逮捕された連続強盗事件の実行犯。左から久保田陸斗容疑者(千葉県警提供)、宝田真月容疑者

写真拡大

 平穏は13日しか持たなかった。10月30日未明、東京都三鷹市の住宅に複数人が押し入る強盗未遂事件が発生した。警視庁は、8月から関東圏で連続強盗事件を起こしてきたグループと同一犯の可能性があるとみて捜査している。

 ***

【写真】美人揃いだった「女ルフィ」たちと「最年長ルフィ」が“ガチ恋”したフィリピン人ホステス

警察を嘲笑っているようにも見える

 30日午前1時過ぎ。東京都三鷹市の住宅にいた30代女性から「家に人が入ってきた」との110番通報が入った。

 1階の窓を破って侵入してきたのは複数の男たちだった。男らは在宅していた70代の男性の首を絞めるなどしたが抵抗されたため、何も盗らずに逃走した。

逮捕された連続強盗事件の実行犯。左から久保田陸斗容疑者(千葉県警提供)、宝田真月容疑者

 未明に1階から強引に侵入する手口、複数人による犯行、出くわした住人に危害を加える荒っぽさなど、あらゆる点が今世相を騒がせている連続強盗事件と似ている。

 警察関係者は「実行犯を捕まえてみないとわからないが」と前置きしながらこう語る。

「これだけ騒ぎになっている中で別グループが動き出したとは考えにくいし、おそらく同一グループだろう。指示役の首謀者はよほど捕まらない自信があるに違いない。普通の神経をしていたらビビって控えるところだが、横浜で強盗殺人を起こした後も千葉で2件立て続けに事件を起こしたくらいだ。警察を嘲笑っているようにも見える」

進まぬつきあげ捜査

 つきあげ捜査は2ルートで進んでいるが目立った進捗はないという。一つはグループが犯行の指示に利用していた携帯電話からのルート。5都県で押収された携帯電話はすべて警視庁の捜査支援分析センター(SSBC)に集められ、連絡手段として用いていた通信アプリ「シグナル」の分析が進められているが、

「『織田信長』などと名がついていたおよそ30個あるアカウントの存在と識別情報が判明したのが限界。匿名性が高いアプリなので識別情報が分かってもそれが何を意味しているのかわからずお手上げ状態です。現在、アメリカのシグナル社に捜査依頼をしていますが、メッセージの復元は難しいと考えられている」(同)

 仮に指示役が利用していた携帯電話まで遡れたとしても、飛ばし携帯を使っていたならば意味もない。

「せめて携帯を利用していたエリアだけでも分かればという期待はある。指示役は国内にいるのか、それともルフィ事件のように海外にいるのかすら分かっていない。いずれにしても、シグナル社からの打ち返しにはまだ時間がかかりそうだし、あまり期待もできない」(同)

 もう一つは被害品の回収ルートだ。これまで末端にいる実行犯たちは30人以上逮捕されてきたが、何らかの手段で指示役は実行犯から被害品を回収しているはずである。だがこのルートも難航している。

「国分寺市で起きた事件で回収役として逮捕された、唯一の女性の逮捕者である樋口伶奈容疑者は『公園で男に金を渡した』と供述していますが、それ以上は遡れていない。実際、過去の類似事件を見てみても、このような受け渡し現場に指示役が現れるケースは少ない。回収過程でも使いっ走りの闇バイト犯を何人も噛ませたり、コインロッカーに置かせるよう指示して後で回収するケースもある」

ルフィたちとの「決定的な違い」

 首謀者からみればこのような“万全な対策”を取っているので、捕まらない自信を持って犯行を重ねられるわけだ。

 一方、警察が期待を寄せて注目しているのは犯行の雑さだ。一連の事件は計画性が乏しく強引さも目立つので、丁寧に捜査を続けていけば「穴」が見つかるはずだと考えているという。

「ルフィグループの場合、前日に実行犯らに下見させたり、在宅が確認されたら犯行を延期することもありましたが、今回のグループはそのような慎重さは全く見受けられません。深夜現場に着いたらとにかく1階の窓ガラスを割って侵入しろ、ですから。計画性のなさは被害額にも表れています。ルフィグループの場合、一撃数千万円という成果もありましたが、今回は数万円、数十万円程度の上がりしか得られていないことも多い」

 これだけ雑ならば例えば、シグナルを使うべきところをうっかり普通に電話してしまっていた、などのミスを起こしている可能性も考えられる。そういった隙をつけば事件解決の糸口が見つかるのではないかと考えられているのだ。

 それにしても不思議なのは、もし三鷹の事件がまたもや闇バイト犯だったならば、これまで実行犯が使い捨てにされてきたことが散々報道されていたのにもかかわらずなぜ応募してきたのかという点だ。

今日、明日にも事件を重ねる可能性がある

「今回のグループの特徴として、告知に『ホワイト案件』が強調されていた点がある。ほとんどの実行犯が強盗をするつもりなどないまま現場近くまでおびき出された。そして直前になって予め送らせられた個人情報で脅され、考える間もなく犯行に及んでいる。とはいえ、あまりに世情に疎すぎる点は否めません。警察庁は闇バイト応募者がニュースをみていない可能性もあるとしてXに啓発動画をアップするなどして注意喚起しているが、効果が上がっていないことに意気消沈しています」(同)

 三鷹の実行犯は31日になって一人が捕まったが、他のメンバーはまだ捕まっていない。これまでのケースでは実行犯は翌日も翌々日も、実行犯は捕まるまで指示役に言われるがまま犯行を重ねてきた。

「横浜市では強盗殺人、市川市では拉致監禁事件まで起きています。警察としては事件が起きれば、突き上げ捜査をストップさせて実行犯の確保に全力を注がねばなりません」(同)

 指示役が逮捕されない限り市民の安全は脅かされ続ける。警察の威信をかけた捜査に期待したい。

デイリー新潮編集部