神戸高速鉄道元町〜西代間の運営は阪神が行う

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阪神甲子園球場の最寄駅、阪神の甲子園駅。阪神本線の主要駅であり、阪神タイガースファンを多く見かける駅でもあります。そんな阪神のシンボルともいえる甲子園駅ですが、実は一部とはいえ、阪神の持ち物ではないのです。一体、どういうことでしょうか。

【写真】大屋根が取り付けられ、リニューアルされた阪神甲子園駅

甲子園駅の持ち主は神戸高速鉄道

先に結論を書くと甲子園駅の駅施設の一部を保有しているのは神戸高速鉄道です。神戸高速鉄道は神戸市などが出資する第三セクターの鉄道会社です。主な事業は、第三鉄道事業者として、阪急神戸三宮〜高速神戸間、元町〜西代間、新開地〜湊川間の鉄道設備の保有です。

論より証拠、「令和5(2023)年度神戸高速鉄道事業概要」にある事業概要には「阪神電鉄岩屋・春日野道・尼崎・武庫川・神戸三宮・甲子園……の各駅において、当会社が保有する施設の賃貸を行った」と書いてあります。そして、同書類にある「神戸高速鉄道路線図」には甲子園駅は「駅施設の一部を保有する駅」になっています。

このように、一部とはいえ阪神は甲子園駅を「所有していない」ことになります。

神戸高速鉄道所有の理由は補助金

神戸高速鉄道が所有する最大の理由は国からの補助金です。甲子園駅は2017年にリニューアル工事を終え、白球や球児のユニフォームをイメージした大屋根が取り付けられました。

このリニューアル工事の事業主体は阪神ではなく、神戸高速鉄道でした。現在、神戸高速鉄道は阪急阪神ホールディングスの子会社でもあります。

当然のことながらリニューアル工事には多額の費用が発生します。そこで、活用したのが国の「鉄道駅総合改善事業費補助」制度です。

ところが、この制度はダイレクトに鉄道事業者が受け取れませんでした。公益性を配慮し、受け取れれたのは「駅の改良整備・保有を業務とする第三セクター」だったのです。現在は第三セクターを介さずに鉄道事業者が受け取れるようになっています。

そのため、第三セクターの神戸高速鉄道が事業主体となり、補助金を受け取れた、というわけです。

阪神は神戸高速鉄道からの委託という形で工事を引き受け、リニューアル工事の完成へと至った、というわけです。

現在もリニューアル工事後の施設は神戸高速鉄道が保有し、阪神に貸しています。このような図式は甲子園駅だけでなく、尼崎駅のリニューアル工事もこの形式を取り入れました。

興味深い例ですと、阪急西宮北口の改良工事の事業主体は第三セクターの北大阪急行電鉄です。北大阪急行電鉄は昔から阪急の子会社なので、事業主体になるのも納得といった感じです。

今までの改良工事、リニューアル工事も調べると、興味深い事例がわかるかもしれません。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)