投開票日があと5日後に迫った衆議院選挙。全国からも大きな注目が集まる被災地・能登を選挙区とする「石川3区」です。

石川3区では

▼自民党の前職 西田昭二候補(55)

▼共産党の新人 南章治候補(69)

▼立憲民主党の前職 近藤和也候補(50) の3人が立候補しています。

与野党の前職2人と共産党の新人、あわせて3人が1つの議席を奪い合う熾烈な争いを繰り広げています。

“選挙どころではない”

被災地・能登でたびたび聞かれる言葉です。地震と豪雨の二重災害に見舞われた能登の復興・再生は県や市町だけで成し遂げることはできず、国に課された至上命題でもあります。今、能登に生きる人たちの声を国に届ける責務を誰に託すべきなのでしょうか。

西田候補「この人生をかけて故郷のために取り組んでまいりたい」

西田候補「この緊急事態、能登半島に集中して(予備費で)予算を執行するのが一番スピーディな形。この人生をかけて故郷のために取り組んでまいりたい」

こう訴えるのは自民党の前職、西田昭二候補。元日の地震で孤立集落の1つとなった輪島市・南志見(なじみ)地区の仮設住宅で街頭演説を行いました。厳しい口調で惨状を訴える被災者の声にも耳を傾けます。

住民「『(大変なのは)みんな一緒』なんて言えるかいや」

西田候補「(被害が)酷いところは酷いです。それをしっかり支えていきますので」

住民「もうちょっと一生懸命、みんなを可愛がってほしい」

西田候補「もう地震の時からそう、厳しい声は当然なんです。どこにもぶつけることができない気持ち、それも含めて私共政治家は受け止めなければならないと思っています」

午後は、地震と豪雨で甚大な被害を受けた輪島市町野町(まちのまち)へ。駆けつけた西田候補と抱擁し、涙を流す被災者も。

西田候補「知人の顔を見た時に私も涙が零れてしまいましたけど、よっぽどかわってあげたいなと」

自らも目に涙を浮かべながら、岸田派として能登の復興へ邁進してきた実績を有権者に訴えかけます。

西田候補「なかなか地元に戻れないもどかしさはありました。しかしながら岸田総理も『やることは全てやる』と。皆さん方の困りごとをしっかりと国政に訴える」

能登の声を国に届けるために。被災者が抱える怒りや悲しみ、それらを一身に背負って小選挙区での議席死守を誓います。

南候補「金権まみれの政治をいつまで続けるのか問われている」

南候補「裏金問題は特定議員個人のスキャンダルではありません、長年にわたる組織的犯罪です。金権まみれの政治をいつまで続けるのか問われている」

10月19日、穴水町で街頭演説を行ったのは共産党の新人、南章治候補。声を聞いて外に出てきた支援者に駆け寄り、国の政策について意見を交わします。

住人「返還の話は知らんかった」

南候補「千島はもともと全部日本の領土で、樺太の条約で…」「知らんかったので共産党の動画見ていたんです」

南候補「頑張りますのでよろしくお願いします」

仮設住宅での演説は時間を短くしたりマイクのボリュームを下げたりする配慮。特に話し方には注意しているといいます。

南候補「一番気をつけているのは喋り方、とにかくアジテーション的な言い方はしない」

能登豪雨が発生した9月21日、輪島市内を車で移動していた南候補は土砂崩れにより立往生。およそ11時間にわたって車内に取り残されました。

南候補「恐怖で何とか山まで逃げたら今度は土砂崩れ、もうあの気持ちは何とも言えない本当に恐ろしい災害ですね」「8兆円なんか軍事費出している場合ではないんですよ。(復興には)兆の単位のお金がかかるんだから、それなりに構えてやらないと。今の災害は小手先ではダメ」

複合災害の恐怖をその身を持って体感した南候補、被災者目線に立った訴えで共産党の支持拡大を図ります。

近藤候補「暗い気持ちにさせちゃいけない」

近藤候補「東日本大震災の時は災害公営住宅の家賃はさらに半分でしていました。そのようにしてくださいとお願いしました。今私が国会に戻って、いの一番にやらないといけないことは石破総理にそのことを確認することです」

20日、内灘町の仮設住宅で訴えたのは立憲民主党の前職、近藤和也候補。今回の選挙戦、名前の入ったタスキをかけずに戦い抜くと決めました。被災者の心情への配慮、そして被災地・能登の窮状を全国に発信したいという思いからです。

近藤候補「全国の皆様にも能登を何とか助けてもらいたいと。選挙どころじゃないけど選挙になってしまっているんだという、この苦しい状況を皆さまにわかってもらいたい」

元日の地震による液状化の被害が色濃く残る内灘町。

近藤候補「どうもありがとうございます、住み心地はどうですか」

高齢女性「いいわいね、珠洲からきた。頑張ってください。何とか居れるようにお願いします」

復興の最中で衆議院選挙に踏み切った与党に対し、憤りを露わにしていた近藤候補。しかし、被災者からの指摘を受け選挙戦では笑顔を意識しているといいます。

近藤候補「私が厳しそうな悲しそうな顔をしていると『近藤さんはそういうの似合わない』『皆を元気にするためにも笑顔でいてね』と皆さまに言われるので。皆様を暗い気持ちにさせちゃいけないなと」

笑顔の中に闘志を秘めながら、悲願となる小選挙区での議席獲得をめざし駆け回ります。

奥能登では投票者数が20日までで前回選と比べ3割以上減少

奥能登ではこれまで地区ごとに巡回させていた移動投票所のバスがなくなったことなどにより、期日前投票所が大幅に減っています。

また、投票者数も20日までの5日間で前回選と比べ3割以上減少しています。

80代男性「だんだん歳いったらここまで来てもらわないと投票に来られん。今地震になってなおさら誰もおらんやろ」

80代女性「そりゃもちろん今まではずっと(投票)しとったよ。でもあんた町野いけ輪島いけと言われても、いかれんわいね」

相次ぐ災害は候補者の戦い方だけでなく、有権者の投票行動など選挙そのものにも影を落としています。