内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

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「命を失った娘への罪が、こんなに軽いものなのかと思っています」、「私たち家族は、当然無期懲役刑以上の刑を科せられるべきだと考えています」──6月22日、判決を受けて遺族がコメントを発表した。あまりにも悲痛な訴えに、果たして妥当な判決だったのか、改めて考えさせられた人は多かっただろう。2024年4月、北海道旭川市にある神居大橋の欄干から当時17歳の女子高生を川に落下させ、死亡させるという事件が発生した。

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 この事件で殺人罪や不同意わいせつ致死罪などに問われた内田梨瑚被告(23)に対し、旭川地裁の裁判裁判は6月22日、検察の求刑通り懲役27年の判決を言い渡した。

内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

 元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は「検察の求刑通りの判決だったことから、裁判員の皆さんも事件の残虐性を重く受け止め、できるだけ厳しい量刑を検討したのではないかと考えられます」と言う。

「しかし、そうなると、だからこそ検察が無期懲役や懲役30年を求刑していたら……と考えざるを得ません。特に裁判裁判の目的は、市民の常識や素朴な感覚を刑事裁判に反映させることです。今回の事件は、一般的な殺人事件とは比較にならないほど凶悪な犯行です。中でも被害者は全ての服を脱がされ、冷たい川の中に落とされ、ご遺体は1カ月もの間、冷たい水の中に放置されました。こんなことが許されていいはずがありません。極刑を求める世論もありましたが、さすがにそれは難しい。ならば検察は無期懲役を求刑し、後は裁判員の自由な討論に任せるべきではなかったかと改めて思います」

 検察が懲役27年を求刑しても、裁判所が懲役30年や無期懲役の判決を下すことは可能だ。とはいえ、一般の国民から選ばれた裁判員に、その重責を託すのは酷に思える。

量刑の決定方法

「評議の内容は絶対に公開されません。旭川地裁で裁判官と裁判員の合計9人が懲役27年で全員一致した可能性も否定はできないでしょう。ただし、全員一致しない場合は『被告人に最も不利な意見の数から順次、有利な意見の数に加え、過半数に達するまで重ねていく』という方法を採ることに注目すべきかもしれません」(同・若狭弁護士)

 例えば求刑を超えた無期懲役にすべきだと主張した裁判員が1人いたとする。当然ながら過半数の5人には足りない。

「その場合、無期懲役を主張した裁判員は、その次に厳しい量刑を主張した裁判員に加えられるのです。例えば次に厳しい量刑として懲役30年を主張した人が2人いたとします。そうすると無期懲役を主張した1人と合わせて3人が懲役30年の量刑を主張したことになりますが、まだ過半数には届かない……。ということを過半数に達するまで繰り返すのです。検察の求刑通りの判決が下ったということは、内田被告に対して求刑以上の厳罰を科すべきだと考えた裁判員がいた可能性があります。あくまでも推測の話だとはいえ、無期懲役や懲役30年を主張した裁判員がいたかもしれないのです」(同・若狭弁護士)

 検察が懲役27年を求刑した最大の理由は、“石橋を叩いて渡った”からだろう。検察の判断がSNSなどで「甘すぎる」と批判が殺到したのはご存知の通りだ。

内田被告は控訴するのか?

 その一方で、検察の“安全策”は内田被告が判決をどう受け止めるかに影響を与える可能性があるという。具体的には“控訴するか”どうかだ。

「検察は慎重の上に慎重を期して懲役27年を求刑し、求刑通りの判決が下りました。そのため、控訴審で弁護側が減刑を勝ち取るのは相当に難しいと考えます。ここでポイントになるのが受刑期間の問題です。控訴審で懲役27年が26年に減刑されれば、警察の留置場や拘置所にいた『未決勾留期間』は刑期に算入されます。つまり実際の受刑期間は短くなるわけです。ところが控訴棄却の場合はその全てが算入されるわけではありません。1年かけて控訴審を争っても、控訴棄却だと実際の受刑期間が短くなる“メリット”は消えるので、1年を無駄にしたとも言えます。これなら控訴せず、服役したほうが内田被告にとっては得策かもしれません。これを内田被告がどう判断するかでしょう」(同・若狭弁護士)

 SNSでは求刑も「甘い」と批判された。今回の判決も同じように「あまりにも軽すぎる」という怒りの投稿が殺到している。若狭弁護士は「こうした批判に法曹界は耳を傾けるべきだと思います」と言う。

「重要なのは2023年に『強制わいせつ罪』が『不同意わいせつ罪』に改正されたことです。かつての強制わいせつ罪は『男性が女性に対し性的欲求を満たす目的で及んだ犯行』と運用が限定されることが多く、それが問題視されたからです」

遺族は法改正を要望

「今回の事件では被害者の服を脱がし、動画を撮影するといった行為により、被害者の尊厳は踏みにじられました。これも紛れもない性暴力であり、こうした性暴力も罰することができるよう不同意わいせつ罪に改正したのです」(同・若狭弁護士)

 ところが検察は論告求刑で「類似の事件で無期懲役と判断されたのは性的欲求を満たす目的があった場合であり、被害者に対する『制裁』が目的だった今回の事件では懲役27年が相当である」と法廷で説明した。

「『性犯罪の厳罰化』を国民が求めたからこそ、不同意わいせつ罪に改正したのです。そうした法改正の趣旨を検察は全く求刑に反映させませんでした。検察の見当違いは甚だしいと言わざるを得ません。これは国民の声を無視したに等しく、だからこそ求刑に批判が殺到したのです。この声を法曹界は重く受け止める必要があると考えます」(同・若狭弁護士)

 判決公判の終了後、一部の裁判員が報道各社の取材に応じた。ある男性裁判員は「被害者の父親が『娘の望む判決を』と言っていたが、今回差のある内容になり、申し訳ない」と謝罪したという。

 さらに遺族はコメントで「特に今回のような殺人罪については、適正な刑を科すため、有期刑の上限を上げる法改正を検討していただくことを要望します」と訴えた。

 検察が説明した「27年が相当」は正しかったのか。関連記事【【旭川女子高生殺害】内田梨瑚被告に「なぜ無期懲役を求刑しなかったのか」の声が殺到…元特捜部副部長は「被害者が性暴力によって肉体だけでなく魂まで殺された」と指摘】では、求刑への疑問に迫っている。

デイリー新潮編集部