家づくりを依頼するパートナーはどのように選ぶべきか。一級建築士でYouTuberのげげさんは「住宅会社にはそれぞれ得意不得意があり、自らが望む暮らしや重視する要素によって、最適解が変わる。ただし、『社長に魅力がない』『理念がない』『実績が少ない』『担当者が論理的ではない』『見積もりがおおざっぱ』『他社をけなす』といった項目が多く当てはまったら、避けたほうがいいだろう。できる限りの情報を集め、パートナーを慎重に選ぶべきだ」という――。

※本稿は、げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

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■ハウスメーカー、工務店、設計事務所…最適なパートナーを選ぶ方法

一生に一度の大切な家づくりを、どこに任せればいいのか……。誰もが悩むポイントです。

家づくりを担当するプレーヤーは、玉石混交。高品質の家を割安でつくれる業者がいる一方で、自社の利益を重視して粗悪な家をつくるような業者も、残念ながら存在しています。

幸せに暮らせる家をつくるには、最適なパートナー選びが不可欠です。のちに「運命の出会いだった」と思えるような納得のいく相手を見つけるために、知っておきたいことを解説していきます。

現在、住宅の建設を請け負っているのは、大きくわけて「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」の三者であり、それぞれ特徴があります。

ハウスメーカーは、自社のブランドや営業力により集客を行う「営業会社」の側面が強く、実際の施工は地域の工務店が請け負います。価格は割高ながら、一般的に高耐久で、それなりの品質が担保できます。

工務店は施工のスペシャリストですが、その技術は会社によって大きくばらつきがあり、優良な工務店をいかに見つけるかが勝負です。

工務店の中でも、依頼を直接こなす「元請け工務店」はレベルが高い傾向があり、技術力とデザイン力を兼ね備えた「スーパー工務店」も存在します。ただし、スーパー工務店は人気が高く、2年待ち3年待ちと、行列ができているケースもよくあります。

ハウスメーカーの下請けをメインに行う「下請け工務店」でも、独自に受注を行うところがあり、値段としてはもっとも安上がりですが、技術力は保証できません。

フランチャイズに加盟している工務店もよくありますが、彼らが本部に支払うロイヤリティは結局、施主から出ることになり、値段に跳ね返りがち。技術力にもばらつきがあります。

設計事務所は、施主と工務店の間に入るコンサルタント的な立ち位置であり、デザイン力や提案力に優れますが、工務店単体に比べ、やや値段が高くなりがちです。ハウスメーカー、工務店、設計事務所それぞれに依頼するメリットとデメリットを、知ったうえで選びましょう。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』
出所=『後悔しない家づくりのすべて』
出所=『後悔しない家づくりのすべて』

■「性能」「デザイン」「コスト」のどこに力を入れているか

家づくりの三大要素である、「性能」「デザイン」「コスト」。これらすべてをパーフェクトに揃えてくれる業者は、存在しません。たとえば家の性能を上げたいなら、その分価格も高くなります。デザインを優先すると、性能が犠牲になるケースが多いです。

限られた予算の中で優先順位を決め、それをもっとも得意とする会社を見極めるというのが、「幸せな家づくり」の鉄則です。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』

「予算がないので、性能はある程度あきらめるけれど、デザインにはこだわりたい」「デザインはシンプルでも、高性能な家がいいので、そこに予算をまわそう」「予算をたっぷりとって、デザインと性能を両立する会社を探す」こうした決断のどれもが、間違いではありません。

方針が決まったら、候補となる会社のホームページやSNSを確認し、自分たちが重視する部分を得意とする会社を探しましょう。

ひと目で会社の強みがわからない場合は、広報が苦手な会社かもしれません。その場合、「何に力を入れている会社なのか」と直接問い合わせてみるといいでしょう。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』

