TSMCの2023年決算は減収減益だったものの、業績のパフォーマンスは業界平均を上回る。写真は新竹市の本社工場(同社ウェブサイトより)

半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は1月18日、2023年の通期決算を発表した。半導体市況の低迷が響き、同年の売上高は2兆1600億台湾ドル(約10兆1081億円)と前年比4.5%減少した。

設備稼働率の全体的な落ち込みに加えて、回路線幅3nm(ナノメートル)プロセスの生産体制の立ち上げ時期も重なり、2023年の粗利益率は前年の59.6%から54.4%に低下。最終利益は8385億台湾ドル(約3兆9239億円)と、前年比17.5%の減益となった。

一方、同時に発表した2023年10〜12月期の四半期決算には業績反転のサインが現われた。同四半期の売上高は 6255億3000万台湾ドル(約2兆9273億円)と、前年同期比で横ばい、直前の7〜9月期比では14.4%増加した。純利益は2387億1000万台湾ドル(約1兆1171億円)と前年同期比19.3%減少したものの、7〜9月期比では13.1%増加した。

「惨憺たる稼働率」と自省の弁

「世界の半導体業界にとって、2023年は極めて厳しい年だった。わが社を含めて業界の先行き予想は軒並み外れ、設備稼働率は惨憺たる状況だった」。TSMCの魏哲家総裁(社長に相当)は、決算説明会で率直に自省の弁を述べた。

とはいえ、TSMCの業績はファウンドリー業界全体のパフォーマンスを上回っている。同社が開示した参考資料によれば、(DRAMやフラッシュメモリーなどの)半導体メモリーを除いた世界の半導体市場の規模は2023年に約2%縮小し、ファウンドリーに限れば13%も縮小した。

TSMCの製品分野別の売上比率を見ると、2023年はサーバー向けなどの高性能コンピューティング(HPC)が総売上高の43%、スマートフォンが同38%を占め、両者で全体の8割を超えた。その他の分野の売上比率は(あらゆるモノをネットにつなぐ)IoTが8%、車載用が6%、家電向けが2%だった。


TSMCは最先端のAI半導体の受託製造でも世界の先頭を走る。写真は3nmプロセスの主力工場である台南市の「Fab18」(TSMC提供)

注目すべきなのは、HPC分野のなかでAI(人工知能)半導体の売り上げが急拡大していることだ。総売上高に占める比率はまだ小さいものの、前年比5割増のペースで伸びているという。

(訳注:AI半導体世界最大手のエヌビディアは、最新鋭チップの製造をTSMCに頼っている)

2025年から2nmプロセス量産

製造技術の面では、TSMCは2023年を通じて(世界最先端の)3nmプロセスの生産能力を大幅に高めた。決算報告書によれば、3nmプロセスの売上比率は2023年7〜9月期の6%から10〜12月期は15%に上昇。同社はさらに高度な2nmプロセスについても、2025年から量産を始める計画だ。

2024年の経営環境に関して、魏氏は「世界景気全体および(戦争などの)地政学上の不確実性は緩和されない」と予想。一方、自社の業績については「すでに底を打ち、成長軌道に戻りつつある」と自信を示した。


本記事は「財新」の提供記事です

魏氏は半導体業界全体の景気が2024年は上向くと見ており、半導体メモリーを除いた市場規模は前年比10%超、ファウンドリーは同20%の拡大が期待できるとした。

そのうえで同氏は、「TSMCは業界平均を凌駕するパフォーマンスを発揮し、ドルベースの売上高で(前年比)21〜26%の成長率を達成したい」と述べた。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は1月18日

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