日本代表・森保一監督(左)と町田・黒田剛監督【写真:徳原隆元】

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実績のある選手を中心に高井幸大や望月ヘンリー海輝の初招集組を融合

 森保一監督率いる日本代表は8月29日、9月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選に臨むメンバーを発表した。

 伊東純也と三笘薫の復帰、新人Jリーガーの望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)や19歳の高井幸大(川崎フロンターレ)の初招集などが話題になったが、一方で試合には23人しか登録できないにもかかわらず27人を招集し、一見どのポジションで使うのか分からないような選手も呼ばれている。このメンバー選考をどう考えればいいのか。元日本代表MF前園真聖氏に意見を聞いた。(取材・構成=森雅史)

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 今回のメンバー発表は、「なるほど」と思わされた選考でした。

 前回のコラムで僕が予想していたメンバーと違ったのは、GK小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン/ベルギー)、毎熊晟矢(AZアルクマール/オランダ)、大畑歩夢(浦和レッズ)の3人でした。

 GKはJリーグでトップを争うチームからの2人、大迫敬介(サンフレッチェ広島)と谷晃生(FC町田ゼルビア)に加えてアジアカップで経験を積ませた鈴木彩艶(パルマ/イタリア)ですから、まだ横並びのGKの中ではどう選んでも正解という気がします。毎熊は移籍したばかりですし、左サイドバックは予選本番ということで計算できる長友佑都(FC東京)になったのでしょう。

 初招集された高井幸大(川崎フロンターレ)は、今回、冨安健洋(アーセナル/イングランド)や伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)の負傷があったので呼ばれたのだと思います。予想の中でも入れていましたが、森保監督も同じようにこの19歳に日本代表を経験させたいと思っているのではないでしょうか。

 同じく初招集の望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)はまだ直接見たことのない選手でした。ですが、話に聞くところによると、森保監督が町田の黒田剛監督に「育ててほしい」とお願いしていた選手なのだとか。身長もスピードもあって、これからの伸びしろが期待できそうです。

 あとはしっかりと実績を残している選手を入れてきています。だから予想も当たったと言えます。

小川航基、旗手怜央、前田大然の3人に注目

 そして、23人の試合登録枠に対して27人を選んだ今回の選考メンバーの中で、僕が注目した選手が3人います。

 1人は小川航基(NECナイメヘン/オランダ)。3月21日のホーム・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦、6月6日のアウェー・ミャンマー戦と森保監督はプレーさせていましたし、ミャンマー戦では2ゴールも挙げました。

 細谷真大(柏レイソル)が五輪代表から日本代表に戻ってくるこのタイミングで小川も招集し、上田綺世(フェイエノールト/オランダ)との3人で1トップを争わせるというのは、活性化という意味でとてもいいと思います。また、2トップは試合の最初から臨むということはないでしょうが、オプションとして使う時には有効な選択になると思います。その両方の意味で小川を入れたのではないでしょうか。

 あとの2人は、旗手怜央と前田大然(ともにセルティック/スコットランド)です。旗手は開幕から3試合連続出場し、2ゴール。前田はリーグ3戦目で先発し、アシストを決めています。両選手とも好調だから選ばれたのだろうというのがまずあります。

 ただ、たぶんそれだけではないでしょう。というのも、4-2-3-1あるいは4-1-4-1のポジションに選手を当てはめていった時、それぞれ十分な選手がいるからです。それでもこの2人を呼んだのは、3バックへの変化も考えているのではないかと思うのです。

 3バックにした時、この2人はウイングバックとしてプレーできます。前田の2度追い、3度追いできる走力は証明済みですし、旗手は左サイドの前もうしろもできますから、ウイングバックもこなせるはずです。

 アジア2次予選の時は26人招集して23人が登録メンバー、3人がベンチ外という体制で臨んでいました。今回、それを1人増やした27人招集したのは、そういう戦術のオプションを見極め、それによって選手を使い分けようとしているのではないかと思います。

 メンバー発表で試合に対する楽しみがさらに増しました。まずは必ず9月5日の緒戦・中国戦で勝利を挙げてほしいと思います。(森雅史 / Masafumi Mori)