休みたいのに停める場所なし……な大型トラックの解決策! 導入が予定されている「コラム式駐車場」とは
この記事をまとめると
■SA・PAでのトラックの駐車場不足が深刻化している
■混雑の背景には「430休憩」というルールが影響している
■高速道路会社は「コラム式駐車場」の導入に向けて動いている
高速道路会社各社が大型車の駐車枠を拡充
高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)でのトラックの駐車場不足が深刻化している。トラックが高速道路を走る時間帯はおもに深夜。これは高速料金の深夜割引の制度が大きく影響している。また、長距離のトラック便の多くが深夜を走り、納品先の業務が始まる前の朝に荷物を届ける、という長年の習慣が原因であることも多い。
そのため、夜間のSAやPAには深夜の高速利用を控えたトラックが大量に集まり、混雑する状態が続いている。駐車場に入りきれず、サービス(パーキング)エリアの入口や出口の誘導路まで、トラックの駐車の列が伸びているという危険な状況も日常茶飯事になっている。
その混雑の背景には、「トラックドライバーは4時間運転したら必ず30分の休憩などを取らなければいけない」という「430(ヨンサンマル)休憩」という厚生労働省が定めたルールがある。30分の休憩は、たとえば「2時間に15分ずつ」といった分割も可能だが、必ず休憩をとり、運転を中断しなければならないということは変わらない。
そのため、全国各地のSAやPAでは、4時間運転したトラックドライバーがその制度を守るため、駐車場を探して右往左往する、という状況が起こっている。誘導路での駐車はもちろん違反だが、430休憩に違反しないため、交通ルールの違反をするという矛盾した状況が日々起こっているのだ。
このような「休みたいけど休めない」SA・PAの駐車場不足を解決すべく、高速道路会社各社では大型車駐車マス拡充の取り組みを進めている。東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)では2023年度に大型車マス630台の拡充を完了。2024年度にはさらに560台の拡充を予定している。
とはいえ、SAやPAなど休憩施設の敷地は限られており、駐車マスの増設やレイアウト変更などによる対策には限界がある。
そのため、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構、NEXCO3会社及びJB本四高速が設置した有識者検討会「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会」にて取りまとめた整備方針をふまえ、高速道路会社各社ではSA・PAの駐車マス拡充に加え、今後は既存のSA・PA以外の高速道路事業用地などを活用した大型車専用駐車場の設置や駐車マスの立体化、複数縦列式(コラム式)駐車場の導入を進める。
「コラム式駐車場」はドイツなどで採用されている
「高速道路事業用地を活用した大型車専用駐車場」は、本線料金所の廃止などの整備で余剰となった高速道路サイドの土地を活用し、大型車専用駐車場を設けるというもの。現在、東名阪自動車道の旧鈴鹿本線料金所の跡地を活用し、臨時的に駐車場としている箇所を、大型車専用休憩施設に変更する計画が進められている。東名高速の豊橋PAも、かつて設けられていた豊橋バリアこと豊橋本線料金所として使われていた広い敷地をPAにしたものだ。
「複数縦列式(コラム式)駐車場」とは、出発時間別に大型トラックを隙間なく縦列に停まるレーンを設け、駐車マスを効率的に活用させるシステムだ。出発時間が来た該当レーンのトラックは一斉に退場。駐車マスが1列まるまる空くという構造になっている。このコラム式駐車場は、ドイツのアウトバーンなどですでに採用され、敷地を有効活用する効果が確認されている。また、NEXCO西日本では山陽自動車道の佐波川SA(下り)にこのコラム式駐車場の整備を検討している。NEXCO中日本では東名高速の鮎沢PA(上り)に小型車用の立体駐車場を建設し、既存の平面駐車場を大型車用にする計画が進められている。
コラム式駐車場は定期的な休憩を取ることが義務付けられているトラックドライバーにとっては、まさに効率的なシステムとなるに違いない。このように、全国の高速道路の各所の駐車場がさらに拡充されれば、夜間の誘導路にはみ出すほどのSA・PAの混雑も軽減され、働く環境がさらに改善されることだろう。