横浜・織田翔希に10億円級評価も…MLBが日本アマ球界に向ける“本気度”
日本の高校生投手に、「10億円級」の評価がつくかもしれない。
MLB球団が熱視線を送っている選手こそ、横浜の織田翔希である。
高校ナンバーワン投手との呼び声が高く、安定して150キロ台を投げ込む本格派右腕。スピードに加え、狙ったところへ投げられる制球力の高さが、MLB側の評価を押し上げているという。【西尾典文/野球ライター】
【写真】10億円級評価も 高校ナンバーワンの呼び声高い「織田翔希」の投球フォーム
世界レベルでも高い評価
ここ数年、日本のアマチュア野球の現場でMLB球団のスカウトを見かける機会が明らかに増えている。特に今年4月のU18侍ジャパン候補の強化合宿では、NPB12球団に加えて、複数のMLB球団スカウトが視察に訪れていた。

その背景には、桐朋高校から2025年1月にアスレチックスとマイナー契約を結んだ森井翔太郎の存在がある。
森井は強豪校ではないチームでプレーしながら、長打力と投手で150キロを超えるスピードを武器に注目を集めた。NPB志望であれば、1位指名の可能性も十分にあった。
しかし本人は、NPB球団から指名があっても入団を断る意向を表明。高校から直接MLB球団と契約する道を選んだ。151万500ドル、当時のレートで約2億3000万円という高額な契約金も大きな話題となった。
森井のようなレベルの選手を早くから獲得できる可能性がある。その認識が広がったことで、日本にスカウトを派遣するMLB球団が増えているという。
今年、彼らの最大のターゲットと見られているのは織田だ。あるMLB球団の日本担当スカウトは、こう話す。
「日本人選手の中でも、特に投手を高く評価している球団は多いです。佐々木朗希(ドジャース)は高校時代からMLBでも知られた存在でした。MLBで活躍している日本人投手の大きな特長は制球力です。織田はスピードに加え、狙い通りに投げられる能力が非常に高い。昨年の石垣元気(健大高崎→ロッテ1位)と比べても、その部分は明らかに上です。18歳という年齢では、世界レベルでもかなり高い評価になると思いますね」
指導者や保護者の意向も重要に
織田は現時点で、進路について明確な意向を表明していない。石垣のように、まずはNPB入りを選択するのではないかとの見方が少なくない。
一方で、MLB球団の評価は相当高い。契約金については、森井の3倍以上という話も聞く。日本円で10億円近い金額となり、NPB球団のスカウトも「本当にそれくらいの金額を提示されたら、アメリカ行きを選ぶかもしれませんね」と話していた。
ただ、MLB球団が好条件を示して、日本のアマチュア選手を一気に獲得しようとしているわけではない。前出の日本担当スカウトはこう説明する。
「MLBとNPBは、球団同士でもあらゆる面で協力しています。NPBを敵に回すようなことは考えていません。実際、アマチュアの選手で最初からMLB球団入りを目指すケースは、まだまだマイノリティです。特に学生については、指導者や保護者の意向も重要になります。まずは力のある選手をチェックし、その中で直接MLBも視野に入れている場合、本格的に調査するという流れになります」
昨年は、慶応大でプレーしていた常松広太郎がカブスとマイナー契約を結んだことも話題となった。常松はNPBのプロ志望届を提出したが、指名はなかった。ドラフト候補としての評価は、決して高かったわけではない。
日本の“金の卵”を巡る争奪戦
一方で、ゴールドマン・サックスから内定を得るなど語学が堪能で、海外生活の経験もあった。現在の実力を考えれば、マイナーからメジャーへ昇格する可能性は決して高くない。その率直な評価を伝えたうえでの契約だったという。カブスとの契約金は公表されていないが、森井のような高額契約ではなかったことは確かだろう。
NPBやアマチュアチームには配慮する。しかしながら、織田のように実力と将来性を兼ね備えた選手に対しては、積極的に動く球団が出てきても不思議ではない。
そして、織田に次ぐ具体的なターゲットがいるという。大阪桐蔭の2年生左腕、川本晴大だ。川本は192cm、95kgを誇る超大型左腕。高校2年生ながら、すでに150キロを超えるストレートを投げ込んでいる。
今年3月に行われた選抜高校野球では、初戦の熊本工戦で14奪三振完封。決勝の智弁学園戦でも15奪三振、3失点完投という圧巻の投球でチームを優勝に導いた。貴重な大型左腕という点でも、MLB球団からの評価は高くなりやすい。
NPB球団のスカウトによると、川本の両親に対して、すでにMLB球団が接触し、高校卒業後の意向を調査しているという。川本は選抜でフル回転した影響があり、それ以降の公式戦には登板していないが、夏以降は、川本が投げる試合にMLB球団のスカウトが大勢視察へ訪れる場面が増えそうだ。
森井に続き、高評価で海を渡る高校生は現れるのか。織田、川本の動向は、NPBのドラフト戦線だけでなく、MLB球団が日本のアマチュア市場とどう向き合っていくかを占う材料になる。
高校生が直接MLBを目指す動きは、まだ主流ではない。森井の決断によって、一つの扉が開いたことは間違いないだろう。日本の“金の卵”を巡る争奪戦は、すでに新しい局面に入りつつある。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
