Z世代 は「ドーパミン優先」で買う。節約とご褒美が交差するハイ&ロー消費

記事のポイント 経済的な課題に直面するZ世代は、賢明な消費行動として、高価なものと安価なものを組み合わせる「ハイ&ロー」な購入方法を実践している。 日常品の支出を抑える一方で、アイデンティティを定義する高級品やトレンドアイテム、心の健康につながる「ささやかなご褒美」といった特定のカテゴリーには積極的に支出している。 「今すぐ購入、後で支払い」やグループ購入、中古品利用など、上の世代にはない創造的な方法で節約や価値志向の行動を実践しており、この消費行動の変化に企業は対応する必要がある。
この世代は経済的にもっとも困難な状況にあるにもかかわらず、支出に関してはもっとも賢明な世代のひとつであることが証明されつつある。「彼らは消費を控えているわけではない」と、コリアーズ(Colliers)のリテール・プラクティスグループ担当ナショナルディレクターであるアンジー・ソランキ氏は述べている。「ただ、支出の優先順位を変えているだけだ」。
一部の消費者は、コーチ(Coach)のバッグやウールのピーコートなど、より頻繁に使用し、人目に触れるアイテムに投資している。一方で、カジュアルな服をリサイクルショップで購入したり、ファストカジュアルレストランなどでの単発の利用を控えたりして節約している消費者もいる。こうした状況を受けて、あらゆる業界のブランドは、節目を迎えるにつれて購買力が高まる顧客へのアプローチ方法を調整している。たとえば、顧客にお得感を与えるようなオファーを増やしたり、ポップカルチャーのトレンドにすばやく対応したりすることが挙げられる。
たとえば、チポトレ(Chipotle)のスコット・ボートライトCEOは、直近の決算説明会で、25歳から35歳の年齢層は「特に厳しい状況」にあり、失業、学生ローンの返済、賃金の伸び悩みといった逆風に直面していると述べた。2026年を見据え、同CEOは、「サマー・オブ・エクストラ(Summer of Extras)」のようなキャンペーンをさらに展開して、顧客層の回復を支援すると語った。この3カ月間のプロモーションでは、顧客は追加のロイヤルティポイントを獲得して、無料のブリトーが当たるチャンスも得られる。
ワービー・パーカー(Warby Parker)の共同創業者兼共同CEOであるデイブ・ギルボア氏は、今月初めの第3四半期決算発表で、若い世代の顧客がより低価格のフレームを選んだり、コンタクトレンズの注文量を減らしたりしており、顧客離れが進んでいると述べた。メガネの医療上の必要性と比較的裕福な顧客基盤を考えると、同社は影響からある程度保護されているとギルボア氏は語るが、それでも同社は通期業績予想を従来の14〜15%から約13%に引き下げた。
「我々は、将来に対してますます不安を感じており、より慎重な購買行動をとっている若い顧客層にサービスを提供している」と、ギルボア氏は述べた。
「ささやかなご褒美」と「大きな贅沢」の経済学
この世代が支出に気を遣っていることは、驚くにはあたらない。最近のコリアーズの調査では、Z世代の48%が経済的に安心感がないと回答しており、これはどの世代よりも高い割合だった。しかし、だからといって彼らがまったくお金を使っていないわけではない。商業不動産会社コリアーズの小売サービス担当ナショナルリサーチマネージャーであるニコール・ラーソン氏は、Z世代の買い物客は日用品への支出を減らし、自分たちのアイデンティティを確立するのに役立つ商品に投資するために節約していると述べる。それは、ラブブ(Labubu)ブームのようなトレンドに飛びついたり、高級品に散財したりといった形で現れるのかもしれない。
「(その購入が自分の)長続きする感情的な結びつきにつながるなら、それこそがZ世代が贅沢品やちょっとしたご褒美を買っている理由だ」と、ラーソン氏は言う。
いつ、どこでご褒美を得るかは、トレンドにも左右される。フレーバーシロップメーカーのトラーニ(Torani)の顧客・消費者インサイトマネージャーであるアンドレア・ラミレス氏は、同社は「ささやかなご褒美」文化をうまく活用し、特に季節や文化的な節目に合わせてZ世代にアプローチしてきたと語る。「ダーティ・ソーダ(dirty soda)」が『The Secret Lives of Mormon Wives』のおかげで注目を集め始めたとき、同社はオンラインでレシピを積極的に公開した。
しかし、ラミレス氏は、関連性は細部に宿ると述べる。「(人々のSNS投稿で)透明なグラスが使われていれば、当社が投稿するダーティーソーダの作りかたやそれを楽しむ人々の動画のすべてに透明なグラスを使う。美しいだけではなく、それが行動そのものだからだ」。
