【アニメ大先生】『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が大人も泣ける理由
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。
第2回は、アニメ愛にあふれる人気アナウンサー・八木 美佐子氏が登場する。八木氏が語る「アニメ大先生」からの教えとは――。
上映中、四方から聞こえるすすり泣き。ふと気が付くと、私は「涙の四面楚歌」の中にいました。
鬼滅旋風が再び日本を席巻しています。7月18日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、公開4日で73億円を突破しました。特に7月20日の単日興収は20.3億円となり、日本映画史に残る歴代1位の記録となりました。筆者もその日に鑑賞しましたが、客席の約7割を大人が占めており、社会現象としての広がりを改めて実感しました。
『鬼滅の刃』は鬼に家族を奪われた炭治郎が、鬼となった妹を人間に戻すため剣士として戦う物語であり、今作は、鬼の本拠地・無限城での死闘が描かれた原作最終章の映像化三部作の第1章です。
本作の核は、”敵=悪”という構図を超えた哀しみの描写にあると感じます。鬼もまたかつては人間であり、選びようのない喪失が彼らを鬼にしたことが描かれています。その動機は単純な「悪」とは断じきれません。味方である鬼殺隊もまた哀しみを背負う者たちであり、正義と悪の単純な対立を超えた『鬼滅の刃』は、物語をただの勧善懲悪に終わらせません。こうした一言で言い表せない背景が大人の心を深く揺さぶるのだと思います。
本作の特筆すべき点は、この”哀しみ”の描写が約155分の上映時間を通して、映像美・音響・演技のすべてで途切れることなく、静かな波のように押し寄せてくることです。
隣の友人はハンカチでは足りずタオルで涙をぬぐっていました。私も心を深く揺さぶられた観客のひとりですが、うっかりハンカチを忘れてしまい、「拭わぬ男泣きスタイル」になりましたので、ハンカチは必須です。
特に印象に残ったのは、胡蝶しのぶ役の早見沙織さんの熱演です。怒りをにじませたある場面で、声も混じらない純度の高い「舌打ち」が劇場内に響きました。その感情表現と息遣いが耳に強く残り、静かな怒りに震えました。その舌打ちをもう一度聴きたくて、再び劇場に足を運ぶ予定です。声優さんの本気の舌打ちを高音響で聴きたいという方にも、ぜひ本作をおすすめします。
『鬼滅の刃』は、映像の美しさやアクションの迫力だけでなく、演技でも心を打ちます。クライマックスに向かう今こそ、全集中の呼吸で(ぜひ舌打ち音にも)耳を澄ませてください。
最後にひとつ、私の後悔を告白するとすれば、それは軽い気持ちでポップコーンとドリンクを買ってしまったことです。約155分の間映像から目が離せず、手をつけるタイミングを失いました。張り詰めた緊張感の中、初めて観る方はきっと息を呑むこと間違いなしです。
『鬼滅の刃』は、哀しみの中で想いを貫く姿を通して、正しい生き方とは何かを問いかけてくれる作品です。
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みなさま、初めまして。フリーアナウンサーの八木美佐子と申します。物心ついたときからアニメはいつもそばにありました。日常の喜びや戸惑いの中で、アニメが心の支えになっていました。気が付けば毎クール全アニメをチェックするのが日課になっています。この夏の悩みは、リアルタイムで観たい作品が多すぎて放送時間が見事にかぶってしまうことです。
そんな”選べないほどに愛しいアニメ”たちから、これまでどんなことを教えてもらったのか、少しずつ言葉にして届けていけたら幸いです。
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