「トランプ氏」W杯“介入”に選挙関連機関“解体”も…傍若無人すぎて米国の好感度は「中国以下」 対する野党の旗印は過激な「反イスラエル」
W杯開催でも嫌われる米国
サッカーW杯北中米大会は7月20日、スペインの優勝で幕を閉じた。数々の名シーンが生まれたものの、主役はトランプ米大統領だった感が強い。
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米国選手の出場停止処分を巡り、トランプ氏が国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長に電話をかけると、FIFAが処分の猶予を認めるという異例の展開となったからだ。
これに対し、「権力者の一線を越えた行為」「史上最悪のW杯」などの批判が相次いだ。W杯の長い歴史を振り返ると、ピッチ外からの介入があったのは今大会だけではないが、21世紀に入ってからは今回が初めてのケースという指摘がある。

トランプ氏の傍若無人ぶりもさることながら、W杯の経済効果も芳しくなかった。
Forbesは16日、海外観光客が殺到して米国経済に活況をもたらすという期待が現実となる可能性はますます低くなっていることを報じた。6月の訪米者数は、外国人入国者数の上位で常に1、2位を占める欧州とアジアが前年比でそれぞれ1.2%減、5.6%減となった。商業用を含む不動産関連の情報・分析を行う米コスター・グループによれば、W杯開催都市のホテルでは平均客室単価が上昇したものの、客室需要や稼働率に増加は見られなかったという。
この背景には、米国が昨年、旅行客数が減少した世界で唯一の主要国だった事実がある。専門家は、トランプ氏の関税や国際政策に対する強い嫌悪感の広がりが原因だと指摘する。W杯の力をもってしてもこの傾向を変えることができなかったのだ。
米国への好感度低下と迷走する政策
トランプ氏のせいで米国の好感度は下がる一方だ。
米ピュー・リサーチ・センターが15日に発表した世論調査で、調査対象の36カ国・地域のうち中国への好感度が米国を上回ったのは27カ国だった。調査は2月8日から5月13日にかけて実施された。米国に対する好感度の悪化はトランプ氏の2期目が始まった昨年からだが、「それでも大多数は中国より米国に好意的だった。しかし、今年は状況が一変した」とレポートしている。
トランプ氏の中東政策も迷走している。
トランプ氏は13日、ホルムズ海峡を通る商船に通航料を課すと主張したが、翌14日に撤回した。トランプ氏は対米投資という形で湾岸諸国に負担させる仕組みに変更したと弁明しているが、ここでもTACO(トランプはいつも尻込みして退く)ぶりを発揮したことは明らかだ。
米国とイランは再び戦争状態に入っており、米国のガソリン価格は20日、ひとつの基準である1ガロン当たり4ドルを超えた。米国の7月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が再び高まることになれば、11月の中間選挙で与党・共和党が苦戦するのは必至だろう。
「盗まれた選挙」を国民にアピール
窮地に追い込まれたトランプ氏は奇手に打って出た。
トランプ氏は16日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、中国が2020年の大統領選以降に2億2000万件分の米有権者データを不正に奪ったと主張し、重要な中間選挙を控えた今、選挙が盗まれるような事態を2度と起こしてはならないと力説した。
ワシントンで予定されている中国との首脳会談は2カ月後に迫っており、トランプ氏の演説は両国の貿易休戦に悪影響が及ぶとの懸念が一部で生まれている。だが、演説は国内向けだとの見方が一般的だ。中国に対する具体的な措置について言及せず、法執行機関に対して不正行為を追及するよう指示したことを明らかにしたのがその理由だ。
トランプ政権が既に行動に出ていたことも判明している。
非営利独立系メディアのProPublica(プロパブリカ)は9日、情報筋の話として、トランプ氏が選挙管理当局を支援する独立連邦機関・選挙支援委員会(EAC)の民主党員2人を解任、共和党員1人の辞任を認めたと報じた。
後にホワイトハウスがこの内容を認める一方、17日付のロイターによれば、EACを1年以上にわたって調査したトランプ政権が2020年の大統領選挙における同機関の対応を問題視し、解任に至ったという。EACがこの選挙を“米国の歴史上最も安全な選挙”と評価したことに腹を立て、お払い箱にしたというわけだ。
“イスラエル離れ”から生まれる不穏な空気
トランプ氏が選挙制度への介入を強める中、野党・民主党内で反イスラエル色が鮮明になっていることも気になる。
米下院で15日、イスラエルに対する数十億ドル規模の軍事支援を阻止する修正案の採決が行われ、民主党議員103人が賛成票を投じた。2年前に同様の採決が行われた際、賛成に回った民主党議員はわずか37人だった。最終的にこの法案は否決されたが、民主党内でイスラエル離れが広まっている状況が浮き彫りとなった。
この動きを主導しているのは、前駐日大使で、次期大統領選への出馬が取りざたされている民主党の重鎮、ラーム・エマニュエル氏だ。ブルームバーグの報道によれば、エマニュエル氏はイスラエルがネタニヤフ首相の下、国際社会で孤立していると指摘し、同国に対する米国の無条件支援を終えるべきだと主張している。
トランプ氏が忌み嫌う民主党左派もエマニュエル氏以上に過激な主張をしている。
18日に公開された米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、ニューヨーク市長のマムダニ氏はネタニヤフ氏を国際刑事裁判所(ICC)に起訴された戦争犯罪者と呼び、国連総会のため9月にニューヨークを訪問する予定の同氏を逮捕するため、法的手段を検討していると述べたほどだ。
このような情勢を見るにつけ、中間選挙が平穏理に実施されないのではないかと不安が頭をよぎる。
同盟国である米国の動向は日本の行く末に大きく影響する。引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。2026年3月末日で経産省を退職。
デイリー新潮編集部
