ロシアの無人機による攻撃で炎が立ち上るウクライナ南部ヘルソン市=7月26日/Reuters

キーウ(CNN)ウクライナ南部ヘルソン市では、市民が大雨を期待し始めている。大雨はロシアのドローン(無人機)が上空を飛行できなくなる唯一の気象条件だからだという。

地元当局によると、同市の一般住民に対するドローン攻撃は秋に入ってから急増しており、住民はロシアのドローンが歩行者や車、バス、さらには救急車まで攻撃したと報告している。

負傷の報告は、ドローンが民間人を狙っていることを示唆しており、高齢者や子どもが攻撃される場合もある。

地元軍当局によると、ヘルソン中心部の住宅地では先週、車が攻撃され、乗っていた76歳の女性が重傷を負った。同市郊外のアントニフカでは今月、ドローンが公共バスに爆発物を投下し、69歳の女性が死亡したという。

当局によると、9月初め以降、少なくとも14人がドローンによって殺害され、さらに222人の成人と3人の子どもが負傷した。

地元住民はアントニフカ郊外へ続く道を「死の道」と呼んでいる。近くのロシア軍の射程圏内にあり、かつては戦闘の中心地だったからだ。

ヘルソンは2022年3月初旬にロシア占領下におかれた最初の主要都市で、8カ月後に解放された。昨年6月にはロシアが支配下におくドニプロ川上流約58キロのカホウカ・ダムが破壊され、市内の一部が浸水した。現在も占領の脅威は川の対岸に迫っており、ロシア軍の陣地は文字通り視界に入っている。

アントニフカ郊外の工場で働き、人道支援ボランティアをしているタチアナ・ヤコブレワさんは占領中も村にとどまり、開戦以来、爆弾の破片などで何度も負傷している。直近では民間人への人道支援を手伝っていた避難所がドローンに襲われた。

ヤコブレワさんはCNNに対し、「ドローンは私たちの上空を長時間ホバリングしていた。そしてドアの横に手りゅう弾を投下した」と語った。

ヘルソン地域で活動しているウクライナ軍の2人の情報筋は、ロシアによるドローン攻撃の軍事的根拠について何も語らず、「地元住民を恐怖に陥れるためだけだ」と述べた。

ヘルソン地域の軍当局によると、ロシアは9月、同地域を2700機以上のドローンで攻撃。今月10月17日までにすでに1500機を展開した。

対処は困難

ドローンはその攻撃の頻度と機体の小ささでウクライナ軍による阻止を困難にしている。また、ドローンは高速で移動するため、標的とされた民間人が逃げるのはほぼ不可能だ。

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、今年7月中旬ごろにヘルソン地域へのドローン攻撃が著しく増加したことを発見した。これは7月初めにウクライナ軍がロシア占領下にあるドニプロ川東岸のクリンキー村の陣地から撤退し始めた時期と一致する。

ロシア軍は標的をクリンキーのウクライナ軍からヘルソンのドニプロ川西岸の広い地域へ切り替えた可能性があるという。

アナリストらは、ロシア軍が多数のドローンを配備している理由はいくつかあるもののその一つは、攻撃を継続していることを示し、他の戦線に移動させられるのを避けるためだと指摘する。また、新しいドローンを試しているとの見方も示す。

「私たちを狙う狩猟隊のようだ」

民間インフラや直接戦闘に参加していない民間人を故意に攻撃することは、国際法の下では戦争犯罪とみなされるが、ロシアは一貫してこれを否定している。

ヘルソン市街地では21日、ロシアのドローンが救急車を攻撃し、救急隊員2人が負傷した。救急車がドローン攻撃を受けたのはここ数週間で2度目だった。同地域の軍当局によると、49歳の女性と60歳の救急車運転手が重傷を負った。

アントニフカ在住のナタリアさん(46)は「ここ数カ月、家から出られていない」と話す。ナタリアさんもヤコブレワさんと同じ人道支援シェルターへの攻撃で負傷した。

「私たちはここの占領を生き延びた。洪水も生き延びた。それでもこのドローン攻撃は耐えられない」「(ドローン攻撃は)私たちを狙う狩猟隊のようだ」(ナタリアさん)