なかには「1億円」を超えるものも……「中古ギター」価格がここ10年で「10倍」になった意外な理由

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ピアノやヴァイオリンなどとは違い、比較的安価で初心者が手を出しやすい楽器であるギター。学生のときにロックバンドや映画の登場人物に憧れてギターの練習を始めたという経験がある方も多いのではないだろうか。

そんなギターの価格が今、凄まじい値上がりを見せており、最近では1億円を超えるようなものもあるのだという。

ギター業界に今、何が起きているのか。ビンテージギターの売買を行っている「AMUSE GUITAR」の雲井竣也氏に話を聞いた。

「最近のギター価格の上昇は物価の上昇も関係していますが、一番大きな要因はコロナだと思います。コロナで外に出られないから、昔ギターを弾いていた人がまたやり始めたり、新しく始める人が増えたりした結果、需要が急激に高まったんです。手に入りにくい年代のギターはここ数年で2倍から5倍くらいに値上がりしていますね」

なかでも’70年代中期までに作られたいわゆるビンテージギターは特に大きな値上がりを見せている。改造やパーツ変更、再塗装がされていないオリジナルの状態に近いものはプレミアがつき、さらに価格が上昇することもあるそうだ。

ただ、そこで気になるのが古いギターのほうがいい音が鳴るのかということだろう。パソコンやスマホは年々性能が上がっているが、楽器の場合はそういうことが起こり得ないのかについて聞くと、「一般論ではありますが」と断りを入れながらこう続ける。

「基本的には、古いギターの値上がりは希少であるというところに大きな要因があると思います。例えば、現状最も高いギターの一つである1959年に作られたギブソン・レスポールのバーストと呼ばれるものは本数が限られていて、誰が持っているかまでわかる程です。

ただ、ギターに使われている木材が経年で乾燥することでいい音が鳴るようになるといわれています。なので、古いギターのほうがいい音が鳴るといわれていることが多いです」(雲井氏)

こういった事情もあってか、ビンテージギターを転売目的で買う人もいるのだとか。

ただ、いまはビンテージギターだけでなく、新品のギター価格も上がっている。その理由には、木材価格の上昇や円安が関係しているのだという。

「国内産のギターでも部品の多くは海外からの輸入なので、為替の影響で値段が上がってしまっています。ほかにも、ギターに使われる木材の価格が上昇しているので、新品のギターでもここ数年で1.5倍くらいの価格になっていることが多いですね」(雲井氏)

そんな全体的に価格が上がっているギターだが、なかには中古価格が下がっているものもあるのだという。

「アニメなどのブームでたくさん売れたギターは、結構多く市場に出てきているので捨て値みたいな価格でも売れないことが多いですね。例えば『けいおん!』というアニメに出てきたキャラクターが使っているギブソン社のレスポールというギターのコピーモデルは、なかなか売れないみたいです」(雲井氏)

それほど高くなかったギターでも、市場に出ている数が少なければ高い値段がつくことがある一方で、いいギターでも多く市場に出回っていれば値段がつかないこともあるのだとか。

もし家にギターが眠っているのなら、近くのお店に持っていってみて値段を聞いてみるのもいいかもしれない。