価値観のアップデートを行うにあたり、やるべきことや意識するべきこととは? ※写真はイメージ(写真:78create/PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

40代後半の会社員です。最近、いろいろなことに対する自分の柔軟性が失われているような状況に直面したので、今回相談をさせていただきます。

私はそれなりの大企業に新卒で入社し、勤務して20年以上が経過しました。最近、ベンチャー企業のような会社に勤めている同年代の知人に会う機会があり、考え方の柔軟性や新しいトレンドを受け入れる姿勢にえらく感動しました。

その知人は外見も自分の同期よりもだいぶん若く見え、中年臭さがなくスマートな感じであることに衝撃を受けました。勤務先で若い人たちと触れ合う機会が多いのかもしれないと勝手に想像しましたが、一方の自分は同じ職場で同じような価値観と昔ながらの昭和的な考えや仕事のやり方が当たり前になっています。

会議方法や稟議、根回し、紙の資料作りだけでなく、社歌や飲み会に至るまで代々受け継がれている会社です。リモートワークなんて「何だそれ?」といった感じで、過去のものになっているようです。

やはりそうした環境が個人としての自分の考えや魅力に影響しているのでしょうか。また、それを変えようとしたら何から始めるのがよいのでしょうか。

会社員 Mさん

時代と共にアップデートしていかないといけない

年齢に関係なく、物事に対する旺盛な好奇心を持つことや柔軟性を持つことは非常に大切です。


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なぜならば世の中の変化のスピードが速く、自分を取り巻く環境や当たり前だと思っていた常識がどんどん変わっていくからです。変化や不透明感に支配された世の中とも言えます。

そういった変化の速い時代や不透明な世の中において大切なことは、変化や不透明感に対していかに柔軟性を持って対応するか、です。

そして変化に対する柔軟性とは環境変化に対する対応力であり、また個人としての進化であり成長です。どんな分野や仕事であれ、かつての常識や前提、知識などが未来永劫続く、ということはありません。したがって、誰にとっても変わる勇気や変わる力といったものは大切なのです。時代と共に価値観も行動も思考もアップデートしていかないといけない、ということです。

そういったアップデートを行うにあたり、やるべきことや意識するべきことは以下の通りです。

・そもそも論として、環境の変化や時代が変わっている事に気がつくこと
 →これがないとまずは何も始まりません

・そのためには、そのような変化に気づくための日常の過ごし方や工夫を行うこと
 →隔離された閉鎖的な世界に生きるのではなく、よりアクティブにそして開放的に生きるべし、です

・環境変化や時代の変化の自分及び周りに対するインパクトを見極める力を持つこと
 →目の前の変化は一時的なものなのか、継続的なものなのかといった見極めや、対応するに値する動きであるか否かなどの見極めが大切です

・柔軟な対応力でもって自分自身をアップデートすること
 →変化を恐れず、躊躇せず、成長や進化であると位置づけることが大切です

さて、そのような前提でいくと、Mさんはきっかけはどうであれ世の中の変化やトレンドにご自身が取り残されていることにまずは気がついたわけです。

もっとも頂戴した相談では、その気づきを受けてMさんがご自身の変化の必要性を感じたか否かまでは分かりかねますが、恐らくご自身も「変わりたい」という感触を持ったのだと思われます。

自分が所属する環境は、追加も削除も出来る

確かに書かれている通り、自分を取り巻く環境は大切です。

周りの環境なりが自分自身の価値観や常識などを固めてしまう、という側面は当然あると思います。

周りのヒトの思考や行動によって自分自身の思考や行動が影響を受ける面は否めませんし、ましてや日常の大半を過ごす職場のような閉じた環境における常識や前提をいつの日か疑うことなく受け入れてしまい、その常識なりが全てである、と考えてしまうことは非常によくある話です。

とはいえ、そのような状況において価値観のアップデートなりを行うにあたって打ち手がないというわけでは当然ありません。

まず、Mさんが行うべきは、職場という環境のみがご自身を取り巻く世界の全てである、という考え方を捨てることです。

確かに職場は平日の起きている時間の大半を過ごす場であり環境であるかもしれません。しかしながら、追加でいくつも所属する場や環境を持つ、ということは可能なはずですし、自分自身が意識せずとも家庭や親戚といった身近なものを含めいくつものコミュニティなりに所属しているのが人間というものです。

追加するようなものとは例えば、趣味の世界における集まり、勉強会、近所、ネット上のコミュニティ、ボランティアの場などなど。自分さえその気になれば自分が所属する世界や環境はどんどん追加も、そして削除も出来るはずです。

そういったアクティブさや開放的なスタンスや行動そのものが自分自身の世の中の変化やトレンドを見る目を鍛えることにもなりますし、何よりも職場などの一つの常識を客観的に見る目を養うことにもなります。

日々自分がいる環境と全く異なる世界を持つこと自体がそういった柔軟性を養うことにつながるのです。そのようにして、価値観や年齢などの異なるヒト達と交流することが、自分自身の人間としての成熟や成長につながるのです。

凝り固まった日常をちょっと崩してみる

もちろんそのような大きな変化以外にも、自分自身で意識して日常の行動をちょっと変える、ということもそのような柔軟性の構築にはつながります。

人間はなんだかんだいって習慣の生き物であり、そういった習慣が自分自身の価値観や常識を固めていくのですから、その習慣そのものにちょっとした変化を意識的に加えることで、自分自身の価値観や常識も変わることが出来るというものです。

通勤経路を変えてみる、購読する新聞やネット上の情報ソースを変えてみる、髪を切る場所や服を買う場所を変えてみる、などなど。

要は意識して自分の日常に変化を起こし、その過程で新しいものやヒトとの出会いにつなげる、ということです。

通勤経路を変えてみるだけで、近所や街の変化、新しいトレンドスポットなどに気がつくかもしれませんし、ネットなどでの情報収集や情報とのふれあいを変えるだけで新しい何かの発見につながるかもしれませんし、スタイリストやショップ店員さんとの会話やもらうアドバイスで違う自分に気がつくこともあるでしょう。

小さいことかもしれませんが、大切なことは凝り固まった日常をちょっと崩してみる、ということですから、そういった小さな変化をまずは続けてみることです。

そうやって、変わる自分や行動に慣れる、というステップがまずは大切でしょう。むしろ、変わるということを前提にいきなり大きな変化、例えば転職や引っ越しなどを行うよりも、日常で出来る範囲でまずはリハビリ的に「変わることに慣れる」ということを行うべきです。

世の中が常に変化する中で、自分自身の価値観や行動が変わっていない、ということに気がつくことがまずは大切です。そしてそういった気づきを変化や成長につなげるべく行動を起こす、という流れです。

Mさんがそのようにして、まずは日常で小さな変化を起こしてみる、そしてその先に新たなコミュニティなりに参加してみる、ということを通じて世の中の変化に気がつきそしてその変化とともにご自身をアップデートするであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)