大阪で”最後の豪遊”を楽しんだのか? 「実行役」となった若山耀人容疑者(左)と姜光紀容疑者(右)

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 発生から2週間。栃木県那須町で夫婦の焼死体が見つかった事件は、ようやく「実行役」2人の逮捕までこぎつけた。だが、謎はいくつも残されたままだ。いまだ正体が見えてこない「黒幕」。いったい誰が大金を用意し、この複雑怪奇な犯行の画を描いたのか。そしてなぜ被害者夫妻は、殺される運命の「空き家」に自ら向かったのかーー。

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ルフィ事件との類似性

 ここまで登場人物が入り組む殺人事件は珍しい。最初に逮捕されたのは「仲介役」。次に「指示役」、「実行役」とこれまでに4人が捕まっているが、いまだ「黒幕」の正体は判明していない。

大阪で”最後の豪遊”を楽しんだのか? 「実行役」となった若山耀人容疑者(左)と姜光紀容疑者(右)

「黒幕が自分にまで辿り着けないように、あえて複数人を介在させる計画を立てた可能性があります」(警視庁担当記者)

 一方、末端に近づくほど目立つのは犯行の杜撰さだ。5月1日に逮捕された若山耀人容疑者(20)と姜光紀容疑者(20)の「実行役」2人が栃木県那須町の山中に遺棄した宝島龍太郎さん(55)と妻の幸子さん(56)の遺体は、2人が逃走して間もなく、まだ燃え盛っている最中に地元民に発見された。

 現場には遺体を燃やすガソリンの持ち運びに使った携行缶を放置。その後、犯行に使われた車もあっけなく特定されたが、「仲介役」平山綾拳容疑者(25)名義の車だった。3人とも捕まえに来てくれと言わんばかりの雑さだ。

「目先のカネ欲しさに黒幕に操られたルフィ事件の実行部隊を彷彿とさせます。平山容疑者は報酬の約900万円を使う暇もないまま、事件翌日の4月17日に出頭。若山・姜両容疑者は逮捕までの数日間、大阪で平山容疑者からもらった数百万円を散財してきたようですが、人生を棒に振るには全く見合っていない。4月29日、逃亡先の沖縄県で捕まった、平山容疑者の上にいた『指示役』の佐々木光容疑者も、犯行現場とされる品川区東五反田の空き家近くの防犯カメラに映っていました」(同)

「知らない人物から依頼された」と不可解な供述をする「指示役」

 捕まった4人の供述内容には不可解な点がいくつもある。まず挙げられるのは、黒幕に一番近い佐々木容疑者が「会ったことがない人物から突然非通知で電話があり『遺体の処理』を頼まれた」と供述している点だ。

「普通に考えてそんな怪しい話を真に受けるわけがない。警視庁は黒幕を庇っているのか、恐れているのか、何らかの理由で佐々木容疑者がウソをついていると考えている。黒幕との間に『もう一人の指示役』がかまされている可能性もあります」(同)

 4人が「遺体の処理」を頼まれたと揃って供述している点も謎の一つ。実際には、被害者夫妻は空き家に行くまで生きていたからだ。

「空き家のガレージと実行役2人が宝島さんを運んだ車には血痕が残っており、警視庁は実行役2人が空き家内で夫妻を殺害した可能性が高いと考えています。ただ、それだと『遺体の処理』ではなく『殺害依頼』だったことになる。実行役2人は殺害も含めて引き受けていたのか、もしくは指示された通り行ってみたらまだ生きていたので仕方なく殺したのか。それとも別の第三者が殺害に関わっていたのか。このあたりもよく分かっていません」(同)

犯行現場近辺まで夫妻を連れて行った「仕事仲間」

 そして最大の謎は、なぜ夫妻が暴行現場となった空き家に自ら足を運んだかという点である。ここでキーパーソンとなるのは、直前まで夫妻と行動を共にしていた「仕事仲間」の知人2人だ。

 事件前夜、宝島さん夫妻は午後9時半頃に、東京・上野で知人2人が借りたワンボックスのレンタカーに乗り込み、11時頃には品川区東品川の天王洲アイル駅近くまで移動して下車。30分後にまた車に乗り込んだところまでは分かっている。

 その後どこで下車したかは分かっていないが、宝島さん夫妻は最初に下車した場所から約2キロの距離にある品川区東五反田の空き家へ向かった。

「判明している事実だけを並べてみると、仕事仲間の2人は犯行現場に夫妻を誘き出した役割を果たしたようにも見えなくない」(同)

仕事仲間と黒幕との関係は?

 だが、2人は事情聴取に「新たな物件探しのため夫妻を連れて行った」と関与を否定している。実際、夫妻は2人が用意したレンタカーに自ら乗り込んでおり、無理やり連れ去られたわけではなさそうだ。移動の最中で、妻の幸子さん一人を車に残し、3人がタバコを吸いに外に出ている様子も防犯カメラに映っている。

「この時、3人は夜景を楽しむような寛いだ雰囲気だった」(同)

 夫妻は2人をまったく警戒していなかったのだ。

「黒幕が仕事仲間を操って夫妻を誘き出したか、もしくは仕事仲間が夫妻を連れてくる予定を知っていたかのどちらかでしょう。前者だった場合は、仕事仲間が黒幕の計画を知っていたか否かがポイントになります。黒幕との間に入った人物と連絡を取っていたため、黒幕の意図がわからなかった可能性もある。捜査員がこの点について口が堅いことからも、仕事仲間が事件のキーマンであることには違いありません」(同)

 ミステリーのような展開を見せてきた事件。黒幕はいまどこで何をしているのか。

デイリー新潮編集部