会計検査院

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 社員のリスキリング(学び直し)などを行う事業者を対象とした国の助成金について、会計検査院が抽出調査したところ、3割の事業者で不適切受給が確認されたことがわかった。

 いずれも本来の費用に加え、委託先のコンサルティング会社などから受けた「キックバック」を上乗せする形で支給を申請していた。検査院は9日、厚生労働省に審査の厳格化を求めた。

 不適切受給があったのは「人材開発支援助成金」。雇用保険法に基づき、リスキリングなどの研修費用を全額自己負担していることを条件として、費用の最大75%を事業者に支給する。近年は助成金の申請額が高額になるケースが急増し、社員研修などを扱う「実施機関」の企業や団体が関与しているとみられていた。

 検査院が2019〜23年度に東京など10労働局に助成金を申請した113事業者を調べたところ、8労働局分の32事業者(28%)に計約1億円の不適切受給が見つかった。

 関係者によると、32事業者はそれぞれ、「実質無料で研修ができる」と電話などで勧誘していた実施機関の4社・団体と研修の委託契約を締結していたという。

 このうち24事業者は、同じ大阪市のコンサル会社に委託していた。ある事業者はコンサルに研修費約265万円を支払うとともに、国に「研修費で約265万円かかった」と申請し、助成金約190万円を受給。一方で、コンサル側と業務協力など別の契約を結び、「感想文の提出」などの名目で約75万円のキックバックを受け、本来生じる「赤字」を帳消しにしていた。コンサル側は約190万円分の収入を得ていた。

 中には、実施機関側から「16人分の感想文提出」という業務協力を依頼され、187万円を受け取っていたケースもあった。別の事業者は、何も業務をしていないのに実施機関側から返金を受けていたという。

 検査院はこうした事例について、キックバック分は実施機関側による研修費の負担だったと認定。32事業者は、自ら負担していないキックバック分を含めて不適切に申請していたと判断した。検査院は「全額負担」のルールに違反しているとして、助成金の全額を不適切と結論付けた。

 大半の労働局はキックバックの実態を把握しておらず、検査院では、放置すれば不適切な受給が拡大する恐れもあるとしている。厚労省は「助成金の適正な支給の確保に向け、適切に対応する」としている。