高い食品に買い物に悩む女性

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帝国データバンクは2024年4月30日、主要食品メーカー195社が5月に予定している飲食料品の値上げが417品目に上るとの調査結果を発表した。

品目数は前年より減少傾向にあるが、値上げ率は平均31%と、月次調査を始めた2022年以降で最大だ。

1ドル=150円台後半の円安水準が長期化した場合、今秋にも円安を反映した値上げラッシュが再燃する可能性があるという。調査担当者に話を聞いた。

オリーブオイル、コーヒー、コーラ、そして幼児食まで

食品各社の発表資料によると、2024年5月1日から値上げを予定している主な食品は次の通りだ(値上げ幅は税込み)。

【オリーブオイル】
・日清オイリオ=「BOSCO(ボスコ)エキストラバージンオリーブオイル」などを23〜64%値上げ

・昭和産業=「エクストラバージンオリーブオイル」などを1キログラムあたり950円以上値上げ

・J―オイルミルズ=家庭用オリーブオイル各種を32〜66%値上げ
【飲料】
・アサヒ飲料=「三ツ矢」「カルピス」「ウィルキンソン」「十六茶」「おいしい水」などの大型ペットボトル・リターナブル瓶・ワンウェイ瓶・パウチ類を5〜36%値上げ

・キリンビバレッジ=「午後の紅茶」「生茶」の大型ペットボトル製品を8〜9%値上げ

・コカ・コーラボトラーズジャパン=コカ・コーラとファンタグレープを1本あたり10円〜52円(3〜40%)値上げ

・ポッカサッポロフード&ビバレッジ=「アイスコーヒーブラック無糖」などのコーヒーや、「つぶたっぷり贅沢みかん」などの果汁飲料を8〜44%値上げ

・不二家=缶ジュース「ネクターピーチ」などを8〜14%値上げ
【菓子・カレー】
・明治=「チョコレート・グミ」各種の内容量を14〜33%減少(24年3月26日、5月14日、6月25日発売分より順次)。
【幼児用食品】
・江崎グリコ=1歳からの幼児食各種を15%値上げ

昨年の値上げラッシュ時を上回る円安水準

帝国データバンクの調査は、上場105社と非上場90社を合わせた主要195社が対象だ。

それによると、家庭用が中心の5月の飲食料品値上げは417品目を数えた。前年同月(837品目)に比べて5割近く下回り、2022年以降続いていた値下げラッシュもひと息ついた感がある【図表1】。

しかし、値上げ1回あたりの平均値上げ率が5月単月で31%と、単月としては過去最大の30%台を記録したのが懸念材料だ。

その理由に挙げられるのが、4月以降に多く発生した深刻な「原材料高」だ。2024年に予定される「値上げ要因の推移」を見ると、「原材料高」が90.5%を占める【図表2】。

猛暑や干ばつなど天候不順による不作で、カカオ豆やインスタントコーヒー製品の原料となるロブスタ豆、オリーブなどの原材料価格が高騰したことが影響している。

また、値上げ要因に「円安」(28.9%)と「人件費」(28.2%)が、ともに昨年(2023年)の約3倍に達していることも今後の大きな不安材料だ【図表2】。

帝国データバンクでは、急速に進む「円安」と「賃上げ圧力」の高止まりが食品値上げに影響を与えるとして、こう分析している。

「34年ぶりの安値で推移する円ドル為替相場は、2022年半ば〜23年前半の値上げラッシュを引き起こした当時の円安水準を超えており、原材料を海外からの輸入に頼る企業では一層のコスト増が見込まれる。賃上げによる人件費や、物流費でもコストアップが続いており、飲食料品への値上げ圧力は今後も相当に高まることが予想される」

歴史的賃上げ、労働者が素直に喜べない結果に?

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。

――昨年の値上げが合計約3万2000品目に比べると、今年は10月までに予定されているのが約7000品目と、かなり落ち着いてきた感じがありますが、今後はどうなるでしょうか。

飯島大介さん 確かに値上げ品目の数は減っていますが、決して安心できません。

一番の懸念材料は大幅に突き進む円安です。現在のドル円レートは瞬間風速で1ドル=160円前後に達し、政府日銀の為替介入が取りざたされています。

2022年半ばから2023年前半の値上げラッシュを引き起こした時の相場(1ドル=140円台後半〜150円台前半)に比べると、かなり円安です。今後、どこまで進むか、予断を許しません。

150円台後半〜160円前後の円安が長期化すると、原材料を輸入に頼る企業では一層のコストアップが見込まれます。

――リポートでは「賃上げ圧力」も大きな懸念材料と指摘していますが。

飯島大介さん 連合が4月18日にまとめた春闘の第4回集計によると、定期昇給を含む平均賃上げ率は5.20%で、33年ぶりの歴史的な高水準となっています。労働者にとっては喜ばしいことですが、企業にとっては人件費分を製品価格に反映させなくてはなりません。

値上げ要因に「人件費」の項目が昨年より3倍も多くなっているのは、そのためです。人件費増の影響が「物流費」の増加にも表れており、そうした影響が一気に秋ごろに表れてくると思います。

電気・都市ガス料金への補助金終了がどう響くか?

――中東情勢の緊迫化の影響はありますか。

飯島大介さん 原油高も心配ですが、物流費への影響が少しずつ表れています。

イスラエルとハマスの戦争によってスエズ運河を通れない船舶が、アフリカを大きく迂回したり、欧州を陸路で運んでいたりしているため、今後さらに物流コストが増加する可能性があります。

もう1つ見逃せないのが、政府が今年5月いっぱいでの終了を決めた「電気・ガス激変価格緩和事業」の影響です。

――どういうことですか。

飯島大介さん エネルギー価格の高騰を背景に、政府が昨年1月に導入した電気・都市ガス料金への補助金制度のことです。補助金制度の長期化は、財政負担を拡大させてしまうという理由から、5月使用分までの打ち切りを決めました。

しかし、電気・都市ガス料金への補助金が終了すれば、2人以上世帯では、電気料金の支払いは年間約1万8000円(月間1500円)、都市ガスは年間約5000円(月間450円)増加すると試算する専門家もいます。つまり、毎月約2000円の負担増です。

家計に打撃を与えて、賃上げ分がなくなる世帯が出る恐れもあります。また、企業の製品製造のコストアップにもつながり、さらなる値上げラッシュの再燃が秋以降に広がる可能性もあります。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)