タペストリー(Tapestry)のジョアン・クレヴォワセラットCEOは、2026年度第1四半期の決算説明会で、新規顧客と若年層の顧客は、同社のほかの顧客層よりも高いAURで取引し、高いリテンション率を誇っていると述べた。「彼らはまた、あらゆる世代に影響を与えており、Z世代と非Z世代の両方で顧客獲得とリテンション率の向上を達成した。これは、これは、当社のブランド共鳴とリーチの拡大を明確に示すものだ」。
コンサルティングネットワークのZスイート(The Z Suite)に所属するビューティ企業のマーケター、アンジェリーナ・アイリーン氏は、Z世代は「ドーパミン誘導型」の購買行動、特に健康や気分をアップするものに関係する購買行動に傾倒していると述べる。彼女が最近行った散財の一つは、アダプトゲン製品をいくつも購入し、どれが一番気に入るかを試したことだった。
「Z世代は自分の心身の健康を本当に大切にしている。メンタルヘルス、体の健康、食べ物、美意識、旅行など。これらは気分を上げるために欠かせないものだと考えられている」と、アイリーン氏は語った。
中古品の利用と賢い節約術
それでも、Z世代は節約する方法を探している。そして、この世代は、上の世代には時間やエネルギー、または技術的な知識もない可能性のある方法で節約できるかもしれない。ラーソン氏によると、クーポンサイトをくまなく探したり、AIにお得な情報を尋ねたりする人もいるという。あるいは、今すぐ購入し後で支払うプランで購入資金を調達する人もいる。フィラデルフィア連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of Philadelphia)が4-in-6決済(訳注:4回の分割払いを6週間で完了する)商品に特に焦点を当てて実施した調査によると、2024年第4四半期のユーザーの46.1%が36歳未満であったことが判明した。
彼らはまた、共有するために数人で商品を購入する「グループ購入」のように、創意工夫を凝らすのもいとわない。コリアーズのラーソン氏は、自分のティーンエイジャーのいとこが数人の友人と一緒にお金を出し合って高級バッグを購入したと述べた。数週間ごとに各自が「親権」を得る。「最終的には誰かが傷つくことになる」と彼女は言う。「長期的にはうまくいかないと思うが、皆でお金を出し合って高級品を買っている」。
ラーソン氏は、価値を追求する行動が中古品購入の促進にもつながっており、これはZ世代のショッピング体験に不可欠な要素になりつつあると述べた。ちょうど11月中旬に発表されたザ・リアルリアル(The RealReal)の第3四半期決算では、総売上高が前年比17%の伸びを示した。同社の顧客ベースの半分はミレニアル世代とZ世代の買い物客で構成されている。
「我々は、収入を得る段階に入りつつある若い顧客を抱えており、当社は彼らから商品を購入するための優れたプラットフォームと見なされている。そして、その関係は、顧客が年を重ねるにつれて成長し、進化し続ける」と、ザ・リアルリアルのCFO、アジャイ・ゴパル氏は決算説明会で述べた。
ペンシルベニア大学の4年生で、Zスイート・コンサルティングネットワークに属するブライス・リー氏は、一部をのぞいて大部分の服を中古で購入しているという。学校のダンスチームのメンバーとして、彼はルルレモン(Lululemon)のスウェットコレクティブ(Sweat Collective)グループを通じて25%オフで服を買える。しかし、彼や友人たちはお祝いの機会やプロフェッショナルなシーンのためには大金を支出する。そういうときは、不朽のアイテムに大金を費やす」と、リー氏は語る。「そういう場面では、人々は自分を素敵に見せたいので、洗練された印象にするためにもっと支出するのには抵抗がない」。
リー氏は、最近購入したアッシュ&エリー(Ash & Erie)のピーコートが小柄な体型にぴったりフィットし、褒め言葉をかけられているという。「箱から出した瞬間、まさに探していたものだと感じた。とても暖かくて、着ると自信がわいてくる」。
同氏は、毎日使うもの、クラシックで時代を超越したデザイン、そして何年も使えるものなので、中古品を買うよりも高い金額を払ってもいいのだと語った。
「人々はお金を使うことに興味がないわけではない。だが、必要のないものに余計なお金を使うのは嫌なのだ」と結んだ。
[原文:Brands Briefing: How retail companies are adjusting to the bifurcated Gen Z shopper]
Melissa Daniels(翻訳・編集:ぬえよしこ)
