LGBTQ擁護団体のGLAADが、ビデオゲーム業界におけるLGBTQの存在について調査した初の年次レポートを公開しました。GLAADはこの調査報告をもって「ゲーム業界はもっとLGBTQを包括すべき」と訴えています。

2024 GLAAD Gaming Report: The State of LGBTQ Inclusion in Video Games | GLAAD

https://glaad.org/glaad-gaming/2024/

◆アクティブゲーマーの17%がLGBTQ

GLAADがPCまたは家庭用ゲーム機で遊ぶ1452人のアメリカ人ゲーマーを調査したところによると、全体の17%がLGBTQであることがわかったそうです。特に若い年齢層ではLGBTQゲーマーの割合が高く、35歳以下のゲーマーの23〜28%が自分はLGBTQであると認識しているとのこと。この結果を元にGLAADは「アクティブゲーマーの5人に1人がLGBTQ」と表現しました。



LGBTQのアクティブゲーマーは平均プレイ時間や費やしたお金の点で非LGBTQゲーマーと同レベルでしたが、LGBTQゲーマーは非LGBTQゲーマーと比較してモバイルプラットフォームでよく遊ぶ傾向にありました。また、LGBTQゲーマーは非LGBTQゲーマーよりもNintendo Switchでプレイする割合が高くなりました。



GLAADはNintendo Switchのプレイが多い傾向について「他のプラットフォームと比較して参入コストが低いこと、そして本研究のLGBTQゲーマーの所得が非LGBTQゲーマーよりも相対的に低いことが理由として考えられる」と考察し、今後の調査でさらに詳しく調査する予定と述べました。

PCやゲーム機では、LGBTQゲーマーはオープンワールド、シミュレーションゲーム、RPG、ホラー、パズルゲームなど、特定のジャンルのゲームをプレイする傾向が強く、対照的に非LGBTQゲーマーはシューティングゲームをプレイする傾向が強いことも判明。またモバイルゲームのジャンルに関しては、LGBTQゲーマーはパズル、シミュレーション、RPG、音楽・リズムゲームをプレイする傾向に、非LGBTQゲーマーはシューティングゲームをプレイする傾向にあることがわかっています。



◆ゲームに対するLGBTQの意見

GLAADによると、LGBTQゲーマーの72%は自分の性自認や性的指向がうまく表現されたキャラクターを見ると気分が良くなると述べており、その割合は若い年齢層(13〜17歳)ではさらに高くなるとのこと。またLGBTQゲーマーは「自分の性別に合ったキャラクターでプレイできることを理由にゲームを購入したりプレイしたりする確率」が非LGBTQゲーマーに比べて1.4倍高いそうです。

◆ゲーム内でLGBTQのメインキャラクターが登場することによる購買意欲の増減

GLAADの調査では、非LGBTQゲーマーの60%以上が「ゲーム内でLGBTQのキャラクターを操作することが購入やプレイの意思決定に影響することはない」と回答していることから、GLAADは「LGBTQのキャラクターを主人公にしたゲームがあっても、LGBTQでないゲーマーの大多数にとっては何の違いもないことがわかりました」と指摘。LGBTQゲーマーはLGBTQの主人公としてプレイできることを理由にゲームを購入したりプレイしたりする可能性が非LGBTQゲーマーの4〜5倍高いという結果を基に、LGBTQコミュニティの購買力は想像以上に高いとアピールしました。



◆ゲーム内でLGBTQのサブキャラクターが登場することによる購買意欲の増減

いわゆるNPCなど、プレイヤーが操作することになるキャラクター以外のキャラクターがLGBTQであるかどうかについて尋ねた設問では、非LGBTQゲーマーによる購買意欲の低下は、前項の「メインキャラクターがLGBTQである」という設問に比べて和らぎました。具体的には全体の30%が「メインキャラクターがLGBTQの場合に購入またはプレイする可能性は低い」と答えたのに対し、サブキャラクターを想定した設問では、同様の回答は20%にとどまりました。

◆ゲームのプレイを通じて得られる感情

ほとんどのゲーマーは「ゲームを通じて架空の世界に浸れ、ゲームによって自分とは異なる人の視点を体験できること」を楽しみとして捉えています。これをLGBTQゲーマーに絞った場合、「自分とは異なる人の視点を体験できるのが好き」と回答した人は、非LGBTQゲーマーに比べて13パーセントポイントも高いことがわかりました。



◆ゲームにおけるハラスメント

LGBTQゲーマーは、非LGBTQゲーマーに比べて「ゲーム内で歓迎されている」と感じる可能性がはるかに低くなるそうで、52%は「コミュニティから受け入れられている」と感じている一方で、38%が「居場所がない」と感じているとのこと。対照的に、非LGBTQゲーマーは59%が「歓迎されている」と回答し、「居場所がない」と回答したのは24%だけでした。また、ボイスチャットの使用に不快感を覚えたプレイヤーも、非LGBTQゲーマー(40%)に比べてLGBTQゲーマー(61%)の方が多いという結果が出ました。

◆LGBTQから見たゲーム業界のLGBTQに関する姿勢

昨今、LGBTQのキャラクターが登場したり、これまではプレイ開始時に性別を選ばせていたゲームが性別の概念をなくしたりするようなシステムになりつつあり、性自認に関する配慮は増加傾向にあるように感じられます。GLAADの調査では、LGBTQゲーマーの27%が「ゲーム会社は自分たちのような人々を考慮している」と考えており、反対に29%が「ゲーム会社は自分たちのような人々を考慮していない」と考えているという結果が出たとのことです。

◆ゲーム会社のLGBTQ社員

GLAADによると、LGBTQゲーマーは、ゲーム会社の内部動向にも注意を払っており、LGBTQゲーマーの半数以上(54%)は「LGBTQの人が多い会社でゲームが開発されていると知れば、ゲームを購入またはプレイする可能性が高くなる」と答えているとのこと。また、LGBTQゲーマーの69%と、非LGBTQゲーマーの48%は、LGBTQ社員を虐待した過去のある会社のゲームを購入したりプレイしたりする可能性が低くなるそうです。

◆LGBTQを内包するゲームコンテンツの現状

今回の調査ではLGBTQコンテンツであるとタグ付けされたゲームの数も調べられており、その数はXboxでは146作、PlayStationでは90作、Nintendo Switchでは50作、Steamでは2302作あることが判明したとのこと。ただし、これらのゲームは家庭用ゲーム機で全体の2%、Steamでは全体の2.5%に過ぎないことから、GLAADは「LGBTQの表現の量という点で、ゲーム業界が他のメディア業界に大きく遅れをとっているのは明らかです」と指摘し、ゲーム業界がよりLGBTQを受け入れるようになればと訴えました。