日本はカローラ・フィット・ヤリス・N-BOX……じゃあ中国は? 巨大な自動車市場をもつ中国の国民車とは

この記事をまとめると
■北京モーターショーでは旧車展示が目立つも来場者の反応は薄めだった
■中国では年間50万台超えのヒット作でもその市場シェアはわずか1.5%となる
■巨大市場ゆえに「国民車」が育ちにくい独特の事情がある
北京モーターショーでの旧車展示が意味不明
先日開催された「第19回北京国際自動車展覧会(北京モーターショー/2026年4月24日〜5月3日開催)」の会場展示面積は38万平方メートルに及び、1451台の完成車が展示されたとのことである。しかし、コロナ禍前にひんぱんに訪れていた北京そして上海、広州といった中国のモーターショー会場に比べると出展者数が少なめに見えた。大手ブランドは広大な展示ブースを構えていたが、ややもて余し気味のように見えるほど間延びした展示内容となっているところも目立った。それでも会場が埋まりきらなかったのか、不思議な空間があったり、完成車展示棟であっても骨董商がブースを構えているという光景も目にすることができた。
メルセデス・ベンツのブースも広大なスペースで構成されていたところのひとつ。実際に行ってみると、会場全体の3分の1が、まるでメルセデス・ベンツ博物館の出張展示のように、往年のモデルが展示されていた。リムジンやマイバッハ、Sクラスあたりが展示されていたが、中国がいまのような自動車社会となりはじめてから30年ぐらいしか経っていないことを考えると、これらの旧車を見て懐かしいと思う来場者は限定的なように見えた。

しかし、会場を歩いていると、メルセデス・ベンツほどではないものの、往年の名車が展示されていた。BMWブースへ行けば、日本人なら「懐かしいなぁ」と思ってしまう02シリーズが、ホンダブースに行けば初代アコード(ハッチバック)が展示されていた。

02シリーズはもとより、初代アコードがデビューしたころ(1976年)の中国といえば、みんなが人民服を着て街には自転車が溢れていたと記憶している。「誰に向かって展示しているのか?」と、会場内ではそのような疑問の声もよく聞かれた。

広大な国土をもつ中国では、たとえば上海には上海汽車というように、主要都市には地元メーカーがあり、年間新車総販売台数が3440万台(2025暦年締め)という巨大で世界一の市場を構成していても、全中国で大ヒットしたといえるような販売実績を残すというモデル、日本でいうところのホンダN-BOXのような、どこでもよく見かけるというモデルは存在しないといっていいだろう。
中国ではよく見かけるなぁというクルマは地域ごとに変わる
たとえば2025暦年締めにてもっとも中国で売れたNEV(新エネルギー車/BEV[バッテリー電気自動車]やPHEV[プラグインハイブリッド車]など)は、BYDオート(比亜迪汽車)のコンパクトハッチバックスタイルのBEVシーガル(海鴎)で、52万9537台を販売した。一方、ガソリン(汽油)車では東風日産のシルフィ(軒逸)が31万4528台でトップとなっているので、ここではシーガルを2025年にもっとも中国で売れたモデルとする。総新車販売台数が3440万台なので、全体に占めるシーガルの割合は約1.5%となる。

一方、N-BOXは2025暦年締め年間販売台数は20万1354台。2025暦年締めでの日本における総新車販売台数は456万5503台なので、新車販売全体におけるN-BOXの割合は約4.4%となっていた。日本で販売されている日系乗用ブランドは9つなのに対し、中国では沿岸地域など広く市場進出していない内陸地域の零細メーカーも含めるとまさに星の数ほどメーカーがあるのでそもそも単純比較はできないのだが、国土も広くメーカーも無数にあるなかでは国民的人気車というものは育ちにくいのではないかと筆者は考えている。
外資系モデルが中国の自動車市場をけん引していたころには、多くの都市で上海VW(フォルクスワーゲン/上海大衆)のサンタナがタクシーとしても活躍しており、どこへ行っても多く見かけることができた。VWが会場でサンタナや、北京市内でかつてはタクシーとしてよく見かけた一汽VWのジェッタを会場展示していれば「懐かしい」と思う中国のひともいるだろうが、メルセデス・ベンツSクラスやBMW02シリーズ、初代アコードでは、「???」と思うひとばかりなのではないかと感じてしまった。

広大な国土をもち、人口は14億人ほどおり、我われから見れば同じ言語に聞こえてもお互い北京語で会話しないと会話が成立しないことも多いのが中国。消費者の多様性が進むなか、自国系自動車メーカーが多数あることを考えると、今後は博物館や旧車展示されても訪れた誰もが懐かしいと感じる国民的モデルというものは成立しにくく、そのため個別の車種にとくにこだわることはなく、多品種構成で各メーカーもブランド全体にて販売台数を積み上げていくことになるだろう。
消費者も、中国全土での人気車ということに強いこだわりは見せないものと考えている(北京はどちらかというとセダン需要がまだまだ旺盛に見えるなど地域での趣向性の違いも大きいようだ)。ただ、地元メーカーということはある程度意識されていくことは今後も目立っていくのではないかと考えている。




