ファーウェイは独自OS「鴻蒙」のエコシステム拡充を急ぐ。写真は1月18日のイベントでスピーチする端末事業部門CEOの余承東氏(同社の開発者向けウェブサイトより)

中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が、独自開発OS(基本ソフト)の「鴻蒙(ホンモン、英文名はハーモニーOS)」を世に送り出して4年余り。同社はこのほど、アメリカのグーグルのOS「アンドロイド」との“完全決別”に向けたスケジュールを公表した。

ファーウェイは1月18日、広東省深圳市で開催したイベントで、鴻蒙の次期バージョン「鴻蒙・星河版(ハーモニーOSネクスト)」のソフトウェア開発者向けプレビュー版をリリース。このバージョンは鴻蒙向けに開発された「ネイティブアプリ」にのみ対応し、アンドロイド用アプリを動作させるための互換機能が廃止されている。

鴻蒙・星河版は2024年4〜6月期に開発者向けのベータ版を公開し、10〜12月期に(一般ユーザー向けの)製品版をリリースする計画だ。財新記者の取材に応じたファーウェイの関係者によれば、2024年後半を予定しているハイエンド・スマートフォン「Mateシリーズ」のモデルチェンジに合わせて、製品版の搭載を始めるという。

始まりはアメリカの制裁強化

「アプリの実行基盤とエコシステムを独自に持たなければ、本物のOSとは言えない」

ファーウェイのコンシューマー向け端末事業部門のCEO(最高経営責任者)を務める余承東氏は、イベントでのスピーチでそう強調。「(中国の)多くのスマホメーカーのOSは、アンドロイドのUI(ユーザーインターフェース)をカスタマイズしたものにすぎない。それらと違い、鴻蒙はシステム全体を独自に作り上げたものだ」と胸を張った。

鴻蒙はもともと、IoT(モノのインターネット)向けの組み込み用OSとして2015年に開発が始まった。大きな転機は2019年5月、アメリカ政府がファーウェイに対する制裁を強化し、グーグル製のアンドロイド(訳注:グーグルのアプリストアが組み込まれたアンドロイド)が利用できなくなったことだ。

そのため、ファーウェイは独自OSへの切り替えを余儀なくされ、同年9月に鴻蒙を前倒しで発表した。

初期の鴻蒙はネイティブアプリの品揃えが少なく、消費者にそっぽを向かれるリスクがあった。そこでファーウェイが採った苦肉の策が、鴻蒙に(アプリストアを含まない)オープンソース版のアンドロイドのコードを組み込み、アプリの互換性を確保することだった。


ファーウェイはスマートフォン以外のさまざまな製品にも独自OSの搭載を広げている。写真は中国のファーウェイ・ブランド専売店(同社ウェブサイトより)

その後、ファーウェイは自社開発したネイティブアプリを次々に追加してユーザーの使い勝手を改善。2023年8月、最新バージョンの「鴻蒙4.0」を発表した際に、次期バージョンでアンドロイドとの互換機能を廃止する計画を明らかにした。

アプリ開発を全面支援

財新記者の取材に応じた複数の関係者によれば、ファーウェイの端末事業部門では、鴻蒙・星河版の製品版リリースに向けたネイティブアプリのエコシステム拡充が、2024年の最重要プロジェクトの1つに位置付けられている。その推進のために、(社外の)ソフトウェア会社によるネイティブアプリ開発をファーウェイが全面サポートする方針だ。


本記事は「財新」の提供記事です

1月18日のイベント会場には、鴻蒙のネイティブアプリ開発に参入を決めた200社余りが集合した。来場した複数の開発者によれば、彼らは2023年末から鴻蒙用アプリの開発に着手しており、ファーウェイから2024年4〜6月期に開発を完了するよう要請されているという。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は1月18日

(財新 Biz&Tech)