への警戒もあり2.8%程度まで上昇しました。一方、米国は4%台半ばですから、金利差は大きく縮小しています。

それにもかかわらず、より円安となっている背景には、日銀の利上げペースの鈍化と、資本フローの変化があります。

日銀が利上げしても「円が売られる」理由

日銀は24年初頭にマイナス金利を解除し、26年6月までに4回、0.25%ずつ利上げを行ってきました。

しかし、マーケットでは、日本のインフレ高進を止めるには不十分だという見方が強く、年内にさらに1回の利上げが予想されています。

直近でも、高市政権から日銀の利上げを牽制する発言が出ています。

日銀の利上げペースが不十分でインフレ率が高まれば、日本の長期金利が上がっても、物価上昇を除いた実質の利回りは依然として低いままです。

この実質利回りの格差が、円安ドル高を生んでいます。

さらに、日本から海外への資本流出も拡大しています。

その一つが、いわゆるデジタル赤字です。

クラウドやデジタル広告は以前から米国のプラットフォーマーに寡占されてきました。そこへ生成AIサービスの急拡大が加わり、デジタル赤字は今後さらに増大すると見られています。

経済産業省の推計では、25年に約7兆円だったデジタル赤字が、今後10年間で最大45兆円まで拡大する可能性があります。

いくら円安になっても、デジタルサービスは米国企業に寡占されており、ドル建ての価格を受け入れざるを得ません。円建ての支払額は膨らみ、資本流出が拡大していきます。

「新NISA」が生む新たな円売り

日本の個人金融資産の海外流出も拡大しています。

24年1月の新NISA開始以降、個人が大半と考えられる投資信託を通じた海外投資は拡大の一途をたどっています。

日銀の統計では、新NISA開始以降、26年5月まですべての月で投資信託を通じた海外投資が増えており、26年は5月までで約5兆円と、史上最速のペースです。

個人にとって、円安対策として資産の海外割合を増やすことは最適解です。しかし、それがさらなる円安を呼びます。

円安になるから海外資産を買い、海外資産を買うために円を売ることで、さらに円安が進むというサイクルが止まらなくなっているのです。

円安によって拡大が期待された輸出も、それほど増えていません。貿易収支が赤字基調のところへ、デジタル赤字と個人金融資産の海外流出が加わっています。

日本の経常収支は大幅な黒字ですが、その多くは企業の海外直接投資によるものです。そこで得た外貨収入が海外での再投資に回れば、円買いにはつながりません。

「1ドル200円」はあり得るのか

このようなメカニズムで進行する円安は、どこまでいくのでしょうか。

足元のオプション市場では、1年後に1ドル180円まで進む可能性が15〜20%程度織り込まれています。さらに、200円までいってもおかしくないという声も出ています。

1ドル200円となれば、プラザ合意直後以来、40年以上前の水準です。

「プラザ合意前は240円だった」「固定相場時代は360円だったのだから、200円は未曽有の事態ではない」という意見もありますが、これは日本円の購買力低下を見落とした乱暴な議論であることは、前編で実質実効為替レートを使って説明した通りです。

同じ200円でも、40年前と現在では意味が違います。

日本の物価と賃金が欧米やアジア諸国に大きく取り残された現在、1ドル200円になれば、日本のホテル、外食、交通、商品、サービスは、外国人からさらに安く見えるようになります。

シンガポールドルなど、ほかの主要通貨も円に対して上昇すれば、シンガポール人にとっては、1週間から10日滞在しても、自国の感覚では数万円しか使っていないような割安感になるでしょう。

数十年前の東南アジアは、日本人にとってそういう場所でした。

しかし、日本は当時の東南アジアと比べ、サービスレベルがはるかに高い。それゆえ、シンガポールをはじめとするアジアの先進国から見れば、あり得ないコストパフォーマンスの国となっていきます。

外国人旅行客が増え、百貨店やホテルが潤うことだけを見れば、円安は日本経済にプラスです。

しかし、その裏側では、日本の商品だけでなく、日本人の労働やサービスまで安くなっています。

かつてアジアで最も豊かな国だった日本が、アジアの人々にとって「安くて質の高い国」へ変わっていく。

1ドル200円が意味するのは、単なる円安ではありません。日本とアジアの立場が逆転するという、歴史的な変化なのです。

さらに連載記事『19億円の大豪邸も「お買い得」…!「トランプ」から逃げる富裕層がポルトガルの高級住宅を続々購入するワケ』でも、海外の最新事情についてレポートしていますので、ぜひ参考になさってください。

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