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この数年でオフィスワーカーの働き方は大きく変化を遂げた。オフィスや自宅、サードプレイスなど、場所を選ばず仕事をするハイブリッドワークが定着したのだ。

ワークスタイルが変わればPCに求める機能も変わる。異なる場所で仕事をするチームをつなぐためのコラボレーション機能、オフィスの外でも安心して使えるセキュリティ、そしてもちろん、快適に業務を進めるための高いパフォーマンスも欠かせない。

そして今後は、AIがクラウドではなくPC端末で処理される時代が来るのが確実だ。AIの恩恵を受けてビジネスを加速させるためには、PC選びが鍵を握るといっても過言ではない。

では、どのような視点でPCをチョイスすればいいのだろうか。

インテルの佐近清志氏、日本HPの岡宣明氏を迎え、共同でAI特集を展開しているTech Insiderとギズモード・ジャパンから小林優多郎と金本太郎の2名が話を聞いた。

この数年で、仕事環境とPCに求めるものはどう変化したのか

佐近清志氏/インテル セールス&マーケティンググループ ビジネスクライアント・テクニカル・セールス・スペシャリスト、岡宣明氏/日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長、小林優多郎/Tech Insider編集チーフ、金本太郎/ギズモード・ジャパン 編集長代理

金本:まず、ここ数年の仕事環境の変化について感じていることからお伝えすると、このインタビューはオンラインで行っているわけですが、まさにこうしてリモートで取材できること自体が大きな変化だと思います。例えば誰かが海外出張中だから対談がセッティングできないみたいなことがない。確実に仕事の効率は上がり、幅も広がりましたよね。

小林:日本と海外でも状況は違いますよね。米国のビッグテックはオフィス出社に戻す動きがあります。一方、日本はコロナ禍でリモートワークが普及して、米国ほどの揺り戻しは起きていません。

金本:変化といえば、仕事でAIを活用する場面も増えました。AIについては2つのレイヤーがあって、まずはシンプルに機械学習ツールを使うパターン。スマートフォンの音声認識などはユーザーがもはやAIだと認識もしていないですよね。もう1つは生成AI。クラウドではなくエッジ(端末側)で処理されるAIアシスタントのような存在は、まさにここから普及していくタイミングだと思っています。

小林:鍵となるのはセキュリティです。生成AIにプロンプトを入力する際、どのデータを渡してよいのかが判断できない人も多い。となると、エッジで処理することで機密性の高いデータも生成AIに渡せるようにするという方向に進む可能性も高そうです。

金本:そうなるとPCにはかなりの性能が要求されることになります。私がノートPCに求めるのは、「オフィスにいるのと同じように仕事ができる」こと。海外ビッグテックがオフィスワークに回帰しているのは、結局オフィスが快適に仕事できるからというのもあると思います。ハイブリッドワークを続けるなら、オフィスと同じくらい仕事が捗るノートPCが必要になるはずです。

AI PCが起こしたパラダイムシフトとは

金本:PCがどう進化していくのかでいうと、ここはぜひインテルさんにお聞きしたいですね。やはり「インテル® Core™ Ultra プロセッサー」が起こしたパラダイムシフトは大きいと感じていますので。

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佐近:インテル® Core™ Ultra プロセッサーは過去40年間で最も大きなアーキテクチャの変化です。最大の特徴はCPUやGPUといった従来のプロセッサーに加えて、NPUという第三のプロセッサーが搭載されたこと。というのも、CPUは汎用性の高いユニットですが、AIの処理には性能が不足する場合があります。

一方でGPUは並列処理が可能でAIとの相性が良いのですが、ものすごくバッテリーを消費するデメリットがあります。AIをすべてクラウドで動かそうとすると、データセンターの消費電力も非常に高くなり地球環境にも悪影響が出るのです。

そこで搭載したのがNPU。CPUの3倍の速度でAIの処理ができ、消費電力はCPU(E-core)の半分で済みます。

金本:インテル® Core™ Ultra プロセッサーについては先日、シリーズ2を発表されましたよね。大きな進化が一気にきたなという印象を受けました。

佐近:インテル® Core™ Ultra プロセッサー シリーズ2(コードネーム:Lunar Lake)についてはアーキテクチャをさらに変えています。スペシャルモデルのようなものと捉えていただければ。そういう意味で前世代のシリーズ1(コードネーム:Meteor Lake)の直接的な後継は今後登場するArrow Lakeになります。

小林:Arrow Lakeはデスクトップ向けという認識でしたが、ノートPC向けのMeteor Lakeの後継になるのですか?

