「特定少年」に司法はどんな判断を下すのか。大人と同じように厳罰を科すのか、更生の可能性に賭けるのか、それが焦点だった──。

【映像】パパ活を口実に金を要求→木の棒で撲殺(殺害現場の様子)

 2025年4月に広島県府中町の水分峡森林公園で発生した強盗致死事件。2026年7月、当時18歳だった男に対し、広島地方裁判所は懲役18年の判決を言い渡した。被告は事件当時18歳で、50代の男性の殺害に加担し、強盗致死の罪に問われていた。

「抵抗する被害者に対し、殴る蹴るなどの執拗かつ強度の暴行を加え、(中略)犯行態様は危険かつ悪質である」(裁判長)

パパ活を口実に金を要求→木の棒で撲殺

 いったいどんな事件だったのか。2025年4月の22時過ぎ、公園にいた人が「助けて」という声を聞き110番通報した。殺害されたのは、東京・練馬区の会社員男性(当時52歳)。犯行に関与したのは今回懲役18年の実刑判決を受けた当時18歳の被告と、被告の後輩で事件を企て殺害の主犯格とされる当時16歳の少年、さらにその少年と交際していた当時18歳の女だ。

 男性を呼び寄せたのは愛媛松山市の当時18歳の女。2人は前の年からSNSで知り合い、いわゆる“パパ活”の関係だったという。高級車で送迎され、金を持っているとみられていた。女は「トラブルも恨みもなかった」と述べている。

 その関係に目をつけたのが女の交際相手、当時16歳の少年だった。主犯格とされる少年は「呼べるパパを呼んで、全員広島に連れてこい」と女にせまったという。

 検察によると、犯行現場の公園は主犯格とされる少年が肝試しで通い、夜は人がいないことを知る場所で、事件の1週間前に現場を下見。武器で使えそうな木の棒が多数あるのを確かめ、覆面や手袋まで用意していたとされる。

 事件当日の4月12日にやってきたのは、東京・練馬区の男性1人だけで、女は男性を公園へと誘導。一方、当時18歳の男が、バイクで少年を現場へ送った。少年は複数人に声をかけていたが、実際に当日加わったのは18歳の男だけだった。当初被告は主犯格とされる少年に対し「俺は手を出さんで」と言い、引き受けたという。

 そして女は男性を公園の管理事務所の前に誘導。そこに少年らが現れ「こんなところで何しよるん」「金出せや」などと、パパ活を口実に男性に金を要求。抵抗されると2人は殴る蹴るの暴行を加えた。男性が「助けて」と繰り返しても、暴行は止まなかったという。

 判決文によると、当時18歳の被告は「なんとかせえや」と男が馬乗りで押さえ、少年が重さ1.5キロの木の棒で頭を殴打。男性は頭蓋骨骨折、顔面骨折などの重傷を負い、外傷性ショックで死亡した。男性から奪ったのは現金約8万1千円。その内被告は3万円を受け取り、その金はカラオケなどに使われた。

「両親の激しい暴力を見て育った」特定少年に“厳罰か更生か”

 7月1日の広島地裁で被告は最後に「昔から面と向かって気持ちを話すのに苦手意識があって、それが事件にも関与していると思う。少年院のほうが、より成長できると強く思った。でも強盗致死という重大なことを犯したので、刑事処分でも仕方ないと思う」といった発言をしている。

 弁護側は「幼い頃に両親の激しい暴力を見て育ち、母は家を出た。『誰からも愛されていない』と感じ、親族のあいだを転々とした」と主張。被告の母親も法廷で、涙ながらに暴力を認めた。弁護側が繰り返したのは「育て直し」で、刑務所ではなく家裁に送致し、少年院での矯正が必要で保護処分が適していると主張した。

 この育て直しについて、少年院で数多くの少年と向き合ってきた犯罪心理学者の出口保行氏は「『育て直し』は少年院の矯正教育の中では当たり前のように行われていること。別に今に始まったことでは全くありません。少年院に入るぐらい非行性がが進んでいる人間が、たった1年ぐらいの教育を受けるだけで再犯しなくなる。90%ぐらいが再犯しなくなる。そちらの方に注目していただきたい」と語る。

 法務省の調べによると、少年院出院者の再入院率は10人に1人。刑事施設への入所を含めると5人に1人の割合だ。しかし、その1人によって命を奪われた側は納得できるものではないことも事実だ。

「(Q.被害者感情からすると処罰感情は強いのでは?)それを理解しろっていうこと自体がもう無理な話。少年事件の場合、非行事実と要保護性、それが2つのポイント。非行事実はどんな事だったのか、どれほど重たい事だったのか。その本人をどうやって保護する必要性があるのか。そこらへんの事を十分調べあげた上で最後の判決を言い渡す」(出口氏)

 判決では、弁護側の「育て直し」についても裁判の争点であるとした上で、被告には暴行の非行歴があり保護観察中の犯行であったこと、金品を奪うために積極的に関与し、保護者の支援についてもその実効性は疑問だと指摘。弁護側が求める最長3年の保護処分が許される事情があるとは言えない、犯行は危険かつ悪質で無期懲役を基礎に「特定少年」である事情も踏まえ懲役18年の実刑判決を下した。

 事件を主導したとされる当時16歳の少年の裁判は、14日から始まる予定だ。有罪であれば18歳未満のため少年法によって死刑は回避されるが、最長で無期懲役となる可能性もある。

犯罪者の素人化…未成年への“犯罪の重さの教育”の重要性

 動機の身勝手さと罪の重さをなぜ理解できなかったのか。「やはり犯罪者の素人化という現象がかなり進んでいる。気がついたらとんでもないような事件に関わっていたっていうことがかなり起きてくる」(出口氏)

 阪口采香弁護士は、犯行の経緯について「一部の報道では、主犯格の16歳の少年は交際していてパパ活を知らなかったそうだ。広島で会っているときにパパ活が発覚して、パパ活をやってるんだったら……ちょっと怒っているわけですよね。パパ活をやってるんだったらパパたちを呼びだして、お金持ってるんだったらお金をむしり取れ、みたいな話になった。それで呼び出してお金を取ろうとしたところ『持っていない』と言われて。ちょっと襲い掛かったら逆に抵抗されて殴ってしまった、という流れのようだ」と説明。

 元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は「少年犯罪は動機面が安易。この前も栃木の高校生4人組の強盗殺人があったが、それもお小遣いほしさ。被告は“再犯”だった。再犯は、例えば万引きとか窃盗とか、覚せい剤、これはやめられないからまたやる。しかし、殺人の再犯というのはほぼないと思う、懲役が長いので」とコメント。

 その上で「少年犯罪というのは、強盗殺人や殺人がどれだけの刑が重たいかをあまりわかっていない。殺害した方の親も、殺害された遺族も、家庭が崩壊するような状態になる。やっぱり犯罪を犯す前から少年には、そういう犯罪の重さを教育しなければいけない」と訴えた。

(『ABEMA的ニュースショー』より)