スマートフォンに内蔵されたセンサーから日常生活中に集めた微細な動きのデータで、喫煙への欲求や禁煙後の再喫煙の兆候を予測できることが示されました。この研究結果は禁煙支援アプリの個別化と即時介入につながる可能性があります。

Smartphone movement data can reliably predict smoking lapses and cravings to enable timely smoking cessation support | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-026-49611-y

Smartphone data predict smoking cravings and lapses, with potential to treat addiction and other conditions

https://medicalxpress.com/news/2026-05-smartphone-cravings-lapses-potential-addiction.html

実験はマンチェスター・メトロポリタン大学とランカシャー大学の研究チームによって行われました。対象は17人の喫煙者で、3カ月半にわたりスマートフォンアプリを使ってデータが収集されました。

参加者は最初の2週間、たばこを吸うたびにアプリのボタンを押して記録しました。そしてその後の3カ月は禁煙後の再喫煙と5段階で喫煙欲求を報告しました。スマートフォンでは加速度計やジャイロスコープ、磁力計、光センサー、時刻、GPSのデータが継続的に記録されました。予測モデルでは主に加速度計、ジャイロスコープ、磁力計から得た動作データが使われました。



その結果、深層学習モデル「1D-CNN-BiLSTM」はスマートフォンの動きだけを使って5分以内の喫煙行動を85%の精度で予測したとのこと。従来の誘因である時刻などを使った場合の精度は63%で、微細な動きのデータが高い予測力を持つことが示されました。

禁煙後の3カ月間についても、1D-CNN-BiLSTMは喫煙欲求や再喫煙を78%の精度で予測しました。別の喫煙者のデータで学習した場合でも予測できたことから、喫煙に関連する微小な動きのパターンが個人だけに限られない可能性も示されています。

研究チームは、この技術を禁煙支援アプリに応用できるとみています。たとえば強い欲求が起きる直前に、健康のために禁煙したい人にはレースのゴール写真を、家族のために禁煙したい人には家族写真を表示するような支援が想定されています。



実験室や装着型センサーではなく、普段使っているスマートフォンから制約の少ない実生活データを集めたという点がこの研究の特徴です。GPSは位置情報の機微性や取得条件の偏りがあるため、モデルには使われませんでした。一方で、研究対象はイギリスの参加者に限られており、文化や生活習慣、身体機能が異なる集団で同じ性能が得られるかは今後の検証が必要だと研究チームは述べています。喫煙や欲求の記録が自己申告に頼っている点も限界として挙げられています。

研究者らは、微細な動きの解析が過食や不眠、メンタルヘルス、摂食障害など、喫煙以外の行動や健康状態の予測にも広がる可能性を指摘しています。