１００年前のＳＦ戯曲「ロボット」上演、ＡＩ社会を予見？…ノゾエ征爾「現実味」水田航生「先見の明怖すぎ」
１９２０年にチェコの作家カレル・チャペックが発表し、ＡＩ（人工知能）社会の未来を予見したようなＳＦ戯曲「ロボット」が１１月１６日から１２月１日まで、東京・三軒茶屋のシアタートラムで上演される。
ロボットに征服された世界の最後の人類を演じる水田航生（こうき）、潤色・演出のノゾエ征爾に思いを聞いた。（編集委員 祐成秀樹）
チャペックは、労働を意味するチェコ語の「ロボタ」から「ロボット」を造語し、今作で初めて使ったと言われている。戯曲に登場するロボットの見かけは人間と同じで、知性もある。ロボット製造工場のある孤島を訪れた人権擁護連盟のヘレナ（朝夏まなと）は、クレバーな社長秘書ロボットを人間と間違えてしまう。
それだけに、ノゾエは戯曲を初めて読んだ時に衝撃を受けたという。「金属的なロボットをイメージしていたら、覆された。科学の進化した先にある課題と向き合う人間の姿が描かれている。古臭さよりも現実味を感じました」
ロボットの進化と社会の変化が劇的に描かれ、文明社会を批判する。ヘレナの来訪から１０年後、ロボットのおかげで人間は労働から解放されたが、享楽にふけり、子どもを作らなくなっていた。一方、ロボットは命令するだけの人間を抹殺しようと反乱を起こす。
「チャペックの先見の明は怖すぎる。僕らが想像できるのはＡＩが人間の仕事を奪うことぐらいなのに」と語る水田が演じるのは、工場の建設部長アルキスト。ロボットが普及した後も現場で汗を流す男で、「人情味と温かみがある。ずっと“ガラケー”を持っている、古き良きものを大切にするおじさんみたいな人では」。
その行動ゆえに、虐殺から逃れてロボットが支配する世界で人類最後の一人として生きることになる。「稽古で生身の皆さんがロボットとして現れた時、すごく怖かった。リアルに状況を考えた上でロボットからかけられる言葉によって、アルキストがどう転がっていくか。毎回、トライアルアンドエラーをしています」
水田は「ロミオ＆ジュリエット」「マーキュリー・ファー」などミュージカル、せりふ劇の双方で力を発揮してきた。「クリエイトに対して健全。余計な邪気がなく、まっすぐにとらえようとする」と水田を評するノゾエは、劇団「はえぎわ」主宰で独特の奇想天外な世界を描いてきた。
そのノゾエについて水田は「愛のある方。寄り添っていただいています。役者を信じて、言われたことだけをやるのが役者でないとも感じさせてくださいます」と称賛する。
ノゾエが今作の演出でこだわるのはスピード感だ。「休憩を入れず２時間で一気に見てほしい。進歩が根底にあるテーマ。（作中で描かれる）進歩の速さと話がトントントンと進んでいく感じがリンクすれば面白いのでは」。工場の社長役は渡辺いっけい。（電）０３・５４３２・１５１５。
