大谷翔平の第2子妊娠時期を巡ってSNSで論争…「産後1年以内の妊娠は避けるべき?」婦人科医の見解
大谷翔平(31)が、真美子夫人の第2子出産のため「父親リスト」入りし、一時的にチームを離脱。世界中から祝福の声が寄せられる一方、SNSでは産後すぐの妊娠、いわゆる年子であることを受けて《母体への負担が心配》と疑問視する声もあがった。
出産から次の妊娠までの期間が短い場合、どのようなリスクがあるのか。どうすれば安全な第2子の妊娠・出産が可能なのか。三軒茶屋Artクリニック理事長の坂口健一朗医師に聞いた(以下、「」は坂口医師)。
再開が早過ぎた!?
「出産から次の妊娠までの期間が短い場合、早産や低出生体重児、胎児発育不全、母体の貧血などのリスクが上昇すると報告されています。ただし、これはあくまでも集団として見た統計上の傾向。実際のリスクは母体の年齢、健康状態、前回の妊娠・出産の経過、授乳状況、栄養状態、睡眠や育児環境などによって大きく異なります」
妊娠・出産によって母体には大きな変化が起こる。産後は体力の回復だけでなく、鉄分や葉酸などの栄養状態の改善も重要だ。年子の場合、第1子授乳や夜間の育児による睡眠不足も重なるため、身体への負担は決して小さくない。
世界保健機関(WHO)は母体や出生児へのリスクを減らす観点から、出産後、次の妊娠まで一定の間隔を空けることを推奨しており、一般的には出産から次の妊娠まで24ヵ月程度、つまり2年空けることが望ましいとされている。
米国産科婦人科学会(ACOG)などでも特に6ヵ月未満の妊娠間隔は避け、18ヵ月未満の妊娠の場合にはリスクとメリットを踏まえて医師に相談することが勧められている。
「大切な目安ではありますが、前回の妊娠経過に問題がなく、母体の回復も順調であれば、妊娠間隔が短くても安全に妊娠・出産できる方はいます。重要なのは個々の状況を総合的に評価すること」
SNSでは《そもそも出産後すぐに妊娠できるのか?》という疑問の声もあがっている。坂口医師が言う。
「一般的には産後の出血が落ち着き、1ヵ月健診などで母体の回復に問題がないことが確認されれば、性生活の再開を検討できます。会陰切開や帝王切開の傷の状態、出血、痛み、授乳や睡眠不足による体調などによって、性生活を再開してもいいタイミングには個人差があります」
ただし、多くの人が誤解している点がある。
「産後はすぐに月経が再開しない場合もありますが、月経がないから妊娠しない、というわけではありません。授乳中でも排卵することはありますし、産後最初の排卵は月経より先に起こります。そのため、月経再開前に妊娠するケースもあります。妊娠を希望しない場合には、性生活を再開する時点で避妊についても考える必要があります」
特に慎重な管理が必要になるケースもある。
「前回の出産が帝王切開だった場合、高齢妊娠の場合、前回の妊娠で早産や胎児発育不全があった場合、妊娠高血圧症候群や糖尿病などの合併症があった場合は、次の妊娠について主治医と十分相談することが重要です」
なかでも帝王切開後の妊娠については、産婦人科医が慎重になるケースが多い。
「帝王切開の場合は子宮に手術の傷が残ります。見た目の傷は比較的早く治りますが、子宮の筋層が十分に回復するまでには時間がかかります。そのため、多くの産婦人科医は次の妊娠まで1年程度は間隔を空けるよう説明しています」
坂口医師はさらにこう続けた。
「帝王切開後に十分な期間を置かず妊娠した場合、妊娠によって子宮が大きくなったり、分娩時に強い収縮が起きたりすることで、まれではありますが子宮破裂のリスクが高まるとされています。もちろん全員に起こるわけではありませんが、妊娠した場合には慎重な管理が必要です」
年子妊娠=悪ではない
育児の記憶が新しいうちに次の子育てができる、育児用品を流用できる、子供同士が年齢が近くていい遊び相手になる――など、年子にはメリットもある。
それでも、つわりの時期も上の子の育児は続き、妊娠中でも抱っこが必要になる。夜泣きや授乳も重なる。年子妊娠は体力的・精神的な負担が大きいのは間違いない。
「年子の妊娠、出産、育児には、夫や家族のサポートが不可欠です。妊娠・出産は女性の体に起こることですが、育児は家族全体で支えるもの。母親が無理をしなくていい環境を整えることが、安全な妊娠・出産につながります」
大谷と真美子夫人のケースはどう考えるべきか。坂口医師が言う。
「個別の医療情報がわからないので外部からリスクの有無を判断することはできません。報道されている情報だけをもとに、母体に問題があった、リスクが高かったなどと決めつけるべきではありません」
そして、SNS上で論争が過熱したことに対しても苦言を呈す。
「妊娠や出産は非常に個別性の高いもの。産後1年以内の妊娠にはたしかに注意点がありますが、それだけで良い悪いを判断できるものではありません。年子だから危険、産後早期の妊娠だから無責任といった単純な話ではない」
大谷の第2子誕生を巡る議論を目にして、不快な思いをした年子の親もいるだろう。年子の子供たちは全国に数多く存在し、それぞれの家庭が悩みながらも子育てに向き合っている。
医学的なリスクについて正しく知ることは大切だ。しかし一方で、事情を知らないままの憶測や批判が、当事者や同じ立場の人たちを傷つけることも忘れてはならない。必要なのは、一律に善悪を決めつけることではなく、正しい知識に基づいて理解を深め、それぞれの家族の選択を尊重する姿勢ではないだろうか。