佐近:今後はArrow LakeもノートPCに搭載していく予定です。

AI時代のPC選びで押さえておくべきポイント

小林:なるほど。ではPCについてより深くお聞きしたいのですが、今後AI時代を迎えるにあたり、「PCメーカーとして重要だと感じている、開発のポイント」はどこでしょうか。

岡:日本HPとしての開発コンセプトは大きく3つあります。まず、コラボレーションです。コロナ禍前はノートPCのカメラやスピーカーは、それほどスペックを気にしていなかった人が多いと思います。しかしコロナ禍を経て、ビデオ会議が前提となったいまはそこがすごく重要になっている。ある意味、“社会人の嗜み”ですよね。ですからカメラやスピーカー、マイクの性能にはすごくこだわっています。

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金本:たしかにHPさんのPCはカメラが市場の平均より一回りいい印象があります。カメラを活かすアプリもあって、外付けカメラの必要性を感じないんですよね。

岡:次にセキュリティです。ノートPCを外で使う機会が増えたことに伴い、セキュリティを気にされるお客様はとても増えています。そこで我々としては、セキュリティに関する研究所を持つ唯一のPCメーカーとしての技術を存分に投入した「HP Wolf Security」を提供しています。

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最後にパフォーマンスです。最近の高性能プロセッサー搭載PCでパフォーマンスをフルに発揮すると、非常に高い発熱と消費電力になってしまいます。そこでAIを活用し、ユーザー行動を学習し、最適なパフォーマンスを出すことで発熱や消費電力を最低限に抑えるようなテクノロジーを搭載しています。

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小林:セキュリティについては、インテルさんもさまざまな取り組みをされていますよね。

佐近:そうですね。我々はチップセットをつくるハードウェアベンダーですが、そのなかでもいろいろなセキュリティサポートを行っています。

例えばチップの中にある各種センサーとAIのアクセラレータを使用したランサムウェアの検知が可能です。Microsoftが公開したデータによると、インテルのチップ上でMicrosoft Defenderを動かすことで、他社のチップよりもランサムウェア検知力が35%も高くなるという結果が出ているのです。

また、OSの下のレイヤーについてもきっちり守るために、Intel vPro® プラットフォームのインテル® ハードウェア・シールドなどいろいろな防御策を実装しています。ハードウェアレベルでAIによりランサムウェアを検知できるのは、チップセットメーカーでは我々だけです。

小林:セキュリティは、PCのパフォーマンスとも密接に関係しますよね。

佐近:はい。会社のPCだと定期的にウイルススキャンを走らせるわけですが、このスキャンのメモリ負荷が10%を越えるとPCが重くなったと感じます。

例えばMicrosoft Defenderだと11%から12%くらいの負荷がかかるのです。我々のチップセットの場合は、このウイルススキャンの負荷をGPUに肩代わりさせられるので、CPUの負荷も2%くらいまで下げられます。これはIT側もユーザー側にとっても大変嬉しいインテル独自の機能となります。

企業ユースにおける安心感

金本:Intel vPro® プラットフォームの特徴やメリットについても教えていただけますか。

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佐近:BIOSの下のレイヤーにある管理者領域を多重防御できる機能を、Intel vPro® プラットフォームでは提供しています。ですから、仮想領域を含む防御機能や物理メモリの暗号化、また乗っ取られ防止などで最上位の防御レベルを求めるのであれば、Intel vPro® プラットフォームとHP Wolf Securityの組み合わせをおすすめします。

小林:インテルさんで安心できるのは、レガシーなソフトや周辺機器にも対応していることですよね。アーキテクチャが進歩しても、プリンターを買い替えたり、ソフトが動かなくなったりする心配がありません。

