チーム事情から見るドラフト戦略2024〜ソフトバンク編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月24日に開催される。各球団すでに指名選手をリストアップし、最終段階に入っていると思うが、チームの現状と将来を鑑み、今回のドラフトで本当に獲得すべき選手は誰なのか? 2位に13.5ゲーム差をつけるなど、パ・リーグを圧勝したソフトバンク。12球団一の戦力を有すると言われるソフトバンクが、今年のドラフトで狙うべき選手とは?

【地元・九州に超高校級右腕】

 シーズン当初から首位をキープし続け、終わってみれば91勝49敗3分(勝率.650)と圧倒的な強さで4年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンク。日本ハムとのクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルでも3連勝を飾り、まったく危なげなく日本シリーズ進出。黄金時代再来を予感させる戦いぶりだ。

 一軍メンバーの大半が、30歳前後の脂が乗りきった働き盛りの選手たち。2020年にふくらはぎを痛めて休んだあたりから、ドラフトの時期になると"今宮健太の後釜"が取りざたされるなど、現実的にはこれから多くの選手に"かげり"が見えてくるかもしれないが、今宮は今年も133試合に出場して、打率.262(リーグ10位)と立派な成績を残した。

 しかも、それ以上に光るのが失策4(守備率.992)。いくら宗山塁(広陵→明治大/遊撃手/175センチ・79キロ/右投左打)が「10年にひとりの逸材」だとしても、今宮のレベルに達するまでにはどれくらいの時間を要するのか。今宮の年俸は推定で3億円ということだが、個人的には10億円もらってもいい選手だと思っている。まだこの先、数年は安泰ではないか。

 何はともあれ、支配下、育成を合わせると120人ほどを有する"選手王国・ソフトバンク"で、あえて足りない部分があるのか調べてみた。

 過去5年間、ソフトバンクがドラフトで指名した高校生投手のなかで、一軍への兆しが見えるのは、前田悠伍(2023年ドラフト1位)と大野稼頭央(2022年ドラフト4位)の両左腕ぐらい。要するに20歳前後の投手が極めて少ないのだ。

 だから、今年のソフトバンクは「高校生の投手」だ。ほかが大学生に目が向いているだけに、チャンスは大きい。

 春のセンバツ時の豪速球だったら、今朝丸裕喜(報徳学園/投手/188センチ・80キロ/右投右打)で決まりだったかもしれないが、夏の甲子園がもうひとつだっただけにどうか......。復調していれば、タテの鋭い変化球はプロでも勝負球になるだけに、堂々の「1位」だ。

 地元・福岡には柴田獅子(れお/福岡大大濠/投手/186センチ・85キロ/右投左打)という"二刀流"の逸材がいる。これだけのサイズなのに、投げても打ってもボディバランスは抜群。手元の強さが光る145キロ前後の速球にスプリットも絶品。打つほうでも超高校級の長打力とジャストミート力。1位でもいい逸材だ。

 同じ九州の大分には、狩生聖真(かりゅう・しょうま/佐伯鶴城/投手/186センチ・72キロ/右投右打)というスケールと伸びしろの大きさを感じさせる投手がいる。回転数抜群で、球速表示よりも体感速度の高いストレートは一級品。あと10キロ体重が増えれば、劇的に伸びる可能性がある。


夏の甲子園で活躍した東海大相模の超大型左腕・藤田琉生 photo by Ohtomo Yoshiyuki

【社会人から左の中継ぎ候補を】

 さらに関東にも、今のソフトバンク投手陣と競争できる大器がいる。その一番手が清水大暉(前橋商/投手/193センチ・93キロ/右投右打)。長身から投げ下ろすボールは角度があり、スライダー、スプリットの変化球も秀逸だ。

 野球ファンとして心情的には、ソフトバンクほどの組織力があるのならば、1位でいきなり今夏の甲子園で大奮闘して、大器の素質を見せつけた藤田琉生(東海大相模/投手/198センチ・96キロ/左投左打)を指名。数年後、日本球界に前例なしと言われた超大型左腕を大成させ、「どうだ!」と胸を張ってほしい気もするのだが......。

 ソフトバンクの今季の戦いを振り返って、"不足"しているなと感じたのが左の中継ぎ投手。外国人のダーウィンゾン・ヘルナンデスと日本ハムから移籍してきた長谷川威展(たけひろ)が頑張ったが、とにかく消耗の激しいポジションだ。補強は欠かせない。

 ただ、コントロールの精度と勝負球、そして毎日準備をする心身の頑丈さ。そのうえ左腕となると、なかなかいるものではない。

 そんななかオススメしたいのが、社会人の伊原陵人(智辯学園→大阪商業大→NTT西日本/投手/170センチ・75キロ/左投左打)と荘司宏太(駿台甲府→国士舘大→セガサミー/投手/172センチ・85キロ/左投左打)。

 伊原は学生当時からエースとして大舞台を経験しながら厳しい指導を受け、勝負根性は出色。ストレートに強さが増し、勝負球のカットボールがさらに生きるようになった。

 荘司のストレートは、短いイニングならアベレージ140キロ台後半をマークし、同じ腕の振りからのチェンジアップでタイミングを外す。豪快な投げっぷりのわりにストライク先行の投球ができる点も高く評価できる。

 昨年のドラフト5位・澤柳亮太郎(ロキテクノ富山)は、145キロ前後のストレートとフォークで中継ぎ定着か......と思われたところで故障したのは残念だったが、同じ北信越の社会人に山田篤史(光泉→びわこ成蹊スポーツ大→伏木海陸運送/投手/194センチ・84キロ/左投左打)という投手がいる。しかもプロにはいない超大型のサイドハンド左腕。スライダーとチェンジアップが微妙に動いて、あとはプロのストライクゾーンに適応できるかどうか。人材豊富なソフトバンクでも、超大型サイドハンド左腕は唯一無二だ。