ビューティ業界で デュープ 急増 ブランドが訴訟で対抗

記事のポイント
デュープ製品がビューティ業界で急増し、ソーシャルメディアでの人気も高まっている。
ブランドはデュープによる混乱を防ぐため、トレードドレス侵害で訴訟を起こしている。
多くの訴訟は和解で終結し、訴訟継続の負担と知的財産保護のバランスが課題である。
デュープ製品がビューティ業界で急増し、ソーシャルメディアでの人気も高まっている。
ブランドはデュープによる混乱を防ぐため、トレードドレス侵害で訴訟を起こしている。
多くの訴訟は和解で終結し、訴訟継続の負担と知的財産保護のバランスが課題である。
ビューティ業界ではかつてないほど「デュープ(模倣品)」が人気を集めている。そしてそれを店頭から排除しようとする訴訟もまた同様に増えている。
「デュープ」とは「デュプリケート(duplicate)」の略語として使われる口語表現であり、一般的には高価格帯のアイテム、特にそのカテゴリーのリーダーや話題のラグジュアリー製品に触発された製品を指す。ただし、オリジナルと偽って販売される「偽造品」とは異なるものである。
「ほかのブランドをコピーしたり模倣したりすることが、必ずしも違法であるとは限らない」と、フロリダを拠点とするブランド保護専門の弁護士エリザベス・ミリアン氏は述べている。「多くの人にとって意外かもしれないが、一般的に言えば、デュープ自体は違法でない場合もある」。
Glossyが過去に報じたように、ここ数年で業界全体においてデュープは急増している。信頼されるトップブランド、カラーポップ(Colourpop)、ニックス(Nyx)、メイベリン(Maybelline)、ロレアル・パリ(L’Oréal Paris)などはデュープ製品を積極的に展開しており、エムコビューティ(MCoBeauty)やカトリス(Catrice)といったグローバル企業は、ラグジュアリー製品のデュープによってビジネスを拡大してきた。
市場調査会社ミンテル(Mintel)が2024年に実施した調査によれば、化粧品使用者の10人中7人がデュープを購入した経験があり、調査対象者の半数以上がソーシャルメディアでデュープ製品を積極的に探しているという。
法廷闘争がブランド保護の手段に
このようなデュープ人気は、ブランドが法廷でブランド保護を求める動機となっている。Glossyのビューティポッドキャストで、ミリアン氏は最近のいくつかの訴訟例を紹介した。
たとえば、2025年6月、日焼け止めブランドのスーパーグープ(Supergoop!)が、小売業者ファイブ・ビロウ(Five Below)を提訴した。これは、同社のプライベートブランド「シュガーガール(Sugargirl!)」がスーパーグープ製品に酷似しており、同ブランドのロゴやパッケージによる消費者認知を不正に利用していると主張している。
また7月、ソル デ ジャネイロ(Sol de Janeiro)がエムコビューティを提訴した件も話題となっている。エムコビューティが12ドル(約1900円)で販売するボディミストが、ソル デ ジャネイロの25ドル(約3900円)相当の人気製品に酷似していると主張するものだ。いずれの訴訟も現在進行中である。
もっとも注目すべき事例は、裁判外和解で終わらなかった数少ない和解済み案件のひとつである。2023年、ベネフィット(Benefit)はエルフビューティ(E.l.f. Beauty)を訴えた。訴因は、2015年に発売された29ドル(約4500円)の人気製品「ローラーラッシュ(Roller Lash)」のマスカラを模倣したというものだ。
エルフビューティは2022年に、黒とピンクのパッケージを採用した6ドル(約940円)の「Lash ‘N Roll」を発売した。ベネフィットにとってこの製品は重要であり、2023年時点で3億ドル(約470億円)以上を売り上げていた。