■絶対にかかわってはいけない住宅会社のチェック項目

住宅会社にはそれぞれ得意不得意があり、自らが望む暮らしや重視する要素によって、最適解が変わってきます。ただ、「こんな会社とはかかわらないほうがいい」という基準なら、個人的にある程度語ることができます。

次の項目が多くあてはまるほど、「かかわってはいけない」会社です。

「社長に魅力がない」「理念がない」「実績が少ない」「担当者が論理的ではない」「見積もりがおおざっぱ」「他社をけなす」。このような会社は避けたほうがいいでしょう。

情報化社会となり、これまで隠されていたようなクレームやトラブルが、あっという間に開示される昨今。粗悪な仕事をしていれば、すぐにそれが明るみに出て、「かかわらないほうがいい会社」もある程度可視化されるようになりました。自己防衛の意味でも、SNSや口コミは必ずチェックしておくべきです。

家は、多くの人にとって人生最大の買い物であり、自らの一生にも大きな影響を与えます。できる限りの情報を集め、パートナーを慎重に選びたいところです。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』

■ネットでパートナー探しを完結させる際に見るべきポイント

注文住宅を建てるなら、担当者とのコミュニケーションは必須。会社や担当者によって打ち合わせの頻度はさまざまですが、年間着工数が多い大手の会社ほど、商談の頻度が多い傾向があり、営業もパワフルです。

大手の営業マンは、成約数に加え、「アポイント(接触)回数」「アンケート枚数」「見学会の来場予約数」といった細かなノルマを抱えています。

一方、中小の住宅会社は、営業マンをほとんど持ちません。営業色は比較的薄く、「ぐいぐい来られる」のが苦手な人には相性がいいですが、大手に比べれば優秀な人材が集まりづらく、担当者のレベルにばらつきがあるのがデメリットといえます。

そんな中、小さな会社の営業の新たな武器となっているのが、ブログやYouTube、SNSといったインターネットです。

フォロワーや登録者といったファンがついているなら、優良な住宅会社の可能性が高いです。人と会わず、ネットでパートナー探しを完結させるというのは、時勢にも合った方法かもしれません。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』

■「とりあえず住宅展示場へ」に潜むリスク

大手メーカーが居並ぶ総合住宅展示場は、実物を体感できるうえ、家づくりについて詳しい話を聞くことができ、足を運べば大いに参考になります。

げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)

ただし「とりあえず行くか」と何も考えずに訪れるのには、リスクがあります。住宅展示場の営業マンたちは、家づくりのプロというよりも、家を売るプロ。その知識は、自社商品に偏っていることが多く、磨き抜かれた営業トークでお客様にあたります。

何も知識のない状態でふらりと住宅展示場に行けば、最初に出会った営業マンの巧妙なセールストークが「住宅の常識」と思い込んでしまいがちです。

あるアンケートで、家づくりにおいて何社に見積もりを頼んだかを聞いたところ、その平均は2.2社でした(引用SUUMO「注文住宅3000人の家づくり体験談」)。

検討項目も多く時間と体力を消耗するため、みんな2〜3社でしか検討できないのです。だからこそ最初に出会う会社の影響は非常に大きくなります。

住宅展示場を訪れるなら、事前に本書で紹介している一般的な知識を押さえてから行きましょう。

出所=『後悔しない家づくりのすべて』

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げげ(⾦⾕ 尚⼤)(かなたに・なおひろ)
一級建築士YouTuber
⼀級建築⼠事務所げげ代表。1990年⽣まれ。兵庫県出⾝。大学卒業後、新卒で積水ハウスに⼊社。6年で100棟以上の住宅・店舗設計を経験後、独⽴。「住まいの満⾜度を上げ、豊かな⼈⽣を送る⼈を増やす」をミッションに、新しい時代の常識にとらわれない家づくりを提案している。「後悔しない家づくり」の仕組みを、誰にでもわかるようにルール化したYouTubeが話題。
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(一級建築士YouTuber げげ(⾦⾕ 尚⼤))