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タイで社会問題になっている“物乞いビジネス”。施しをすれば「徳を積める」。こうした習慣を悪用して物乞いになりすまし、金銭をだまし取るケースが相次いでいるといいます。中には悪質なブローカーの存在も…

【写真を見る】タイで広がる“物乞いビジネス”の闇、一晩で3万5000円「最低賃金より稼げる」

違法でも…“最低賃金より稼げる”

多くの高層ビルが建ち並ぶタイの首都バンコクの中心部。街を歩いていると、しばしば目にする光景があります。

記者
「歩道橋の下に座り込んでいる人がいます」

タイ人や外国人観光客などにお金を恵んでもらおうと「物乞い」する人たちです。

記者
「通行人がお金を渡していますね」

タイでは2016年から物乞い行為が法律で禁止されています。しかし、タイ政府によると、今年はコロナ後の観光需要の回復などもあり、前の年に比べ、“物乞い”が2割以上増えているということです。

ベルギーからの観光
「きのう、片足がない物乞いの人を見ました」
「きのうの夜に1人いたね」

日本からの観光
「可哀想な反面、仕事がないのかなと感じる」

子連れで物乞いをしていた人に話を聞くと…

ーーーなぜ物乞いを?

物乞いをしていた女性
「年をとりすぎて仕事がないのです」

ーーーなぜ子供たちを連れている?

物乞いをしていた女性
「面倒を見てくれる人がいないので」

人々の同情を買うように見える物乞い行為ですが、その多くが“物乞いビジネス”と呼ばれ、社会問題になっています。

タイ在住の日本人
「(物乞いが)最低賃金よりもらえることもあると聞く」

組織的に“子どもを誘拐・強制”も

現地メディアが報じた“物乞い”の外国人女性。実際には観光客だったとみられ、女性のSNSにはブランド物を身に着けた写真がアップされていました。

組織的な物乞いも横行しているとみられ、今月6日には、アパートで共同生活を送っていた男女数人の物乞いグループが警察に摘発されました。部屋からは、大量の現金が見つかったということです。

仏教国のタイでは、施しをすれば「徳を積める」と考えられていて、こうした習慣などが悪用されているとみられます。

私たちが取材中に見かけた女性は、幼い子ども2人と物乞いをしていましたが、1時間ほど経つと…

記者
「帰ろうとしている」

女性はこちらを警戒するような素振りを見せた後、タクシーを拾い去っていきました。関係者によると“物乞いスポット”まで送迎している人物もいるということです。

さらに深刻なケースも…

タイ特別捜査局 人身売買犯罪対策課 シリウィット課長
「人々に同情を訴えることができる障害者や子どもたちに、物乞いを強制させる悪質なブローカーがいる」

犯罪組織によって連れ去られたカンボジア国籍の子どもたちが人身売買の被害者として保護される事件なども起きました。

現地当局は、物乞いの取り締まりを強化。中には一晩で日本円にして3万5000円近くを手にした人もいました。

8月16日のパトロールでは10人あまりが検挙されましたが、警察に捕まっても罰金を払えばすぐに釈放されるケースも多いといいます。

私たちは、この日摘発された人がわずか1週間後に再び物乞いをする姿を確認しました。

生活困窮者保護センター ターパニー所長
「罰金よりも物乞いで得られる収入の方が高いので、また物乞いに戻ってしまう。政府は約10年前に施行された物乞い禁止の法律を改正し、現状に即したものに変えようとしています」

タイ政府は、実際に困窮している場合には就業支援などを行っているとしたうえで、観光客に対し「組織犯罪に加担するおそれもあるので、お金を渡さないでほしい」と注意を呼びかけています。