「裁判記録を読むと、ブラシ部分の形状がどれだけ似ているか、キャップの色は同じか、ピンクの色合いが一致しているか、両方に模様があるかどうかなど、何ページにもわたって詳細な議論が展開されていた」とミリアン氏は述べた。「エルフビューティは、ピンクの色合いが異なること、製造過程でそれが意図されたものであること、また価格帯が違うことを示すことで、消費者が混乱する可能性は低いと主張できた」。
2023年12月、裁判所はエルフビューティに有利な判決をくだした。すなわち、高級ブランドに着想を得ること自体は違法ではなく、問題は「デュープが本物であると誤認されるかどうか」であり、ベネフィット側はそれを証明できなかった。
「こうした訴訟の争点となるのは『消費者が実際に混乱しているのか』という点だ」とミリアン氏は述べた。「消費者の混乱は、仮定の話ではなく、現実に起きていなければならない。単に起こりうるというだけではいけない」。
ブランドの義務と「共存」のリスク
「法律にはグレーゾーンが存在しており、だからこそデュープを製造する企業が次々と動き出しているのだ」とザーボ氏は語る。
デュープとされたブランドが、自社のパッケージ、ブランディング、ロゴ、そのほかのユニークな資産に関連するトレードドレスやIP(知的財産)の侵害を理由に訴訟を起こすのはよくあることだ。その目的は、主に店舗からデュープを排除することである。
「この行為は、デュープを作っている企業に対して『訴訟される可能性がある』というメッセージを送っている」とザーボ氏は述べた。「その訴訟が妥当かどうかに関係なく、訴えること自体に意味がある。誰でも訴訟を起こすことはできるが、主張が意味のある主張である保証はない」。
多くの訴訟は立ち上がってはすぐに終結し、裁判外で密かに和解することが多いが、ミリアン氏はこれを「長期的な知的財産保護のためには不可欠な行動」だと考えている。「ブランドは市場を監視し、行き過ぎた模倣行為を早期に封じ込めるべきである」と述べた。これには「共存」と呼ばれるリスクを防ぐ目的がある。共存が起きると、模倣品が市場シェアを拡大したのちに、元ブランドがIP権利を主張するのが難しくなるのだ。
「ブランドにはIPを監視する義務がある」とミリアン氏は言う。「たとえば、誰かが2年間にわたって模倣品を販売しているのにそれを放置すれば、両製品が市場に共存していたという事実ができてしまい、消費者の混乱を主張しにくくなる」。
ワシントンD.C.を拠点とする商標専門弁護士ジョシュ・ガーベン氏によれば、デュープに関する何千件ものトレードドレス侵害訴訟の大半は、金銭の授受なしに解決されている。
「実際、金銭のやり取りはほとんどない」とガーベン氏は語った。「模倣品の販売をやめさせること、それこそがブランドが法的にもっとも注力し、投資する目的である。人気製品を守り、売上を確保するための行動なのだ」。
この種の訴訟でブランド側が負担する最大のコストは、通常は弁護士費用だ。「法的措置を継続するための費用と、それを打ち切って必要な結果を得て前に進むための費用のバランスを計算することになる」とガーベン氏は述べた。
裁判官や陪審員による最終的な判決が下されることはほとんどないため、ベネフィットとエルフビューティのケースは極めて異例である。
ザーボ氏によれば、ブランドがデュープ排除に成功しにくい理由は、「パッケージの形状や香水の香りの構成要素といった汎用的な製品特性について、企業が完全な独占権を主張することはできない」からである。
「こうした『デュープ事件』の急増はまだ始まったばかりだが、ファストファッションとの類似性がある」とザーボ氏は語る。「ファッションの世界でもあらゆる種類の侵害が見られたが、それでもファストファッションはなくならなかった。ファストファッションは消滅したどころか、よりスピードと規模を増している」。
[原文:What beauty’s latest ‘dupe lawsuits’ tell us about its changing relationship with inspiration and IP]
Lexy Lebsack(翻訳・編集:坂本凪沙)
