「あなたはサトシ・ナカモトですか?」男は顔を赤らめ、思わず“自白”を…米有力紙が“ビットコイン発案者を特定”と報じた「これだけの根拠」
〈ビットコインの発案者「サトシ・ナカモト」とは何者か? 総資産は10兆円…その正体に迫る最新情報《21世紀最大級のミステリー》〉から続く
暗号資産の代表、ビットコインが登場して今年で18年になる。しかし、ビットコインの生みの親、サトシ・ナカモトの正体は未だ明らかにされていない。
【画像】サトシ・ナカモトの最有力候補とされる人物
4月8日、ニューヨーク・タイムズに一本の記事が掲載され、大きな波紋を呼んでいる。著者は調査ジャーナリストのジョン・キャリルー氏。同氏がナカモトと断定した人物は、英国の暗号学者で、ビットコイン・ムーブメントを生み出したアダム・バック氏だ。

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キャリルー氏はナカモトとバック氏の間に12点もの共通点を見出したという。「あなたはサトシ・ナカモトですか?」。そう問い詰められたバック氏は--。(全3回の2回目/つづきを読む)
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ナカモトとバック氏の共通点
まず、キャリルー氏によれば、ナカモトは1990年代初頭に登場したサイファーパンクたちのコミュニティに属していた可能性が高いという。サイファーパンクとは、政府の監視や検閲から、個人を解放することを目的とする活動家のことであり、彼らはデジタル通貨の生み出し方について活発な議論を交わしていた。
冒頭にナカモトが最初の論文を発表したのは「暗号技術ファン向けのウェブサイト」だとした。だが実は、これはサイファーパンクたちのメーリングリストの流れを汲む、暗号学者たちの専門的なコミュニティであった。そして、このサイファーパンク・コミュニティで中心的な論客の一人だったのがバック氏だった。
また、ナカモトとバック氏の間には、日本に関連した共通点もあるという。ナカモトは、その名前から日本出身と想起されるが、奇しくもバック氏は、1997年時、日本に強い関心を寄せている。
当時、ある日本のサイファーパンクがメーリングリスト上で、日本初となる「リメーラー(匿名メール転送サービス)」の開設について投稿した。それに対してバック氏は「日本という地域には、一体、どのようなメリットがあるのでしょうか? ヨーロッパやアメリカでは違法とされる行為が、日本では合法とされているといった事例はあるのでしょうか?」と返信している。
バック氏が日本に示した強い興味。当時、東京に拠点を置く「Anonymousspeech L.L.C.」という会社が、匿名メールやウェブホスティングのサービスを提供していた。そして、ナカモトは同社のサービスを利用してウェブサイト「bitcoin.org」を登録し、追跡不可能な2つのメールアカウントを作成しているのだ。
キャリルー氏によれば、バック氏=ナカモトは先述の投稿により日本に興味を抱き、同社にたどり着いたのではないかという。
ナカモトが姿を消すと、バック氏が現れる
技術面での指摘もある。ナカモトは「ハッシュ・キャッシュ」という統計的パズル解決システムをビットコインのマイニングに利用したが、このシステムを発明したのはバック氏だった。
さらにバック氏は1997年、仲間とのメールの中で、政府の介入を回避できる電子現金システムの構築を提案している。その提案は、プライバシー保護などの5つの要素を備えていたが、この5つの要素はナカモトが構築したビットコインの中核をなしていた。
最も決定的に見えるのは、バック氏が再登場した時期である。バック氏とナカモトが登場したり、姿を消したりするタイミングは、まるで示し合わせたかのようだ。
ビットコインが登場した後、バック氏はサイファーパンクたちのフォーラムから姿を消した。だが、反対に、ナカモトは約2年半にわたってビットコインの改良を続けた。そして、ナカモトが2011年に姿を消してから6週間後、バック氏は同年6月に初めてビットコインについて投稿しているのだ。つまり、ナカモトが登場するとバック氏は姿を消し、ナカモトが姿を消すとバック氏が再登場するという状況が生じていたというのだ。
その後、バック氏は、2013年、ウィキペディアに対して「ビットコイン」のページに統合されてしまっていた「サトシ・ナカモト」単独のページを復元するよう強く要求。さらに、ビットコイン・ネットワークをより使いやすく、高速に、そしてプライバシー性の高いものにするためのツールを開発すべく「Blockstream」というスタートアップ企業を設立し、ビットコイン・コミュニティにおける中心人物へと上り詰めていったという。
