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頂点に君臨するBDAユニットのRS1600

フォードのモータースポーツ部門、アドバンスト・ビークル・オペレーションズ(AVO)が仕上げたフォード・エスコート Mk1の人気は、近年になって急上昇。オリジナルのシェルを維持したレストア車両から、精巧なレプリカまで、多様な例が存在する。

【画像】ラリーで大活躍 フォード・エスコート Mk1 復刻モデルのMST 同時期のマスタングも 全104枚

AVOによる正規のエスコートの場合、ストラットトップの補強や、ワイドなフェンダーアーチ、リアアクスルに追加されたラジアスアーム、ブラックの天井の内張りなどがわかりやすい違いとなる。だが、専門家が知る細かな特徴も多い。


フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

とはいえ、ベーシックな初代エスコートでも魅力は尽きない。日常的に使える、実用的なクラシックカーだといえる。

プロペラシャフトは、初期型では一体型だったが、1968年式から高速走行時の上質さを改善するため分割式へ置き換えられた。その後、フロントにアンチロールバーも追加されている。

市場の支持に押され、エスコートはアップデートを続けた。特に1300Eは、スポーティなGTに上級な内装を組み合わせた仕様といえ、走りと快適性のバランスが良い。

初代エスコートの頂点に君臨したのが、16バルブ・ツインカムのコスワース社製BDA 4気筒ユニットを搭載したRS1600。生産数は947台と、ツインカムの1263台より更に少ない。

今見てもハンサム 運転を楽しめるクラシック

シャシーはRS1600に準じつつ、BDAユニットではないツインカム4気筒エンジンを積んだのがメキシコ。これはラリーマシンとして実践に投じられた例が多く、オリジナルのまま残っている車両は非常に珍しい。2.0LエンジンのRS2000は、4324台が作られた。

オリジナルとレプリカでは、価値に大きな差がある。RS1600やツインカム、メキシコ、RS2000を狙う場合は、事前にエスコートのオーナーズクラブへ加入し、有識者へ確認した方が安心だろう。


フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

ただし、しっかり作られたレプリカや精巧な復刻モデルなら、同じくらい走りは面白い。同時に、維持や整備に関する不安を減らせる可能性もある。

中央が絞られたコークボトルラインのボディに、中央がくびれたフロントグリル、整ったプロポーションで、初代エスコートは今見てもハンサム。パッケージングも練られ、実用性も褒められる。

半世紀ほど前の試乗テストでは、秀でた操縦性や乗り心地、快適性、静寂性などへ感心。トランスミッションは滑らかに変速でき、運転を楽しめる小さなサルーンだと、好評価を得ていた。

今回ご登場願った1台は、エスコート・メキシコ。オプションのカスタム・パッケージが組まれ、長距離ドライブも快適にこなせるはずだ。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

複雑な形状にプレスされたフロアは、錆びがちだが修復は難しい。フロントフェンダーやストラットトップ、フロントガラスを支えるAピラー、スカットルパネル周辺なども錆びやすい。

ストラットトップには、シャシー番号が刻印されている。これが正しい番号で残っているなら、状態の良い証拠といえる。


フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

他にも、リアフェンダーやドアの底部、ヒーター回り、スペアタイヤや燃料タンクの周辺、シャシーレッグ、リアシート下のフロアパン、サイドシルなどが弱点。アンチロールバーとリアスプリングのマウント部分も要確認。

エンジン

4股の排気マニフォールドとツイン・ウェーバー・キャブレターが組まれ、1600GTでは87psという悪くない最高出力を発揮した。メキシコでは、160km/h以上のスピードまで軽々と加速した。

現存するエスコートは、エンジンが載せ替えられた例も少なくない。異音やエンジンオイルの消費量、オーバーヒートの痕跡などを確かめる。ラジエーターは、内部が詰まることがある。

RS2000では、カムシャフトが摩耗しがち。タイミングベルトの交換履歴を確かめる。

トランスミッションとサスペンション

構造はシンプル。クラッチとトランスミッション、アクスル、サスペンション、ステアリングラックなどの摩耗は考えられる。

4速MTは、仕様に応じて4種類のギア比が用意されていた。シンクロメッシュの効きや、回転時の異音、仕様に準じた品番かを確認する。

エスコート・ツインカムとRS1600、メキシコ、RS2000では、加速時にリアアクスルの沈み込みを防ぐため、ラジアスアームが追加されていた。これが備わらない場合は、見た目だけのレプリカな可能性がある。

インテリア

ベーシック・グレードの場合、内装トリムは入手困難。不一致の部品で代用されていることもある。

メキシコに設定された、リクライニング可能なRSクロス・シートが付くカスタム・パッケージは、現在では人気のオプション。ただし、合皮シートの方が耐久性は高い。

フォード・エスコート Mk1のまとめ

初代エスコートの価格は高騰中。他にはない魅力が需要を刺激し続けているため、値崩れする心配は当分ないだろう。課題となるのが、過去に実施された望ましくない改造や修理。高性能仕様の低質なレプリカにも、充分注意したい。

特別なエスコートを探すなら、時間をかけて詳細に調べることが重要。状態の良い例なら、現実的なランニングコストで、素晴らしく楽しいカーライフを謳歌できるはず。

良いトコロ


フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)

グレードを問わず運転が楽しく、クラシックカーとしての価値や注目度は高い。ボディパネルは再生産されており、入手しやすい。特にラリーで活躍した仕様の需要は、下がることはないだろう。

良くないトコロ

フォードのベーシックな量産車として作られたエスコートは、耐久性が高くない。完全なレストアには、高額が必要になる場合も。ボディシェルは複雑で、錆び始めると広範囲に広がってしまう。

フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)のスペック

英国価格:971〜1932ポンド(1973年時)
生産数:108万2472(合計)
全長:4065mm
全幅:1570mm
全高:1370-1410mm
最高速度:130-185km/h
0-97km/h加速:8.3〜19.6秒
燃費:8.9-12.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:769-849kg
パワートレイン:直列4気筒940・1098・1298・1598cc自然吸気OHV/1558・1599cc自然吸気DOHC/1993cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:40ps/5300rpm-116ps/6500rpm
最大トルク:7.1kg-m/3000rpm-15.4kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック(後輪駆動)


フォード・エスコート(Mk1/1968〜1975年/英国仕様)