いきなりの出来事に驚いていると、彼女は「お腹ペコペコで。ダメですか?」と冷静な口調で返してきたという。そのあまりの圧に、相良さんは「どうぞ」としか言えなかったそうだ。

◆ロボットのような返答のみで料理を食べまくる

 肉や料理が席に運ばれると、黙々と焼き始める彼女。相良さんは「改めまして。電気メーカーで営業している相良です」と自己紹介をスタート。当然、向こうからのリアクションもあるかと思ったが、ジュージューと焼かれている肉に夢中。

 仕方なく「どんなお仕事をされているんですか?」と聞くと、「OLです」とだけ回答。「何系の会社ですか?」と聞いても「メーカーです」と答えるだけ。
 
「その後も『趣味はありますか?』と聞いても『特にないです』と言われ、『アプリで何人か会っているんですか?』と聞くと『初めてです』と、いかにもテキトーな感じで返事をしてきました。まるでロボットと会話しているような一問一答が続いて、向こうから僕のことを聞かれることはなかったです」

◆「トイレに行ってきます」と言い残して逃走

 焼き上がった「特上タン塩」や「特上カルビ」を相良さんにも取り分けてくれたものの、会話はほとんどないまま、ひたすら食べていく彼女。

「ユッケジャンクッパ」にいたっては取り分けることもせずに完食。お互いに生ビールを頼んだが、一口飲んだだけで“お酒の場を楽しむ”という気配はなし。

「これは食事目的のために来たな、と怒りがこみ上げてきて『絶対に割り勘しよう』と思ったとき、突然彼女が『トイレに行ってきますね』と荷物をもって席を立ちました。今思うと、トイレの場所を聞いていなかったので、来たことあるお店だったんだと思います」

 肉と料理は無くなったまま、待つこと10分。一向に戻らない彼女が不安になってきた相良さん。ぬるくなったビールを飲み干して、トイレに行ってみると女性用トイレは扉が開いており、誰もいなかったそうだ。

◆すでにアカウントは削除されやり取り不能に

「まさか……と思って、店員さんに『一緒に来た女性がどこに行ったか分かりますか?』と聞いてみたんです」

 すると、店員は「お連れ様は『予定があるので先に出ます』と言って出て行きましたよ」と、衝撃の言葉が返ってきたそうだ。

 膝から崩れ落ちそうになった相良さんはすぐにマッチングアプリを開き、彼女とのメッセージのページを開こうとするも、すでに彼女のアカウントは消されていてやり取り不能になっていた。

◆アプリ運営会社は「対応しかねる」

 遅刻してきた女性に高級韓国料理を食い逃げされるという散々な目に遭った相良さん。逃走した女性のプロフィールの『初回のデート費用』という項目が「男性が全て払う」になっていたことを思い出したそうだ。

「もちろん、会話が盛り上がればごちそうするつもりでいましたけど、まさか『トイレに行く』と言って逃げ出すとは思いもよらなくて、腹が立ちました。

 すぐにアプリの運営に問い合わせしましたが『アカウントを消したユーザーについては対応しかねる』と言われました。まぁメッセージもろくにしないで彼女の誘いに乗った僕が悪いので、それ以上運営を責めることはできませんでした……」

◆『初回のデート費用』で「男性が全て払う」は要注意

 このトンデモない一件に懲りた相良さんはしばらくマッチングアプリを辞めていたそうだが、現在は結婚相手を探すために再開。

 しかし、『いいね!』を押す女性の年齢は同世代にし、『初回のデート費用』の項目も「相手と相談」か「割り勘」を選んでいる人に絞って探すようにしているとか。

 もちろん、いきなり「食事に行きましょう」というメッセージには返答しないようにしているとのことだ。彼の婚活が報われることを信じたい。

<取材・文/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。