(※写真はイメージです/PIXTA)

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留学、と聞くと「英語喋れないのでハードルが高い」と考える人が多いかもしれません。しかし実際に重要なことは英語が流暢に喋れるかどうかではないようで……。本記事では留学における英語力について、尾粼由博氏の著書『アフターコロナの留学』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集して解説します。

留学に英語力は必要か?

「英語力がないから留学できない」というセリフはよく聞きます。でも本当にそうでしょうか。

皆さんの身近なところに海外からの留学生はいませんか。その留学生全員が流ちょうな日本語を話せる状態で日本にやってきているでしょうか。実際には英語しか話せない、あるいは母国語しか話せない、という方もたくさんいるはずです。もしかすると、英語しか話せない留学生が同じ研究室にいて、一生懸命意思疎通しようとしているので思わず手伝ってしまいたくなる、という経験のある方も読者の中にはいらっしゃるかもしれませんね。

人間不思議なもので、自分の得意な言葉、特に母国語を一生懸命しゃべろうとする外国人には親切にしたくなる性質があるように思います。これを逆から見てみると、どうなるでしょうか。

皆さんがレベルに差はあっても、英語で一生懸命しゃべっているとき、英語を母国語とする人はどう反応すると思いますか。全員が全員ではないにせよ、一定の割合で一生懸命助けようとしてくれる人が登場するのは想像に難くありません。

実際に英語に不安がありながら海外に渡航した経験をお持ちの方、留学にチャレンジした方のお話を伺っていると、「思っていたよりも語学力はなんとかなりました!」という声が大多数です。むしろ、留学先で語学には苦労したけど、あの苦労があったからこそ今の自分がある、という教訓を寄せてくださった方も大勢いました。

皆さんが思っている以上に日常的な意思疎通は何とかなるものです。テンポよくおしゃべりできないとか、周囲の友人が何を話しているのかわからない、ジョークの意味が分からない、というのは普段英語やドイツ語、ウルドゥー語を使って仕事をしている私でもよくあることです。

母国語として英語に慣れ親しんでいる人たち

私が国際協力の仕事をしていた時、いつも思っていたことがあります。それは英語が一番下手なのは、国連機関で働くイギリス人なのではないか、ということ。

実際には、私が英語を聞き取れていないだけなのですが、母国語として英語に慣れ親しんでいる人は往々にして、ノンネイティブとしゃべっている時でも普段と同じように周りが分かってくれるものとして、しゃべり続ける傾向があるように感じていました。その分、途中から、ぼそぼそとつぶやくようなしゃべり方になり、こちらが聞き返さないと聞き取れない、ということを何度も経験しています。

反対に英語を母国語としないインドや香港・シンガポール出身の方のほうが声も大きく、お互い「まぁ、伝わらなかったら、言い方変えて繰り返せばいいや」くらいに思ってしゃべることが多かったですね。その分、イギリス人の方としゃべるよりも、英語で話す時の効率は良かったように思います。

この事例からもわかる通り、すらすらと途切れなくしゃべることよりも、あるいは豊富な語彙力を備えるよりも、あなたが「今、何を言いたいのか」「何を伝えたいのか」を日本語でもいいので考えて、その時点でできる限りの英語で伝えるようにしてみましょう。

コミュニケーションをとりたい、という意思があれば必ず理解しようとしてくれる人、助けてあげようとする人は登場します。

英語のネイティブスピーカーは英語話者の25%

もう一つお伝えしたいのは、全世界で英語を話す人口約15億人のうち英語が母国語であるネイティブスピーカー人口は約3.8億人しかいないという事実。すなわち、英語をしゃべっている人の75%は、皆さんと同じように「外国語」として英語をしゃべっていることを意味します。

こうした人はネイティブスピーカーと比して、やはり、どこかたどたどしい英語になったり、英単語の細かい使い分けができなかったり、という状況なのです。皆さんから見て大きな声で堂々と英語をしゃべっているように見えても、その実、皆さんとそんなに変わらないということもあるのです。

日常生活の中で何度も何度もトライアル・アンド・エラーを繰り返せる、相手から、「そういう時は、こうやって言うといいよ」と教えてもらえる。そして、「あはは、あなたの言いたい単語は〇〇だね!」といったフィードバックがもらえるということを考えれば、海外で英語を使いながら学んだほうが圧倒的に英語の上達は早いです。

私は「英語を学ぶ」というよりも「英語で学ぶこと」をおススメします。

尾粼 由博

海外安全管理本部/海外安全.jp代表