この記事をまとめると

■東京都内で働くタクシードライバーは近隣の県から通っている人も多い

■首都圏から外れた地方でも東京のタクシードライバー並みに稼げるケースが増えている

■稼げない都市が目立つ一方で稼ぎがいいエリアも実際は少なくない

「東京は抜群に儲かる」といわれるタクシー業界

 ここのところ、タクシーを使う際はスマホアプリ配車サービスを利用するのが当たり前となっていたのだが、先日東京都内の神楽坂で会食した際、飯田橋駅近くの外堀通りで久しぶりに流しのタクシーに手を挙げて乗車した。

 車内に入り目的地の地名(都内で比較的有名な場所)を告げると、運転士が何やらしどろもどろしていたので、目的地最寄りの地下鉄の駅名を告げた。すると、カーナビで目的地を検索し始めた。話を聞くと運転士になって2カ月ほどしか経っていない新人とのこと。しかも以前は九州地方で長距離トラック運転士をしており、上京したばかりだと話してくれた。乗車してからの所作を見てすぐ新人とわかったのだが、以前なら「タクシー運転士のくせに道も知らないのか」などとクレームにもなりかねないやりとりだが、いまどきは都内(特別区・武三(武蔵野・三鷹市)交通圏)であっても、タクシー運転士になるための地理試験が廃止されていることもあり、地理に詳しくなるのは運転士個々の自己責任に委ねられている。

 実際、お任せで運転士の経験に基づいたタクシーならではの抜け道を通られるよりは、目の前でカーナビにてルート検索したその通りに走ってもらいたいという利用客も多いようで、筆者も地理に詳しくない新人運転士に遭遇しても、デジタルツール(カーナビの性能向上など)で十分それをカバーすることができるようになっているので、とくになにか思うといったこともなくなってきた。

「東京は抜群に儲かる」というのは、タクシー業界で広く語られることである。北関東地域(茨城、栃木、群馬)あたりから東京のタクシー会社に勤務しているというのはよく聞くし、前出の運転士のように、それまで縁もゆかりもなかった東京でタクシー運転士を務めるという話もそんなに珍しくない。過去には東京の事業者が地方へ赴き、多数の運転士を東京乗務ということでリクルートしたという話もある。

 今回乗った運転士は、始めたばかりということもあってか、タクシー運転士という仕事に満足しているようで、楽しげに話しかけてきて目的地まで話が盛り上がってしまった。いまは会社の寮(隣接県)で暮らしているが車庫(都内)から遠いこともあり、車庫に近い場所(都内)に部屋を借りて引っ越す予定とのことであるから、おそらく運転士が想定していたよりは稼げるようである。

 しかし、このあと某地方都市で衝撃的な話を聞いた。

地方都市でも都内並みに稼げるケースが増えてきた

 業界事情通氏と北陸地方の某市に宿泊した(金沢市や富山市のような県庁所在地ほど大都市ではない)。郊外のホテルからタクシーで往復移動して、中心市街地へ食事に向かった。帰路の車中で事情通氏が唐突に初老の運転士に「稼ぎはどうですか? 」と聞くと、「そうですね、だいたい5〜6万円(1出番あたりの営業収入)ですかね? 」という返答を聞いてふたりで「へっ? 」と顔を見合わせた。ちなみに調べてみると、2026年4月の運賃改定後の特別区(東京23区)・武三地区の1出番あたりの平均営収は約6〜6.5万円となっているので、ほぼ東京並みに稼ぐことができているというのである。

 続けて運転士は「週末になると、市内の居酒屋などで飲んだあとの帰りの手段としての利用が目立って多くなるので、週末なら8万円ぐらいになりますよ」と話してくれた。ウイークデーでも6万円ぐらい稼げる理由を聞いてみると、鉄道駅から郊外にある企業の工場への送迎が多いことを理由に挙げてくれた。

 また、お年寄りが通院でタクシーを利用するというのは、全国的にあるあるなのだが、自宅と通院先までの距離が結構あるなか、そのままタクシーを待機させて帰りも同じタクシーで帰るという強者もいると説明してくれた。市街地から数分走れば田園風景が広がり、午後10時あたりになるとバイパスでもほとんど通るクルマがいない街であり、インバウンド(訪日外国人観光客)需要もほとんどない街の話であった。

 こうなると、「わざわざ上京して慣れない環境でタクシー運転士をやることもないのでは?」とも考えてしまう。地元近くで大手企業の工場が多く立地している場所ならば、最寄り鉄道駅だけではなく、最寄り新幹線駅や空港までという遠距離利用も出やすいだろう。

 筆者はかねがねタクシーについては「全国ひと括りで語ることはできない」としてきたが、それは地方と都市部だけではなく、地方部でも稼げないとボヤきも聞かれる地域もあれば、東京並みに稼げる地域が地方部でもあることを、今回実感することができた。