上海の「賃貸オフィス空室率」が20%超えの深刻
上海市のオフィスビル総面積は中国最大を誇るが、その約2割が空室になっている(写真はイメージ)
中国最大のビジネス都市の上海市で、賃貸オフィスの空室率が過去最高水準に上昇している。企業の賃借需要の低迷に加えて、2023年に大型新築ビルの供給が相次いだことが背景だ。
不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの調査レポートによれば、上海市のAクラス賃貸オフィスの空室率は2023年末時点で21.8%に上り、1年前に比べて5.1ポイント上昇した。
賃貸面積の純増部分が4割減
上海市のオフィスビルの総面積は、中国の都市のなかでも最大だ。不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールのデータによれば、2023年末時点のAクラス賃貸オフィスの総面積は1700万平方メートルを超える。
だが、借り手である企業の需要は(コロナ禍の収束後も)回復の兆しが見えない。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのデータによれば、上海市のAクラス賃貸オフィスは2023年の「純吸収面積」が39万平方メートルにとどまり、前年比38%も減少。過去10年間の平均値である72万平方メートルを46%も下回った。
(訳注:純吸収面積は、同一期間に新規に貸し出された面積から退去により返却された面積を差し引いたもの)
ジョーンズ・ラング・ラサールのデータによれば、2023年に上海市で締結されたAクラス賃貸オフィスの賃貸契約では、既存契約の更新の比率が新規契約および借り増し契約の合計を上回った。このことは、企業が(事業の先行きを楽観できず)オフィス拡張に慎重であることを示唆している。
大型物件の大量供給も空室率上昇の一因だ。写真は2023年に竣工した複合開発地区(上海市浦東新区政府のウェブサイトより)
それだけではない。コロナ禍の期間に建設工事が一時延期されていた大型のオフィスビルが、2023年に集中的に市場に供給されたことも、空室率の上昇に拍車をかけた。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのデータによれば、2023年に新規供給された上海市のAクラス賃貸オフィスの総面積は155万平方メートルと、過去10年間の平均値である103万平方メートルの1.5倍に上った。
賃料「3割引」が当たり前に
賃貸オフィスの需要低迷と供給増加は、空室率の上昇と同時に賃料の下落を招いている。不動産サービス大手のコリアーズ・インターナショナルのデータによれば、上海市のAクラス賃貸オフィスの賃料は2016年をピークに下がり続けており、2023年末時点の平均値は1平方メートル当たり日額7.17元(約150円)と過去10年間の最低記録を更新した。
市況の厳しい冷え込みを受け、賃貸オフィスのオーナーはテナントの引き留めに必死になっている。
契約更新の際には、多くのオーナーが賃料引き下げや一定期間のフリーレントなどの優遇条件を自ら提示。不動産サービス大手のサヴィルズによれば、契約更新後の新賃料は旧契約の3割引が今や当たり前になっているという。
(財新記者:牛牧江曲)
※原文の配信は1月24日
(財新 Biz&Tech)