『ザ・バットマン』スピンオフ主演コリン・ファレルのインタビューが到着!

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映画『THE BATMAN−ザ・バットマン−』のスピンオフドラマ『THE PENGUIN−ザ・ペンギン−』で主演を務めるコリン・ファレルのインタビューが到着!

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『THE PENGUIN−ザ・ペンギン−』コリン・ファレル インタビュー

【オズ・コブ(通称“ペンギン”)役/製作総指揮】

本作は、2022年の映画『THE BATMAN−ザ・バットマン−』に登場したヴィラン、ペンギンことオズワルド・“オズ”・コブルポットを主人公にしたスピンオフドラマで、映画に続きコリンがペンギン役で続投する。

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人間心理の細部を描く力強い物語

スピンオフシリーズと映画の関係
本シリーズ全体で優先したことの一つは、バットマンの映画を知らない人が見ても物語が成立するようにすることでした。バットマンの作品世界に対する知識がなかろうと本シリーズ単体で物語に入り込めるように、誰もが心に抱えてそれぞれに葛藤している幼少期のトラウマ、野心、欲望、悲しみ、喪失感など、人間心理の細部にまで十分に注意を払い、力強い物語を描きました。

オズになるにあたって
マイク・マリーノが『THE BATMAN−ザ・バットマン−』で作り上げた“ペンギン”の特殊メイクのすばらしさには感動したし、圧倒されました。僕はここまでの特殊メイクを経験したことがなかったんです。これまでにあちこち切り傷を付けたり、指の関節を腫らしたり、小さなゼラチン片を付けたりしたことはあったけど、全身をくまなく特殊メイクで覆われたことはなかったので。

マイク・マリーノはコミックの愛好者であり、バージェス・メレディスやダニー・デヴィートなどが演じた“ペンギン”のファンとして本作の“ペンギン”をデザインしました。マット・リーヴスが監督として『THE BATMAN−ザ・バットマン−』に着手しようとしていた頃、マイク・マリーノは“ペンギン”ことオズ・コブというキャラクターについて、マットと話し合いました。オズがどういう人物で、どういった心理状態で、どんな野心を抱いているのかについてをです。それからマイクは僕の顔立ちをベースに“ペンギン”の胸像作りにとりかかったんです。それが最終的にどんなものになるのか、僕にはまったく想像がつきませんでした。

『THE BATMAN−ザ・バットマン−』の撮影に入る数ヵ月前、ロンドンのオフィスでマット・リーヴスに「マリーノと話したか?彼のデザインを見たか?君がどんな姿になるかを見たか?」と言われたんです。この言葉は決して忘れられないです。「君がどんな姿になるかを見たか?」という言葉にはとても熱がこもっていました。それからマットはパソコンを開いて「見てみろ!」と言ったんです。僕は画面にある3Dの胸像写真を見て、一瞬フリーズした後で「ちょっと待った、僕がこの姿になるのか?」と言いました。マットに「ちょっと時間はかかるがマリーノはできると考えてる。君はどう思う?」と聞かれて「とんでもなくすばらしいよ」と答えました。

そのオズの顔には人としての歴史がありました。傷痕、あばた、10代の頃のニキビの名残があり、そして冷酷さと悲劇の気配もありました。僕はただ、自分が見ているものに圧倒されてしまいました。その頃僕は『THE BATMAN−ザ・バットマン−』の脚本を読み、6〜7つほどのシーンについて悩んでいました。マットはすばらしい脚本家だし、脚本自体も本当にすごく良かったんですが、オズというキャラクターやこの世界にどう入り込むべきかについて、まだインスピレーションが湧いていなかったんです。でもマリーノが作り上げたオズの胸像が明確な言葉で僕に語りかけてきて、 想像もしていなかった可能性の世界が広がるのを感じました。

オズの姿になって鏡を見た時、そこに僕はいませんでした。目は確かに僕だったけど、それ以外の全てが完全に違っていました。まったくの別人になっていました。口ヒゲを生やしたり、眼帯をしたりして鏡を見ても、そこに映るのは自分だと分かります。でもオズの姿になった時、僕はどこにもいなかったんです。

参考にしたのは『スカーフェイス』

本シリーズへの参加
『THE BATMAN−ザ・バットマン−』の撮影が始まって2〜3週間経った頃、僕は(製作総指揮の)ディラン(・クラーク)にメールで「HBOでドラマを作ろう」と言いました。ディランたちがハードボイルドな作品を作っていることを知っていましたから。『THE BATMAN−ザ・バットマン−』で僕が参考にしたのは、裏社会をのし上がっていく男を描いた映画『スカーフェイス』。でも結局、オズが登場するシーンは6シーンしかなくて、仕方がないことだけどもったいないと感じました。このキャラクターでもっと多くのことができるはずだと思ったんです。『THE BATMAN−ザ・バットマン−』が完成して、僕はディランとのやり取りを忘れてたんですが、その後、ディランから電話が来ました。