「(バック氏の)一連の動きは、ナカモト本人が実名で表舞台に再登場し、自ら生み出したビットコインの主導権を取り戻そうとする行動に思われた」とキャリルー氏は指摘している。
文体分析から明らかにされた“同一人物の証拠”
このように、キャリルー氏は、バック氏がナカモトだとする多数の状況証拠を提示しているが、何より興味深いのは同氏が文体に注目したことだ。同氏は、1990年代から2000年代にかけてサイファーパンクたちが集まっていた3つのメーリングリストのアーカイブを収集して文体分析を行い、ナカモトとバック氏の間に共通点があることを見つけた。それは文章の「書き方の癖」だ。
例えば、ナカモトは文と文の間にスペースを2つ入れるという、今では廃れてしまった、まるで50歳以上の人々がしそうな書き方をしていた。だが、バック氏も同様の書き方をしており、同氏は現在55歳だという。
他にも、ナカモトについては、イギリス式スペルを使用していること、「it’s」と「its」を混同することがあること、文末に「also」を付けることがあること、「bugfix」と1語で書くこと、「half way」「down side」と2語で書くこと、「double-spending」と本来は不要なハイフン付きで書くこと、「file sharing」「noun based」と本来は必要なハイフンなしで書くこと、「e-mail」と「email」、「e-cash」と「electronic cash」のように表記揺れしたり、「cheque」と「check」といった英米のスペルを混在させているなどの特徴が見られたという。
そして、これらの特徴に一致したのは、数百人いるメーリングリスト参加者の中では、バック氏だけだったというのだ。
さらにナカモトは「proof-of-work」「partial pre-image(部分的な原像)」「burning the money(お金を燃やす)」といった特有のフレーズを用いている。これらのフレーズを誰が使っているか調査すると、バック氏に辿り着いたという。
確かに、「書き方の癖」は、簡単には変えられるものではないかもしれない。その意味では、キャリルー氏の分析は説得力がある。
ジャーナリストが本人を直撃すると…
同氏は、調査結果を携えて、バック氏に面会し、ナカモトなのか?と直撃したが、バック氏はナカモトであることを否定し、同氏が提示した証拠を偶然の一致とみなしたという。
しかし、ボディーは嘘をつけなかったようだ。キャリルー氏は、それらの証拠を突きつけられたバック氏が顔を赤らめたり、落ち着きなく身じろぎをしたりするのを見逃さなかった。
また、インタビューテープを聞き返したキャリルー氏は、バック氏がナカモトであると自認するかのような発言をしたことにも気づく。
キャルリー氏が「ナカモトは『私は言葉よりもコードで表現する方が得意だ』と述べていますよね」と言うと、バック氏は「いや、それにしても、ずいぶん喋ったものですよ。言葉の扱いに長けているなんて言うつもりはありませんが、実際、あのメーリングリスト上では随分と饒舌に書き込んでいましたからね」と、まるで自分がそう書いたかのような発言をしていたのだ。バック氏は思わず口を滑らせてしまったのか?
もっとも、バック氏は自身の発言について「技術畑の人間は文章よりもコードでアイデアを表現する方が心地よく感じるものだ、という一般的な観察に言及したものだ」と弁明している。だが、キャルリー氏はこのシーンをバック氏が仮面を脱いでナカモトになった瞬間だと捉えている。
「バック氏=ナカモト説」に異論を唱える人々もいる。ニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった著書を上梓しているジャーナリストのウィリアム・D・コーハン氏と私立探偵のタイラー・マロニー氏だ。
4月22日、キャリルー氏が“バック氏=ナカモト説”を発表したのとほぼ同じタイミングで『サトシを探して』というドキュメンタリー映画がオンラインで公開された。この映画は、ナカモトの正体を暴くべく、4年にわたって行われた両氏の調査活動を追っている。(つづく)
〈約10兆円の“ビットコイン遺産”がアクセス不可に? 米ジャーナリストがたどり着いた「サトシ・ナカモト=死亡説」の衝撃〉へ続く
(飯塚 真紀子)
