アルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督が14日、北中米W杯準決勝イングランド戦の前日会見に出席し、1982年のフォークランド紛争を起点に語られる両国の因縁について「これはただのフットボールの試合だ。それ以上でも以下でもない。歴史と混同させるのはナンセンスだ」と警鐘を鳴らした。

 アルゼンチンにとっては0-1で敗れた2002年の日韓W杯以来24年ぶりとなるW杯でのイングランド戦。もっとも同国メディアは敗れた02年の記憶よりも、2度目の優勝を成し遂げた1986年のメキシコ大会での勝利を盛んに取り上げており、特にFWディエゴ・マラドーナによる「神の手」「5人抜き」による2ゴールが象徴的なアイコンとなっている。

 前日会見ではスカローニ監督もマラドーナの活躍に言及し、「誰もがあの試合を覚えているし、ディエゴのパフォーマンスも覚えている。何よりもその美しさゆえ、我々の心に残り続けるあの2点目のゴール(5人抜き)を覚えている。本当に素晴らしいゴールで、サッカーを愛する人なら誰もが最高の形で記憶しているはずだ」とコメント。「たまたま相手がイングランドだったが、もし別の相手だったとしても、あのゴールは同じように美しかったはずだ」と振り返りつつも、「当時の実況とともに振り返ると、さらに感情が揺さぶられる」と懐かしそうに語っていた。

 一方、この勝利が82年に起きたフォークランド紛争と関連づけられることについては「現実として、これはただのフットボールの試合だ。特に、何年も前に起こったことへの敬意を欠くような形で、この試合と歴史を混同することはできない」と語気を強めた。

 スカローニ監督は「あれは我々の歴史における非常に悲しい時代であり、私たちに今さらできることは何もない」と紛争を位置付けつつ、「これはただのフットボールの試合だ。それ以上でも以下でもない。今の時代において、歴史と混同させるのはナンセンスだ」と強調。「我々は世界のどこかで起きている戦争を批判しているのに、自分たちで『フットボールの試合以上のものだ』などと言い出すのは、狂気の沙汰だと思う」と断じた。

 さらに「あの戦争で戦った人々や、愛する人を亡くした遺族の方々のことを我々が記憶に留め続けること、それはアルゼンチン人として当然であり、理にかなったことだ。でも物事を混同するのは良くない」と述べ、「今の選手たち、今の若者たちに何の責任があるというんだ。過去の悲しい出来事について、それを記憶に留めることと、ピッチ上のフットボールは別物だ」と理性的に訴えた。

(取材・文 竹内達也)