この記事をまとめると

■EUが2024年7月7日以降の新車に「ISA」の搭載を義務付けている

■「ISA」は速度標識をクルマが認識して自動的に速度を制御する機能をもつ

■日本でも「ISA」導入の検討が行われている

強制的に速度が出させないことで事故のリスクを軽減するのが狙い

 最近、少々沈静気味の自動運転。道路標識や車線など、環境整備の問題もあってなかなか普及していないのが現状だ。政府の後押し施策もひと段落しているし、クルマ好きからしてみれば自分で運転するのが楽しかったりするので、自動運転が普及したほうがいいとは一概にはいえないものの、交通事故減少や過疎地域の交通手段解決に効果があるのは事実だ。

 その流れのなか、欧州で出てきているのがISAというもの。ISAとは「インテリジェント・スピード・アシスタント」の略で、日本語にすると自動速度制御装置となる。欧州では2050年に交通事故死をゼロにすることを掲げていて、ISAの導入はその目玉的施策。EUではすでに2022年7月6日時点でのすべての新型車、2024年7月7日以降に新しく生産される車両にISA技術の搭載を義務付ける規則を制定しているので、遠い未来の装備でもない。

 自動速度制御装置と聞くと、現状の自動運転と同じように思えるが、最大の特徴は自動的に制限速度で走るように制御されるということ。ISAはGPSとカメラによる標識認識を行なうのは自動運転と同じで、制限速度を超えるとまずは音、そして振動で警告。それでもスピードが落ちない場合はアクセルペダルから足を離すように促して、最終的には自動で速度が制限速度まで落とされるという仕組みだ。現状の衝突軽減ブレーキに似たパターンといっていい。

 ISAをバックアップする装置として、ドライバーの注意力散漫や低下への警告装置、アルコール検知、タイヤ空気圧監視などが必要ともされている。注意力に関しては日本車でも採用が進んでいて、これはEUでの施策も踏まえてのものだろう。いずれにしても装備が増えるわけで、価格の上昇につながりかねない。

 EUでの現状としてはオフも可能になっているものの、ここまで大々的に導入しておいて解除ができるのでは誰も使わなくなって無駄なだけに、将来的には自動運転と合わせたような形で強制作動になるのだろう。また、日本でも最近は国際規格でのクルマづくりがなされているので、いずれ導入される可能性が高く、グローバル化のなかで日本だけ採用しないというのも難しい。

 実際に国土交通省を中心に検討がされていて、対象道路のほか、いくつかの作動パターンのなかには完全強制というのもある。そうなると電車のようにただつながって走るものになってしまうのか。採用が進めば確実に交通事故や交通事故死は減るし、スピード違反やあおり運転すらもなくなる。

 その一方で、走る楽しさは逆になくなるだろう。もうそういう時代ではないといえばそれまでだが……。