53歳で夫が急逝し、以来、およそ20年間ひとり暮らしを続ける料理家、足立洋子さん(72歳)。気力や体力ががくっと衰えたという「70代の壁」に直面しながらも、日々を明るく前向きに過ごしています。そんな足立さんが、自分がご機嫌になるための毎日の工夫を1冊にまとめた書籍『さあ、なに食べよう? 70代の台所』(扶桑社刊)より、愛用している調理器具について紹介します。

お鍋は16cmと18cmの2つあれば十分

ひとり暮らしになると、基本的に普段の食事づくりに大きい鍋は必要ありません。それに年齢を重ねると重い鍋は扱いづらく、洗うのもひと苦労。
仕事柄、いまだに大きな寸胴鍋も持っていますが、その私ですら、先日とうとう無水鍋は手放しました。少量のお水で野菜を蒸すことができたり、ケーキをつくったりと、母の代からよく使ったとても愛着のあるものでしたが、どう考えても今の自分の暮らしには見合わない。火の入り方がやさしくて好きだったル・クルーゼの重たいグリルパンなども、そろそろ処分対象です。

それから特別な調理道具も不要になりました。私の場合は、パン焼き器もレディースミキサー(生地を混ぜたりこねたりできる機械)も、ひとりになって手放しました。

 

歳を重ねながらのひとり暮らしでわかったのは、一般的な70代の普段の暮らしなら、鍋は口径16cmのものと18cmのものの、2つあれば十分ということ。
ひとつの鍋でみそ汁やスープなどの汁物をつくり、もうひとつで野菜をゆでたり、煮物やかき揚げをつくったり。湯を沸かすのも揚げ油を熱するのも、小鍋の方が効率はいいですから。

豚汁などはまとめてつくりますが、そもそもひとり暮らしなので、18cmのものでつくっても数食分となり、十分間に合います。私は結婚したときに伯母からいただいた、同サイズのスイス・スプリング社の五層鍋を、もうかれこれ50年以上、愛用しています。

フライパン・まな板・ボウルは大きいものを

じゃあ、どんなものも小さいサイズに替えればいいかというと、それはちょっと待って。「大は小を兼ねる」調理器具もあるのです。
それが、フライパン、まな板、ボウルの3つ。

私が炒め物をするときに使うのは、口径26cmか28cmの、中華鍋のような深さのあるフライパンです。どちらもひとり分をつくるにしてはだいぶ大きなサイズ。けれど、小さいフライパンだと食材が外へ飛び散ったり、また食材が飛び出ないように気をつけることで作業が窮屈になったりしませんか? それが私は嫌。
また深さがあることで、チャーハンをつくるときもノンストレス! 大きくかき混ぜても、材料があちこちに飛び出ることはありません。小さいフライパン(口径18cm)も持ってはいますが、それは朝食用のフレンチトーストや目玉焼きをつくるときぐらいです。

 

まな板も、小さいサイズで食材が転がり落ちないように気をつけながら切るよりも、のびのびと切れる大きいサイズの方が圧倒的に便利。腕の動作も制限されません。
ボウルで混ぜる作業だって同じです。まな板にいたっては、先日ひとり暮らしの息子の家に行ったときに、母親心でついつい大きなまな板に替えてきてしまったぐらいですから。

フライパン(中華鍋)、まな板、ボウルの3つは、ぜひ「大は小を兼ねる」と心得て。
一度大きいもので調理してみると、小さいときにいかに調理にストレスがかかっていたかがわかると思います。