ネットがないのに通販はあった!? 平成に突如現れたクルマの通販ショップ【80年代の限定車・特別仕様車研究 旧車雑誌オールドタイマーより】
◇◇◇下記、当時原文ママ(2019年6月号)◇◇◇
ジェミニ・ディノスバージョンとは?
文/環田昌大
本誌166号が発売された頃、新元号が巷の話題になっていた。振り返ってみると平成は「平らに成る」という穏やかな時代を希求したものだったが、この31年間、世の中は目まぐるしく変化した。生活はネットの普及でガラリと変わり、路上には水素電池車まで登場。そんな中このページでは、今では当たり前過ぎる装備が、1980年代当時は物珍しく高級だったことを書き連ねている。
ただし今も昔も基本的に変わらないのが新車の販売方法だ。店へ行き商談をして購入する、ネットで買うなど方法はいくつかあるが、相手は必ず自動車販売店である。ところがネットのなかった’80年代に、自動車販売店ではない「通販ショップ」で売られたクルマがあった。いすゞジェミニ「ディノスバージョン」だ。
ディノスとはフジサンケイグループが運営していた通販会社。テレビショッピングとカタログ出版を連動させ、’70~80年代のお茶の間に浸透。’87年4月、ついにクルマを通販することになったのである。
ベースは2代目FFジェミニ(中期型)で限定300台。注文方法だが、まず全国7カ所にある受注センターに電話。そこからディノスの営業マンが家まで来てくれ、商談となる。試乗車で訪問することもあったようだ。アフターサービスは地域のいすゞ販売店が担当。下取りや分割払いも可能とカタログの説明にはある。
注目すべきは価格。同等装備車の小売希望価格が138万6千円であるのに対しディノス特別提供価格は117万円。軽自動車に少し足せば買える金額である。販売店マージンや営業費、固定費をカットした通販ならではの価格破壊だ。ターゲット層はディノスの通販同様に主婦やヤングミセスだった。
とはいえディノスバージョンは安っぽくはない。(スタンダードに見えない)大型樹脂バンパー、サイドプロテクター、ハロゲンヘッドライト、フォグランプ、電動ドアミラー、防眩ルームミラー、パワステ、タコメーター、エアコンなど当時としては大盤振る舞いの装備である。上級グレードのC/CとスタンダードグレードのT/Tの間を埋めるという意味でもナイスチョイス。ちなみにディノスバージョンには日産マーチ、スバル・レックスもあった。