ショーランナー/製作総指揮ローレン・ルフランの印象
ローレンは本作の脚本の中で、息子と母親の関係性と、母親の過去に起きた痛ましい出来事を描きました。僕が『イニシェリン島の精霊』の撮影でアイルランド西部にいた時、ローレン、マット、ディランの三人と電話会議をしたんですが、そこでローレンは8時間かけて脚本についてプレゼンしてくれました。それを聞いて、力強くて、悲痛で、人間的で、すばらしい物語だと思ったんだ。 非現実的ではなく、典型的なジャンル映画ともかけ離れていて、とても人間的な作品だと感じました。すごくワクワクしました。

オズ役を演じる意味
僕にとってこの役は思いがけない贈り物でした。マイクが作り上げたオズというすばらしい人形に命を吹き込む使命を与えられたように感じました。自分が演じたキャラクターに対して所有権を感じないのは今回が初めてだけど、それはまったく嫌なことじゃない。マイクが与えてくれたものに僕が入り込んだという感じなんです。

1日14時間は現場に滞在

全身特殊メイクでの演技
信じられないほど解放感があります。パワーを感じるんです。守られていると感じます。嫌なことが あっても誰にもそれを気づかれない。撮影中は基本的にずっと特殊メイクという仮面をかぶっています。この仮面の後ろに完全に隠れることができなかったら、傷つきやすく、くたびれた、利己主義者のサイコパスになりきることは難しかったと思います。とても解放された気分だった。

エピソードが進みオズの心理が深掘りされるにつれて、オズを演じることはどんどんつらくなっていきます。権力の階段を昇り詰めるというよりも人間心理の毒にまみれて堕ちていくように感じられるから。そこから逃れられなかったので、最後には振り切って演じました。

オズになるまでの流れ
1日14時間は現場にいました。朝は特殊メイクに3時間かかります。メイクのチームが大好きでした。専用のトラックがあって、そこで音楽をかけて笑い合う。僕はそこで脚本を読んだり、少し昼寝をしたりもしました。メイクチームにはすばらしいアーティストたちがそろっていました。僕は毎朝髭を剃ります。それから顔を清潔にして下地となるシールを貼り、そこに接着剤で特殊メイクのピースを装着していきます。全部で7つか8つのピースに分かれているんです。頭には毛髪のないキャップを装着して、その上からウィッグをかぶり、ボディースーツを着る。それからスプレーガンで顔の様々な特徴、シミ、あばた、傷痕などを吹き付けていきます。

ボディースーツと特殊メイクを装着しているとものすごく暑いから冷却用のテントが用意されていました。できるだけメイクをベストの状態で維持しなければならないからです。合計で300〜500時間は冷却テントの中でひたすら空中を見つめていた気がします。「カット」と言われるたびに冷却テントに駆け込んで、座りながらぼーっとしていました。

日によっては12時間も経つと、表面に小さな気泡が浮いてくることがあって、メイクチームがそれに対処します。気泡に針を刺して空気を抜き、滑らかにするんです。彼らは皆優れたアーティストで、とても実体感のある現場でした。CGIやVFXやAIが主流の世界で、全てが手作業なんです。僕が20分ほど動き回ると、ちょっとした補修作業をしなければならないこともありましたが、メイクには並外れた耐久性がありました。

『THE BATMAN−ザ・バットマン−』で初めてメイクテストをした時、メイクを施されてから更衣室で自分の姿を見て、表情の変化がメイクにどう影響するのかを確認しながら、どういうふうに顔や体を動かすのかを試してみました。その時、メイクなしでまったく同じ演技をしたら、わざとらしくて、大げさで、恐ろしさのない印象になってしまうことに気づきました。でも特殊メイクが施された姿で演技すると、オズが世界に対して抱く悲劇的な怒りがいい具合に混ざり合って、うまくいくように思えました。表情がとても自然に動いて、まるで魔法のようでした。

ロバート・デ・ニーロなどを意識した

演技へのインスピレーション
これまでに様々な作品で演じられてきたギャングの姿を意識したことは間違いないです。意図して『ザ・ソプラノズ』や『アンタッチャブル』を参考にしたわけじゃないけど、ロバート・デ・ニーロやジェームズ・ガンドルフィーニなど、先人たちの演技が確実に頭の中にありました。だから見る人にはその片鱗が伝わると思うし、そのことに対して抵抗はないです。

