『HUNTER×HUNTER NEN×IMPACT』PV公開のビジュアル

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※本稿は『HUNTER×HUNTER』最終話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。

 10月7日発売号より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で最新話の掲載が始まった『HUNTER×HUNTER』だが、その展開はまさに激動。物語を大きく揺るがすような情報が次々明かされている状況だ。とりわけビヨンド=ネテロに関しては、はてしなく壮大な計画の全貌が露わになりつつある。

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  ビヨンドといえばハンター協会の元会長アイザック=ネテロの息子とされる人物にして、カキン帝国の暗黒大陸進出に関わる最重要人物。B・W号を舞台とした王位継承編にはほぼ絡んでいなかったものの、第401話にて突如その名前が浮上し、「実は数十年前からカキン帝国の王位争いに関わっていた」という疑惑が描かれた。

  同エピソードでは、クラピカの念能力講習会に参加しているロンギという女性が、自分はビヨンドの娘だと告白。ビヨンドは30年ほど前からカキンの兵士を偽装結婚させ、自分と妻の間にできた子どもを王立軍学校に入れて王子の側近になるよう仕組んできたという。

  さらにロンギは、同じ境遇の子どもたちが複数存在している上、それぞれの肉体に“念の爆弾”が仕掛けられていることも暴露した。この話を信じるなら、ビヨンドは王位継承戦を思惑通りに操るために、数十年単位で暗躍してきたことになる。

  そしてこの話を踏まえると、ビヨンドの計画がさらに壮大なものである可能性も出てくる。すなわち、「キメラアント編」の裏で糸を引いていたのがビヨンドだったのではないか……と考えられるのだ。

 「キメラアント編」の騒動は、ヨルビアン大陸バルサ諸島の南端、NGL自治国にキメラアントの女王が流れ着いたことから始まる。その腕の切れ端がサザンピースに持ち込まれ、カイトやゴン、キルアが調査に乗り出していくという流れだった。

  だが、実はカイトはゴンたちと合流した際、カキン帝国の依頼によって生物調査を行なっている最中だと明かしていた。そしてその後、カキン関係者とみられる人物からキメラアントの一部分が漂着していることを知らされ、サザンピースに向かったという形だ。穿った見方をすれば、“誘導された”という風にも捉えられるだろう。

  しかもキメラアントが驚異的な成長を遂げたのは、女王の漂着した場所が外界から閉ざされたNGL自治国だったことが大きな原因。結果としてハンター協会はネテロ会長の死という手痛い被害を受けることになったが、これらすべてが仕組まれていたとしたらどうだろうか。すなわちカキン帝国と結託したビヨンドが、キメラアントによる一連の騒動を引き起こしたという可能性だ。

■すべては暗黒大陸のため?  ビヨンドの目的は……

  なぜビヨンドが「キメラアント編」に関与していたと考えられるのか。それは父であるネテロ会長との関係が関わってくる。

  というのもビヨンドはかつて暗黒大陸を訪れて生還した過去があり、その後も再調査に向かおうとしていた。しかし父であるネテロ会長から“自分が死ぬまでは許可しない”という枷を与えられたため、雌伏の時を過ごしていたという。そこでネテロ会長を始末して枷を外すため、キメラアントの騒動を引き起こしたのかもしれない。

  ほかにもビヨンドの壮大な計画が垣間見えるような描写は多い。たとえば単行本32巻では、カキン帝国で30年ほど前に「歴史上最も静かな革命」と呼ばれる真林館事件という出来事が起こり、帝国社会主義から議会民主主義へと政治体制が変わったことが明かされていた。このとき暗黒大陸への不可侵条約を更新していなかったことが、後にカキン帝国が暗黒大陸挑戦を許可された理由の1つとなっている。

  そしてその一方、ビヨンドがカキン軍に自分の子どもを潜り込ませる計画を始動させたのも、ちょうど30年前ごろだ。この符号は単なる偶然とは考えにくい気もする。もし真林館事件にもビヨンドが関与していたとすれば、その計画のスケールの大きさは想像をはるかに超えるものだといえそうだ。

  また、「キメラアント編」の序盤では、キメラアントの女王が自身の内に“人間の血”が薄く流れているのではないかと内省する場面があった。つまり女王の先祖が人間と交配している可能性があるのだが、元々キメラアントは暗黒大陸からやってきたものとされている。暗黒大陸の調査団だった過去があるビヨンドなら、そのあたりの事情を知っている可能性があるかもしれない。

  一体どこまでがビヨンドの計画の範疇なのか。そしてカキン帝国の王位継承戦に介入することで、何を狙っているのか。ますます謎は深まるばかりだが、これこそ『HUNTER×HUNTER』の真骨頂と言えるだろう。

(文=キットゥン希美)