画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。お金を使わず、豊かな暮らしを目指している小笠原さんの新刊『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社刊)より、自宅のお気に入りスペースについて一部抜粋で紹介します。

キッチンとリビングがお気に入りのスペース

南から光がたっぷり入る部屋にキッチンとリビングペースがあります。台所は狭く、食器棚などはとても置けません。キッチン道具や食器類は、備えつけの収納に入るだけ、というルールにしています。炊飯器もありませんし、器類は欲しい方にお譲りしました。

【写真】小笠原さん手づくりの小さな食卓

また、カーペットもキッチンマットも敷かないので、床を広々と見せることができます。いちばんのメリットは掃除がしやすいことですね。

すぐ隣のバリアフリーでつながっているリビングルームは、ほかの部屋の住人さんならここに大きなテーブルを置いて食事をしているかもしれませんね。でも、私はここに兄が使っていた大きめな机を置き、書斎としました。

手づくりの小さな食卓と「絶景食堂」

となると「小笠原さんは、どこで食事をとるの…?」とお思いでしょう。そこで、古い籐のスツールを2台並べた上に、解体した本棚のボードを渡し、更紗のクロスをかけた食卓をつくりました。
40年前に買ったこのスツールが好きで、座面中央が劣化して座れなくなったのに捨てずにいたことが功を奏しました。食卓としては低く、とても小さいのですが、「おひとりさま食」には最適。
とかく携帯や眼鏡、鍵、雑誌など「ちょっと置き場」になりやすい食卓が、あまりの狭さで置けないため、おかげですっきり保つことができます。

その食卓はリビングの隅に、野原と林だけを望む我が家の"絶景エリア"に置いています。正面のガラス戸には、メモ用紙をさまざまな形に切り抜いてつなげたモビールが、カーテン代わりの目隠しとして、下げられています。ここを「絶景食堂」と呼んでいます。

おかげで朝食が楽しみで、起床しています。