“オズの声”を見つけること
方言指導はジェシカ・ドレイクで、彼女とはこれまでに8〜9回ほど仕事をしたことがありました。今回は特にニューヨーク訛りを意識しました。まず声の高さをどれくらいにするかを考えて、少し低めにすることに決めたんです。そこからジェシカと僕は2ヵ月間、毎日顔を合わせて、様々なアクセントを試しながら役柄にカチッとハマるように感じられるところまで持っていきました。ルックス、動き、体つき、そして声の全てが正しい場所に落ち着いたと思います。

オズの歩き方についてオズの足を引きずるような動きは、時々いつもより顕著になります。一日の終わりには足が痛むでしょう。彼がベッドに座って靴下を脱ぐシーンがあるんですが、そこで僕らはオズが何を背負い、何と 闘って生きてきたのかを目の当たりにします。足はひどく痛みますが、彼はその痛みに慣れているから、右足が地面に着くたびに顔をしかめたりはしない。でも痛いものは痛く、寒いと痛みがさらにひどくなる。長時間立ちっぱなしでいた日は、夜になると余計に痛みが増す。

オズの動き方を考えていた時、こういったことを頭に思い浮かべました。足を引きずるのは、そう動けと言われたからじゃなく僕自身が考えたことです。足の装具も僕が思いつきました。オズは子供の頃に小児マヒにかかり、治療を受けるお金がなかったために右足が少し短くなって曲がってしまったと僕は想像していたんですが、実際は生まれつき右足が少し変形していて不自由になったそうです。

共演者たちの印象

レンジー・フェリズについて
レンジーは愛嬌があります。本作で僕と一緒のシーンをやらなければならないのは、ありがたくないことだっただろうと思います。でもすごく不思議なんだけど、レンジーはすぐに僕に慣れてくれて、気安く仕事ができたんです。僕らはお互いのキャラクターについて楽しく話し合いました。レンジーは高潔で、知的な役者であり、勤勉で規律正しく、情熱的で、自分の仕事を愛しています。彼はビクターというキャラクターに命を吹き込み、キャラクターの核である無邪気さと善良さを見失わずに、すばらしい仕事をしたと思います。彼の演技には驚かされました。

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クリスティン・ミリオティについて
クリスティンは権力争いに足を踏み入れるソフィアという新しいキャラクターを見事に確立して演じきりました。それはある種のオペラのようで、全てにおいて気高い存在感がありました。 僕らはお互い、本作に参加できたことが夢みたいだと言い合っていました。「半年間、このキャラクターを演じて、バットマンの世界の一部になることができるなんてありえないし信じられない」ってね。

クリスティンはティム・バートンの映画を見て育ちました。僕はアダム・ウェストが演じるバットマンとバージェス・メレディスが演じるペンギンを見て育ちました。それに僕にとってティム・バートンが描いたバットマンは、クリストファー・ノーランが描いたバットマンよりもずっと前から重要だったんです。もちろんノーランのバットマンもすばらしいけどね。だから僕らは、この壮大な世界のメンバーとなり、その歴史の一部になれたことをとても光栄に思っています。アーカムで初めて会ったときから最後まで、クリスティンの役作りは見事でした。ある種の離れ業です。彼女はすばらしい仕事をしました。

キャラクターとの距離感について
僕は常にキャラクターに入り込むタイプではなく、その日撮影しているシーンだけにエネルギーを注ぐタイプです。でも今回は着ぐるみ状態だったから、いつもよちよちよと歩いていました。現場では普段よりかなり役柄になりきって話していました。現場ではスタッフの何人かに「いつか会えたらいいね」と言われたんです。僕にはその意味がよく分かりました。というのも、特殊メイクがあるから僕が現場入りするのは他のスタッフが集合する3時間前だったし、現場から帰れるのはみんなの仕事が終わった1時間後です。だから素の姿でスタッフに会うことがなくて変な感じでした。寒いトレーラーで退屈している時は、(オズとして)友達や子供たちにメッセージを送ったりしていました。「元気?オズだよ。今日はゴッサムにいる」ってね。楽しかったです。

他のバットマン作品との違い

今回、“ペンギン”は生まれ変わりました。“ペンギン”というキャラクターは、非常に深みがあり、典型的な人間らしさを備えた存在として、これまで繰り返し描かれてきました。だから今回の“ペンギン”はこれまでの再解釈であり、再創造でもあります。そして舞台となるゴッサムも、これまでのどのゴッサムとも違っています。映画で描かれたゴッサムよりも汚らしい。オズはファルコーネやブルース・ウェインよりも下層の世界で生きています。だからこれまでのゴッサムとは違う側面を見ることができます。ビジュアル的にもまったく違っていて独立した世界観です。8時間という限られた時間の中で、視聴者を魅了して、バットマン・シリーズの一作品として認めてもらえることを願っています。

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