習慣化の最初のフェーズで大事なことは「成果を上げること」ではなく、「定着させること」です(写真:buritora/PIXTA)

続けたくても、続かない。健康のため、ダイエットのため、自己研鑽のために、何か新しいことを始めようと試みるものの、長続きしない。そんな経験を持つ方は多いでしょう。

でも、大丈夫です。あきらめる必要はありません。なぜなら、それはただ単に「潜在意識を味方につける」方法をとっていないから。最新の研究データとコーチングの理論を応用し、潜在意識をコントロールすれば、誰でも簡単に習慣を身につけることができます。そして、なりたい理想の自分に変われるのです。

コーチングを活用した独創的な手法で企業の人材育成・組織開発のサポートを行う三浦将氏の新刊『改訂新版 自分を変える習慣力』をもとに、仕事や人生を変える習慣化の方法を3回にわたり解説します(今回は1回目)。

3週間続ければうまくいく

習慣を定着させるためには、まず3週間続けましょう。

そして、それが3カ月続けば、ほぼ習慣となります。

習慣化の最初のフェーズで大事なことは、「成果を上げること」ではありません。「定着させること」です。これは、どれだけ強調してもいいぐらい、大事なことです。初期の目的を定着させることだけに焦点を当て、成果を上げることには期待しない、執着しないというスタンスが正解です。

例えばダイエットなら、最初の3週間をダイエットのための運動の習慣や、食事コントロールの習慣を定着させることに集中し、この段階では体重の増減に一喜一憂しないということです。

だから、初期は無理な食事制限や過度な運動は控えることが大切になってきます。苦痛の感情を作ってはいけないのです。

ランニングの例でいえば、毎日10キロではなく、毎日1キロでも、300メートルでもいいのです。少し物足りない程度で、「もうちょっと走りたい」くらいの方が、むしろいいです。

これを3週間続ければ、毎朝走ることが「当たり前」になってきます。「もうちょっと走りたい」くらいの感覚で続けていると、走ることが 「快の感情」 と結び付いてきます。

先ほどの毎日10キロのケースとは、正反対の感情が生まれてきます。そして、それに合わせ、自分のペースで2キロ、3キロと距離を増やしていけばいいのです。これが、潜在意識をうまくコントロールしながら、プログラムを書き換えていく最良の方法です。

スポーツクラブは風呂のために通う

スポーツクラブに通うにしても、最初からハードメニューをやれる人はいいですが、それを無理にやる必要はありません。むしろ、やらないでください。

極端な話、お風呂が大好きな人なら、最初のうちは、マシンなどを一切使わず、お風呂だけ入りに行くのでもOKです。

大きな減量効果は表れませんが、大好きなお風呂に入っている時間の至福感と、そのスポーツクラブ自体のイメージが結び付いてきます。そして、数回が過ぎると、そのスポーツクラブの施設、レセプションの雰囲気、ロッカールームの感じ、マシンが置いてあるスペース、そしてサウナの場所などと、その快の感情が強く結び付いていることに気が付きます。

これがまさに、潜在意識が安心している状態です。

好きなことだけやりに行くのだから、自然にそうなります。この間は、決して体重減などの成果を求めてはいけません。実際に「通っている」という事実の積み重ねが、あまり思考や判断を介せず、スポーツクラブに向かうという習慣を定着させていくのです。

この快の感情と通う感覚の定着が進むことで、初期の目的は達成です。あとは少しずつ自分に合った運動量に増やしていけば、習慣化はほぼ完成。

気づいた頃には、絞り込まれた肉体が、そのスポーツクラブの鏡に映っているという現実が訪れます。

成長曲線というものをご存じの方も多いと思います。

仕事でも習い事でも、それに費やした時間と、実際に表れてくる成果とは、ある関連性があるという話です。以下に示したものが、成長曲線。ここからは、習慣化をこの成長曲線を例にしてお話しします(※外部配信先では図を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。


(図:『改訂新版 自分を変える習慣力』より)

ティッピングポイントを超える

例えば、新しいビジネスを始めるとします。

最初は、知識も経験も少ないので、要領もわからず、半ば手探りです。当然成果はなかなか出ません。それでも続けていると、徐々に成果は出るものの、満足のいくレベルまでには程遠い現実が続きます。

初期においては、費やす時間や労力と現れる成果が正比例しにくいのです。多くの人は、このあたりでやめてしまいます。

そんななか、何パーセントの割合で続ける人が出てきます。続けていくと、まわりに高い成果を出す人が何人も出現してきます。そして、自分が出している成果とのギャップに焦りを感じます。

こんなことが続くと、また何パーセントかが脱落します。それでも続けている人は、かなりの経験と知識を積んできているので、習慣化のコツを掴み、うまく自分でコントロールできています。

やがて、あるポイントが訪れます。それが、先の図にもある「ティッピングポイント」です。そのポイントを超えると、急激に成果が出始めます。正比例以上のベクトルをもって、費やす時間に対しての成果が急上昇するのです。

芸能人やスポーツ選手が、「ブレイクする」というのもこのポイントです。その後は、2次曲線をたどるように、さらにさらに急上昇していきます。これが「成長曲線」というものです。

世の中の成功者というのは、このティッピングポイントを超えるまでやり続けた人とも言えるでしょう。

習慣化のプロセスもこれに類似しています。

最初は成果が出ているかすらわからない。それでも続けていくことによって、定着化が進む。やがて、はっきりとした成果が出てくる。そして、このときにはすでにオートマチックにその習慣を日々行っているので、さらに成果は上がっていく。

がんばらない、無理しない

このように、習慣化でも、成果が表面化する前に、途中で止めてしまう率を下げていくことが重要です。一時期がんばるのだけど、日々粛々とやることができない。この悲しい現実から脱却したいものです。だから、がんばらない。無理しない。それでいて日々粛々とやることはやる。これが大事なのです。


あらためて、ここでのいいニュースは、がんばる必要がないということです。念を押しますが、がんばらないでください。

そして、その代わりあれこれ考えず、やることをやり続ける。このスタンスが習慣化の最短距離であり、成功への道です。

ライバルは他の誰でもありません。昨日の自分自身です。少しずつ、毎日歩みを進め、昨日の自分をちょっとでも超えていく。この姿勢が大切なのです。

一般的には習慣化への取り組みは、なかなか成功に至ることがありません。そんななか、これまでお話ししたことを知ったからには、もう安心してください。潜在意識を安心させながら、意志の力の消費を抑え、がんばらないで、粛々と続けていくのが、肝なのですから。

(三浦 将 : 人材育成・組織開発コンサルタント/エグゼクティブコーチ)