漫画『あしたのジョー』の舞台が激変している…!変わりゆく労働者の街「山谷」の″今昔″密着ルポ
高層マンションがそびえ立ち
4年ぶりに現地を訪れて驚いた。
簡易宿泊所が密集していた場所には13階建てのマンションがそびえ立ち、駐車場は工事関係の車両で満車。大型トラックが狭い道を行き来し、現存する古い建物もいずれ解体されるのだろう――。
東京都台東区の清川、日本堤(にほんつつみ)、東浅草の「山谷」と呼ばれる一帯だ。江戸時代から素泊まりの「木賃宿」が集まり、昭和に入ると日雇い労働者の街として有名になった。しかし最近、山谷の様子は一変しようとしている。
「″ドヤ″を壊すな! 山谷にマンションを建てるな!」
この街に高層マンション建設反対の声が響いたのは、今年1月のことだ。労働者を支援する30人ほどのスタッフがデモ行進。約80人の警察官に囲まれながら、シュプレヒコールをあげていた。
私が山谷を初めて訪れたのは、13年ほど前になる。訪問医療の取材をしたのがキッカケだ。以来、折に触れて山谷に住む労働者に話を聞き、大晦日(おおみそか)には炊き出しの手伝いをしたこともある。
「以前は大晦日に労働者を支援する役者たちが中心となり、路上で彼らを楽しませるための芝居をしていました。さらに、鍋で温かい年越しそばを作り、労働者の人たちにふるまっていた。しかしコロナ禍で状況は一変します。人々が密集する芝居は感染防止のため中止となり、年越しそばはカップ麺に替わってしまったんです」(労働者支援スタッフ)
新しいマンションが続々と建ち始めた山谷……。生活保護を受けながら、簡易宿泊所で生活する50代の男性が嘆(なげ)く。
「山谷は漫画『あしたのジョー』の舞台になった街で、コロナ前は全国から労働者が集まり活気がありました。でも最近は祭りや芝居などのイベントも減り、大正時代から続く『いろは会商店街』の300mほどのアーケードも数年前に撤去されてしまった……。老朽化や防災が理由だそうですが、路上生活者が雨風をしのげる場所がなくなってしまったんです」
わずかに残った簡易宿泊所も、インバウンド向けの新しいゲストハウスへ様変わりしようとしている。
東京都福祉局は〈東京都山谷対策総合事業計画〉というプロジェクトを進めている。地域環境の改善を目的とした事業計画だ。同計画には〈施策の方向性〉として次のように記されている。
〈山谷地域は、新築マンションの増加による新たな住民の転入などにより、まちの様相は大きく変化している。こうした背景を踏まえ(中略)環境美化活動など山谷地域の環境改善に取り組む〉
山谷労働者福祉会館活動委員会の、向井宏一郎氏が憤(いきどお)る。
「都はきれいごとしか言っていません。社会的に立場の弱い人たちが、排除されようとしているんです。それが、今の山谷の現実です」
「労働者の街」は、マンションが建ち並ぶ「住宅街」に様変わりしつつある。
『FRIDAY』2026年5月29日号より
PHOTO・文:船元 康子(FRIDAYカメラマン)
