近年、マイホーム購入の選択肢として「残価設定型住宅ローン(残クレ住宅ローン)」が注目を集めている。月々の返済負担を抑えながら、これまで手が届かなかった物件にも手が届くと謳われるこの仕組み。脱・税理士の菅原氏は、その構造的なリスクについて正面から論じている。

残クレ住宅ローンの基本的な考え方は、購入物件の将来売却価値をあらかじめ差し引いてローンを組む点にある。たとえば7,000万円の物件が20年後に一定の価値を保つと想定した場合、その分を除いた金額だけを返済していく。月々の支払額は抑えられ、より高額な物件が購入しやすくなるという見た目上の魅力がある。

この制度は今年に入り、銀行やハウスメーカーと組んだ形で急速に広がりつつある。国土交通省が支援する流れとなっており、住宅市場を活性化させて日本経済を動かしたいという国の思惑が背景にある。しかし、菅原氏は「デメリットの方が大きい」と明言する。

まず、20年後に物件価値が想定を下回るリスクは決して小さくない。家族の生活による損耗やペット飼育など、価値の低下要因は日常のあちこちに潜んでいる。さらに、差し引いた残価部分にも利息は発生し続ける。月々の支払いが安く見えても、総支払額ではむしろ割高になる構造が生まれやすい。

加えて、価値を維持するための定期的なメンテナンスが条件となる場合もある。指定業者での修繕を求められるケースもあり、ローン返済以外の支出が積み重なる。菅原氏は、この仕組みをかつてのリボ払いになぞらえて元本がなかなか減らない闇の部分として位置づける。 

20年後のローン満了時にも課題は続く。残価を一括返済するか、売却するか、利息を払い続けながら住むかという選択が待ち受け、いずれを選んでも追加負担が生じやすい。物件価値が想定を大きく割り込んでいた場合、差額の支払いを求められる可能性もある。

菅原氏は、支払い能力が十分でない人がこの制度に飛びつくことで、かつてアメリカで金融危機を引き起こしたサブプライムローンと同様の事態が日本でも起こりかねないと危惧している。月々の返済が少ないという理由だけで契約することの危うさは、20年後・30年後という時間軸で考えたときに初めて鮮明になる。