じつは、大学入試の数学は「中学数学で解ける」…「偶然、解けた」にしないために「解答する間」にすべきこと

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東大や京大ほか、難関大学が出題した入試問題には、「数学の本質」がいっぱい詰まっている!

「よりすぐりの良問」を格好の素材として活用する新しい学習法を紹介した『中学数学で解く大学入試問題』が話題になっています。

中学数学の限られた知識や技術で、大学入試問題がなぜ解けるのか? どう解くのか?

思考過程を重視した素朴な解法を通して、有名大学の問題が「わかる喜び」「考える楽しさ」を体感すれば、「数学的思考力」が驚くほど身につく!

*本記事は、『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

重視される「STEAM」教育を支える思考

21世紀に入ってから、STEM教育が重視されるようになっています。

STEMとは、「Science:科学」「Technology:技術」「Engineering:工学」「Mathematics:数学」の頭文字から成る造語で、これらの分野に重点を置いた教育を意味しています。

現在では、これに「Art:芸術・教養」を加えた「STEAM教育」が求められています。新しい知を創り出すためには、「STEM」に代表される知識に加えて、「A」がもたらす思考力や創造力が不可欠というわけです。

このような背景もあって、数学の大学入試問題においても、知識の量や質を問う問題に加え、思考力を問う問題が増えてきました。本記事では、「思考」に焦点を当てます。「STEAM」を支える思考は、大きく「帰納」と「演繹(えんえき)」の2つに分けることができます(『中学数学で解く大学入試問題』で詳しく紹介した「アナロジー」も、広い意味での帰納です)。

数学の問題を解くために、私たちはなかば無意識に、これらの思考をしています。しかし、それを言語化することは、思考を深く理解し、鍛えることにつながります。ここでは、帰納と演繹、そしてこれらを組み合わせた思考について考えてみましょう。

帰納と演繹

帰納と演繹は、次図のようなイメージです。

帰納の例を1つ挙げます。

帰納

具体

前提1:カラスAは黒い

前提2:カラスBは黒い

前提3:カラスCは黒い

一般

結論:すべてのカラスは黒い

演繹の代表例は「三段論法」です。

演繹

一般

前提1:動物はすべて死ぬ

前提2:人間はすべて動物である

具体

結論:人間はすべて死ぬ

帰納と演繹にはそれぞれ、短所と長所があります。

帰納の短所:前提が正しくても、結論が間違っている可能性がある

帰納の長所:具体的な前提から得た結は、(間違っている可能性はあるが)より一般的である

演繹の短所:前提(一般)から得た結論は、より具体的なものになる

演繹の長所:前提が正しければ、そこから導かれる結論も必ず正しい

帰納と演繹が、互いの短所を補い合い、長所を発揮できる思考法が「仮説演繹法」です。仮説演繹法は、次の2ステップからなります。

帰納によって仮説を導き出す

仮説を前提の1つとして、演繹により予測を結論として導く

このような思考が科学の発展を支えており、数学でもこのような思考が活躍しています。特に、初見の問題では、「帰納(アナロジー等)」によって仮説を立て、それをもとにして「演繹」することが多くなります。

ただし、演繹を進めるうちに仮説が反証された(誤りが判明した)場合は、仮説を修正し、あらためて演繹することになります。

続く問題で、「思考」においてなかば無意識に利用している「帰納」と「演繹」を明確に区別して、これまで以上に言語化した解答を目指してみましょう。「偶然、問題が解けた」ではなく、「再現性」をもって解けるコツがわかります。

中学数学で解く大学入試問題

数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法

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