美しい冬の白川郷。日本株の魅力も増している(写真:Getty Images)

まずは2月2日の米国株の値動きから振り返ってみよう。市場の注目だったアメリカの1月雇用統計(非農業部門雇用者数)は+35.3万人と、予想+18.5万人や昨年12月の+21.4万人を大きく上回った。

また、1月の失業率は3.7%で昨年12月と同水準ながら、平均時給は前月比+0.6%、前年比+4.5%と予想を上回った。そのため、次回3月19〜20日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ確率は大きく後退した。

米国株は強い景気指標を好材料視するようになった

一連の指標は、FRB(連邦準備制度理事会)による利下げタイミングを探っている株式市場にとって、ショック的な悪材料となってもおかしくなかったはずだ。

だが、2日のNY(ニューヨーク)ダウ30種工業株平均は前日比134ドル58セント(0.34%)高の3万8654ドル42セントと、過去最高値を連続で超えた。また、世界のファンドがベンチマークとするS&P500種指数も同52.42ポイント高の4958.61ポイントと、やはり過去最高値を再び更新した。

一時期の大型テック株の下落で過去最高値には若干距離があるナスダック総合指数も、結局はその大型テック株が上昇したことで、昨年来高値を更新している。

少し前までアメリカの株式市場は、ジェローム・パウエルFRB議長が「景気データ次第で金融政策を決める」と言明していたため、強い景気指標はネガティブ要因として神経質に反応していた。だが、直近の市場はアメリカ経済のソフトランディング達成シナリオを受け入れ、強い景気指標にはどちらかと言えばポジティブに反応するようになっていた。

今回の反応はそれが明確になった証左であり、市場の適温相場の様相をはっきり示したことになる。米国株は今後も日本株に好影響を与える可能性が高そうだ。

その影響がはっきり表れているのが、日本株に対する外国人投資家動向だ。とくに、1月第2週(9〜12日)の財務省ベースでの対内証券売買契約(外国人投資家)は1兆2026億円と、昨年10月第2週以来の大量買い越しだった。

また、東京証券取引所ベースでの海外投資家も9557億円の買い越しで、昨年6月の第1週以来の大きさだった。後者は先物を含めると1兆4439億円の買い越しと、アベノミクス相場初期に匹敵、かつ昨年4月以来の規模になった。

この1月第2週の日経平均は、前日比の上げ下げを勝敗で現わすと「4勝無敗」で約2200円高となった。この大幅高に利益確定売りで対抗したのが個人投資家で、1兆0695億円を売り越して現金化を進めた。

さすがに買い越しに転じた個人投資家

では、第3週(15〜19日)はどうだったか。まず財務省ベースでは2867億円の買い越し、東証ベースでも3841億円の買い越しと、連続買い越しではあったが、買いエネルギーの低下を見せた。この第3週は勝敗表では2勝3敗で、上げ幅はわずか386円だったため、市場センチメント(心理)は「大きくは下げることはなさそうだ」と思いながらも、一気に上げ一服感が蔓延した。この週も、個人投資家は1854億円の連続売り越しだった。

しかし、第4週(22〜26日)は財務省ベースで7203億円、東証ベースでも4105億円の買い越しで、買いエネルギーが復活した。そして、個人投資家も2946億円の買い越しと、さすがに買いに転換した。

この第4週の日経平均は週末に3万5751円と、3万6000円を割りこんだ。だが、前半4日間は週初22日の3万6546円を高値に、3万6000円台を維持していた。どうやら、個人投資家は「3万6000円前後での買い」を納得して受け入れたようだ。

つまり、個人投資家は、上昇局面を売り上がったものの、結局はさらに高いところを買い戻したことになる。それでも、日経平均が今後4万円を超えて行くとみられる今回の相場で、高いところでも買えた投資家は、あとから振り返れば「あそこで買っておいてよかった」と思うだろう。

問題は、売って現金化したままで、そのあと買っていない個人投資家はどうするか、である。2月2日の日経平均の引け値3万6158円の25日移動平均上方乖離率は約2.75%と、前日に続いて3%を割れており、すでに過熱感は薄れている。「やはり3万6000円台でも買わなければならないのか」といった雰囲気が、個人投資家の間で高まっているはずだ。

相場に乗れない個人投資家へ

日経平均は2022年の大納会の2万6094円から2023年7月3日の高値3万3753円まで、約半年で7659円高という大上昇劇を演じた。今回は、昨年の大納会3万3464円に対して今年1月22日の高値3万6546円までで、今のところの上げ幅は3082円。昨年前半の予想以上の「大上昇劇相場」でも約半年で7659円高だったのに対して、今年は1カ月足らずで3082円はいかにもスピードが速すぎる。

よって、現在のように上げが一服しているのは当然なのだが、兜町の強気筋などは「まさに上げが一服している今買わなければ、相場に置いて行かれることになる」という意見だ。だが、前述のように、まだ買い切れていない個人投資家は依然多い。

筆者は前回の「今から日本株を買いたい人に勧める3つの投資法」で、とにかく日経平均のレベルを考えずに「下げたら買うという方法」と、「移動平均線との乖離率が低下したら買うという方法」などを提案した。

とくに25日移動平均線からの乖離率で言えば、1月15日の日経平均3万5901円や、1月22日の3万6546円は、乖離が+7%以上なので売りもよいが、2月に入った2日間(3万6011円と3万6158円)は乖離+2%台に低下しているので「買い」ということになるわけだ。まさに「安いところを買う」という正統派の投資家にはついていけない相場になっているが、これも相場だ。

一方、ファンダメンタルズはどうか。発表が佳境を迎えている2023年4〜12月期決算は、確かに一部では予想外の減益決算も見られた。だが、円安ドル高の影響もあり、多くの企業は増益で、全体観で見た企業業績にも問題はなさそうだ。

しかも、ここで強調しておきたいのは、上場企業が自己株買いを拡大しており、個別株の魅力が増していることだ。もちろん東証の資本効率の改善要請も背景にあるが、2023年の自己株買いは約9兆6000億円となり、2年連続で過去最高となった。また、安定配当を基本にしながらの増配など、積極的に株主還元に努めている企業も多くなっている。

前々回の「『日経平均4万円予想は保守的』と断言できるワケ」でも書いたとおり、日経平均4万円が通過点だと思っている筆者としては「株式市場は短期的に下げる日もある。しかし、買ってから下げることを恐れていては、この大相場で勝つことはできない」と申し上げたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

(平野 憲一 : ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト)