【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ラストタイクーン】

 アイルランドで生まれ、フランスの厩舎に入り、ヨーロッパの短距離路線で活躍。イギリスでふたつのG1を制覇しました。5ハロン特化のスプリンターでしたが、3歳秋に大西洋を渡ってアメリカのBCマイル(G1・芝8ハロン)に挑戦すると、まったくの人気薄ながら鮮やかに抜け出して勝ちました。

 従兄弟にビカラ(仏ダービー)、アサート(愛ダービー、仏ダービー)、ユーロバード(愛セントレジャー)の3きょうだいを持つなど近親には多くの活躍馬が並び、父トライマイベストはエルグランセニョール(英2000ギニー、愛ダービー、デューハーストS)の全兄。

 種牡馬として成功し、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアで1993-94年にチャンピオンサイアーとなりました。日本ではアローキャリー(桜花賞)、オースミタイクーン(マイラーズC、セントウルS)、オースミブライト(神戸新聞杯、京成杯)など5頭がJRA平地重賞を勝ちました。

 息子のビッグストーンはメイショウドトウ(宝塚記念)の、同じくマージュはサトノクラウン(宝塚記念、香港ヴァーズ)の父となっています。サトノクラウンは日本ダービー馬タスティエーラを出しました。ニュージーランドに残したオライリーという産駒は同国で4回チャンピオンサイアーとなっています。

 産駒は芝向きで、基本的にはスピードタイプ。ただ、配合次第で2000mあたりまでこなしました。キングカメハメハの母の父としてわが国の馬産に大きな影響を与えています。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「ナダル産駒のダート成績が凄まじいのですが、過去の種牡馬と比較するとどのくらいですか?」

 ダート戦におけるここまでの成績は、32戦して11勝、2着7回、3着4回。勝率34.4%、連対率56.3%、複勝率68.8%という驚異的な成績です。もちろん、まだ産駒は出始めであり、新馬・未勝利を勝ち上がってクラスが上がれば、この数値を維持することは困難です。とはいえ、少なくとも初年度産駒が2歳秋の段階で、これほどの成績を残したダート種牡馬は記憶にありません。

 ダートに限らなければサンデーサイレンスが思い浮かびます。同馬の初年度産駒は、1994年の2歳戦(当時の3歳戦)において勝率27.8%、連対率48.7%、複勝率63.0%という成績でした。出てくる産駒がことごとく馬券に絡むような活躍ぶりに、革命的ともいえる新たな活力を感じたものです。

 ナダル産駒は「砂のサンデーサイレンス」と形容したくなるほどです。ひょっとしたらアメリカは、タピットやイントゥミスチーフ級の逸材を日本に売ってしまったのではないか……とすら感じます。このいささか先走った妄想がもし事実であったとしたら、いずれナダル産駒がアメリカやドバイのビッグレースを勝つこともあるかもしれません。