佐近:ありがとうございます。Windowsベースのアプリケーションが動かないということは、我々のx86のアーキテクチャではほぼありませんから、そこは安心してお使いいただきたいですね。また、企業が製品を導入して最も苦労されるのは実はワイヤレスネットワークなのです。インテルはチップ部門のほかにネットワーク部門も持っていますから、製品の性能やチップとの互換性を含む安定性に自信がありますし、何かあった際にもお問い合わせいただければ迅速な対応が可能です。

金本:そこは重要ですよね。やはりネットワークこそがインフラですから。

メイド・イン・東京のメリットとサステナビリティへの貢献

小林:日本HPさんの特徴といえば、東京で生産されていることですよね。

金本:そこはギズモードとしても注目している点です。最近は日本製のプロダクトを紹介する記事も増やしています。

岡:PCはスマートフォンなどと違って、少量多品種な製品です。そうなると完全な自動化は難しく、人の手が必要になります。日本HPは東京の日野市で組み立てているので安心の品質をご提供できます。また、発注から5営業日で届くのもメリットです。海外だと2週間はかかりますからね。

小林:たしかに、企業にとって納期が短いことのメリットは大きいですね。

岡:さらに、海外からパーツをまとめて仕入れ、日野の工場で組み立てて出荷するので、個別の箱で送ってくるよりも容積を減らせるのもサステナビリティの観点でメリットが大きいです。

サステナビリティについては、当社はEPEATという米国の厳しい基準をクリアしてゴールド認証を取得しています。また、オーシャンバウンド・プラスチックを再利用する取り組みも行っています。こうした試みはかなりコストがかかるのですが、妥協はしません。

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小林:メーカーとしてそういった取り組みをされるのはすごく大事なことだし、インパクトもありますよね。ユーザー側としても、日本HPさんのようにサステナビリティに取り組んでいるメーカーのPCを買うことでサステナビリティに貢献できますから。

オフィスワークとハイブリッドワーク、それぞれ選ぶべきPCは?

金本:ここまでのいろいろなお話を踏まえた上で、あらためて企業はどんな視点でPCを選ぶべきなのかを考えてみたいですね。

佐近:私からはまず、「AI PC」に対する誤解を解きたいですね。お客様からよく聞くのが「AIは使わないからAI PCはいらないよ」という声。でも、そうではないのです。AI PCはAIのためだけのPCではありません。

そもそもインテル® Core™ Ultra プロセッサーは非常に高性能で、AIとは関係なくPCのパフォーマンスを大きく高められます。ですから、皆さんがお使いの業務アプリケーションも当然高速化されますし、バッテリーの消費電力も下がって駆動時間が長くなります。ベースの性能が向上していますので、ぜひ業務の快適化のためにもAI PCを選んでいただきたいですね。

岡:日本HPはビジネスノートPCのラインアップとしてProBookシリーズ、EliteBookシリーズ、Dragonflyシリーズなどを展開しています。特におすすめのモデルとしてご紹介したいのは、HP ProBook 460 G11とHP EliteBook 630 G11です。

「HP ProBook 460 G11」
Image: 日本HP

まずHP ProBook 460 G11は16インチの大画面でフルサイズキーボードを備えており、社内で持ち運んで使うのに最適です。セキュリティについても妥協のない製品となっています。

「HP EliteBook 630 G11」
Image: 日本HP

一方でHP EliteBook 630 G11は13.3インチとコンパクトで、ハイブリッドワーク向けの製品です。週の半分くらいは外にノートPCを持ち出すような業務に向いています。特にコラボレーション機能に力を入れており、どこにいても社内にいるような環境で仕事することが可能です。

小林:AIというと、プロンプトを入れて何かしてもらうというイメージを持っている人は多いと思いますが、それだけでなくてPCのセキュリティやパフォーマンスを高めるような部分にもAIが使われています。そう考えると、AIは切っても切り離せないわけで、そこをきちんとサポートしてくれるデバイスが必要なんだなと感じました。

金本:ギズモードって基本的にテクノロジー肯定派のメディアなんです。テクノロジーが進めば進むほど、人間はハッピーになれるというスタンスで日々ニュースを届けています。一方で、そうしたテクノロジーによる幸せを享受したいのであれば、そこはお金をかける必要があると思いますね。

テクノロジーによる恩恵って、基本的にはまずプロダクトの形で現れます。だから、AI PCを買うことはより良い未来を買っているといってもいいんじゃないでしょうか。

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